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魔王になって復讐を  作者: 桐生紅牙
始まり
1/13

プロローグ

 山の中にある武家屋敷、その庭で一人の青年が真剣を構えて立っている。

 青年は真剣をゆっくりと振るいはじめ、徐々に動きを速くしていった。

 青年の動きは流麗で容姿も非常に整っているため、見惚れてしまうような美しさである。

 しばらくすると青年は動きを止めて、最近起こった出来事を思い出していた。





夜行(やこう)、いつものように手紙が来ていたので部屋に置いておいたぞ」


 祖父との鍛錬を終え、汗を流しに行こうとしたときに声をかけられる。


「わかりました、たぶん孝介からだと思います」


 俺は祖父にそう返すととりあえず汗を流すために道場から母屋の風呂に向かった。

 汗を流して部屋へ戻ると祖父から聞いたとおりに手紙が置いてあり、差出人も予想どうりに長谷川孝介(はせがわこうすけ)からであった。

 長谷川孝介は俺の両親が事故で死んでしまい祖父の橘景久(たちばなかげひさ)に引き取られるまで、近くに住んでいた幼馴染である。

 俺が祖父に引き取られてからも手紙で連絡を取り合っていて、両親が死んでしまった時にも親身になって励ましてくれた親友である。

 ケータイでなく手紙なのは、今俺が住んでいる場所が電波が通りずらく連絡が取りずらいからと昔から続けていたので、何となくお互いに手紙を使おうということになったからである。

 

「前の手紙からずいぶん時間がたっていたから心配してたんだよな」


 昔から月に一度は手紙が来ていたのに一年ほど手紙が来ず、心配して手紙を出しても返事が返ってこなかったのだ。

 電話をしてみようかとも思ったが、忙しくて暇がないかもしれないと思ってしていなかった。

 久しぶりの手紙を楽しみにして便箋を見てみると、すぐにいつもの手紙との違いに気づいた。


「孝介の字と違う」


 内容を確かめてみると手から力が抜け便箋を落としそうになった。

 手紙は孝介の母親からで内容は孝介が自殺したというものであった。






「なんで俺に相談しなかったんだ」


 ついそんなことをつぶやいてしまう。

 手紙を読んだ後に急いで孝介の家に電話して聞いた話だと、孝介はクラスでいじめられていたようで遺書からそのことがわかったらしい。

 そして俺に謝っておいてくれと書いてあったと、孝介の母親が泣きながら教えてくれた。

 俺は孝介が自分に相談してくれなかったことが悔しく、心配しただけで行動しなかった自分に怒りを感じていた。

 しかしそれ以上に俺は、孝介を死ぬまで追い詰めたやつらがのうのうと生きていることが許せない。

 これも孝介の母親から聞いたことだが、生徒の中にお偉いさんの息子がいて、いじめの事実を握り潰しおとがめなしになっているらしい。

 しかしいくら許せなくても、今の自分にできることはない。

 橘家は本家ではないが、平安時代の橘則光を先祖にもち代々武術を修めてきた。

 そして俺は、その中でも鬼才であるといえるほどの才を持っていると祖父に言われている。

 だが、いくら力があっても今回は役に立たない。


「どうしろっていうんだよ」


 ついまた返事がかえることもないと分かっているのにつぶやいてしまう。

 しかし返ることのないと思っていた返事が返される。


「そんなあなたに朗報です♪魔王になれば復讐ができますよ♪」


 次の瞬間、俺は光に包まれた。




 庭に夜行の姿はない。

 そして夜行の

 親友のための復讐は始まった。


 

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