連合守護騎士団
ベルデから無事に逃走を図ることに成功した隼人とリュンは、一週間ほど走り続け、シャノン王国とフィリスタ学院国の間に位置する山岳地帯に潜伏していた。
この山岳地帯は、資源的にうま味が少なく、お互いの国の緩衝地帯としてあまり開発が進んでいない。
そのおかげか、盗賊が住み着きやすく、周辺に大きな村ができることも無い。
二か国間の貿易の為に整備された街道がいくつかあるだけの、非常にさびれた土地である。
その事は、今の二人にとって非常に助かる事だった。
ベルデからの追手がいつ来るかもわからない状況で、怪我を負ったままいつまでも逃げ続けるのは厳しい。そのため、二人はこの地点で一度隼人の怪我が完治するまで潜伏することを決めたのだ。
ロウナが用意してくれた一週間分の食料はすでに食べつくしてしまったが、ここは盗賊のアジトの宝庫。少し探せばいくらでもガラの悪い連中がおり、そのアジトを制圧すれば食料と資金が調達できる。
今隼人たちが潜んでいる洞穴も、元はこの辺りを締めていた大規模な盗賊団の物だ。
そこに殴り込みをかけ、二人で制圧してしまったのである。
大規模なものと言っても、所詮魔法の使えない一般人のごろつき達だ。二人にからすれば、制圧は造作も無い事である。
その上、逃げて散らばった盗賊たちは各々で集まり、再び食料を集め盗賊行に励んでくれるのだから、商人からすれば迷惑極まりないが、隼人たちからして見れば、わざわざ食料を運んできてくれるのとなんら変わりのない、非常に便利な存在と化していた。
そこでさらに一週間ほど潜伏すれば、隼人の傷もほぼ塞がり、全治とまではいかない物の、ほぼ万全の状態まで回復する。
隼人は、体が鈍ってしまわない様に、盗賊たちが持っていた鉄の剣を振りながら、怪我の完治具合を確かめていた。
そこに、大きな紙を持ったリュンがやってくる。
「ハヤト、ちょっと良いか」
「なんだ?」
二週間の潜伏期間の間に、二人は名前で呼び合うようになった。
今までが「お前」「お主」と呼び合っていただけに、その雰囲気はどことなく他人を思わせるものだったのだ。しかし、さすがにベルデから逃亡し、一蓮托生の身として塔の攻略をしていく上で、いつまでも他人行儀でいるのもおかしいだろうと、リュンから言い出したのだ。
隼人も、特に気にすることなくそれを了承した。もともと、お前呼びでは分かりにくいと思っていたところだったのだ。
「今後のことについて少し話しておこうと思うてな」
リュンは持って来た紙を地面へと広げる。それは、シャノンからフィリスタ周辺の地図だ。それを覗き込みながら、隼人が問う。
「フィリスタの知識の塔に向かうんだっけ?」
「そうじゃ。あそこは他の塔と少し違うらしいからのう。私たちに対する警戒も少ないはずじゃ」
「違うって何が?」
「あの塔に魔物はおらんのじゃ。塔の内部は幾重もの扉に閉ざされ、最上階に向かうには、その扉に記された謎を解かねばならんらしい」
「ふむ。俺には無理そうだな」
「諦めるのが速すぎんか!?」
「しかたがないだろ、考えるのは苦手なんだ。そういうのはリュンに任せるさ」
「適当じゃのう……まあ、今までの行動を見ておると納得せざるを得んが」
隼人の短絡的な行動で、何度も面倒なことに巻き込まれている身としては、否定できる要素がどこにもなかった。
「頭使うのは、昔から蓮華の十八番だったからな。俺はそれに従ってただけだし」
「それじゃと、知識の塔の攻略はちと大変かもしれんのう。私も自慢できるほど頭がいいという訳ではない。そもそも、あの塔は今まで一度も最上階まで到達したものがおらんという話じゃ」
「マジか。まあ、行ってみて攻略でき無さそうなら、先に別の塔を攻略すればいいだろ。何も、必ずそこからクリアしなけりゃいけない訳じゃない」
「それもそうじゃな」
全ての塔をクリアしなければいけないことに変わりはないが、その順番はどれからでもいいのだ。
「つか、なんでフィリスタなんだ? リュンも苦手なら、最後に回してもよかったろ」
もともとクリアできる見込みが少ないのならば、最初から別の塔に向かってもよかったはずである。
それをあえてフィリスタに向かったのには、リュンなりの理由があった。
「フィリスタに行くのは、塔の攻略だけが目的ではないのじゃ。むしろ、それはサブに当たるのう」
「そうなのか?」
「主目的は情報収集じゃ。私たちの立場が今世界的にどうなっているのか知る必要がある」
第一歩の塔の主を倒したことで、魔物が野に解き放たれた。となれば、同じような塔である「強化の塔」と「試練の塔」を有するホウロウ帝国は隼人達に最大の警戒を示すはずだ。そして、シャノンと友好関係にあったカルナでも当然同じような状況になっているとみていいだろう。サイン合領国もそれらに近い状況になっているはずである。
見つけ次第殺せなどという指示が出ていてもおかしくは無い。
「だから、比較的に問題のすくなそうなフィリスタに行くわけか」
「そういうことじゃ。といっても、あそこも塔を有する国じゃ。警戒するに越したことはないがのう」
「どういう経路で行くんだ?」
山岳地帯から塔のある町まではここから約二週間程度かかる。その間の道も何本かあり、海岸沿いを通る海ルート、森林地帯を通る森ルート、内陸部の山岳地帯を進む山ルートがある。最も整備されているのは海ルートだが、その分人も多く情報の共有も早い。
逆に山岳ルートは点在する村の数が少なく閉鎖的なため旅人には厳しい。
森ルートはその中間に位置するが、それだけに盗賊の被害が多発しているルートだ。
「まあ、森のルートが一番じゃろうな」
リュンは迷いなく森ルートを選ぶ。自分達の今の状況が半ば盗賊に近いのだから当然だろう。盗賊が出てきたのならば、むしろ食料ゲットだと喜んでアジトまで潰しに行くはずである。
「なら二週間コースか。食糧備蓄的には大丈夫そうだな」
「貨幣も盗賊どもが集めたものがある。買い物も問題ないじゃろう」
「フィリスタからは硬貨が違うんだっけ?」
シャノン王国で使っていたファン硬貨は、シャノン王国、カルナ王国、ボロマル自治区の三つの国でしか使えない。フィリスタではレッチ硬貨と呼ばれる別の硬貨がサイン合領国と共同で使われていた。
その為、ファン硬貨を両替するのならば、ある程度大きな町の両替商のもとに向かわなければならない。
幸いなことに、盗賊たちが集めていた金品の中には、レッチ硬貨も含まれていたため、隼人達は手持ちを失わずに済んだのだ。
「多少貨幣価値も変わっておるからのう。気を付けんとぼられるぞ」
「そういうのは苦手なんだけどな」
レート計算など、いちいち面倒な事をやりたくないというのが隼人の本音だ。しかし、その本音を見透かしたかのようにリュンが返す。
「なら、体験学習あるのみじゃな。持ち金はしっかりと分配するとしよう」
にこやかに笑うリュンに、隼人はがっくりと肩を落とすのだった。
隼人達が第一歩の塔を攻略してから三週間。ベルデでは、ようやく町の混乱が収まってきたところだった。
何しろ、塔の中から魔物たちが外へと出始めたのである。当初、ベルデの住民たちは激しいパニックに陥り、町から逃げ出そうとする者達で外壁の門が一時的に機能不全を起こすほどだった。
しかし、蓮華が指示した騎士団の派遣により、魔物の被害も無く、さらに出てくる魔物が今の所初心者でも狩れるような低レベルのものたちばかりだと言うことが判明し、住民たちの間にも少しずつ落ち着きを取り戻すものが現れ始めた。
そして、二週間が経つ頃には、塔から溢れた魔物たちも、挑戦者達の格好の餌食となり、出てくる側から初心者講習用の魔物としてギルドが捕獲に乗り出すなど、次第にその状況に慣れ始めていた。
そうなれば、町の住民たちも落ち着きを取り戻す。
魔物がベルデまで襲ってこないと分かると、彼らの生活は日常へと戻っていった。
その間にも、ベルデの兵士団が第一歩の塔周辺に簡易的な石壁を作り、出てきた魔物を狩りながら、本格的な防護壁の建造も始まる。
人が集まれば物も増える。
これまで挑戦者ばかりだった商店街は目ざとい商人によって一気に活気づき、これまでにない繁栄を始めていた。
そんな少しだけ変化した日常の中、蓮華はベルデの中でも一際大きな屋敷へと訪れていた。
ベルデとその周辺を治める領主、エクレスト伯爵の本宅である。
「以上が、塔周辺の現在の状況になります」
「よく分かった。なんとか上手く回っているようだな」
「はい、幸いにも塔内の魔物の出現にも変化はないと報告が上がっております。稀に上の階層から強い魔物が降りてくることもあるそうですが、移動中の挑戦者が発見して、大半がその場で退治されているようです」
「それで、問題は犯人の方だ」
エクレスト伯爵は、蓄えた白髭を撫でながら手元の資料から視線を上げる。その眼光は鋭く、とても七十を超えた隠居手前の老人とは到底思えない。
それほどの力があるからこそ、シャノンの中でも一二を争う重要拠点であるベルデの収めることを許されているのである。
「現在兵士と騎士団が追跡を行っておりますが、行方の捜索は難航していると情報が上がっております。おそらくフィリスタとの間にある山岳地帯に潜伏していると考えられますが、あそこは賊どものアジトも多く、捜索に専念出来ていないのかと」
「面倒な所に逃げ込まれたか」
「フィリスタにも応援を要請しましたが、返答は芳しくなく……」
「頭だけの連中だ。仕方あるまい」
「いかがしましょうか?」
「そのまま捜索は続行させろ。それと、五日後から王都に向かうぞ」
「それは私もでしょうか?」
少し驚いたように蓮華が伯爵を見る。
「当然だ。お前には、陛下と各国の重鎮に状況の説明をしてもらう。塔の管理はイゾイー家に任せていたのだ。当主が病床であろうと、それは変わらん。お前が名代だというのならば、その任をしっかり勤めろ」
「承知いたしました」
蓮華は深々と頭を下げる。その口元に笑みを浮かべながら。
五日後、予定通りエクレスト伯爵は蓮華を連れてシャノン王都クリミナにある王城を訪れていた。
謁見の間には、すでに文官武官がずらりと並び、膝を折るエクレスト伯爵と蓮華を興味深げに観察している。
そして、兵士の一人が王の入室を告げた。
「シャノン陛下、入室!」
声に合わせて、部屋にいた全ての人間が首を垂れる。
そんな中、部屋の奥から一人の男が現れる。五十を過ぎた辺りの精悍な顔立ちは見る者を引き付け魅了する。
王としての風格か、一歩を進むたびに回りの空気が振動するような気さへ起こさせた。
王は、玉座へと腰掛けると、その場にいた全員に対して声を掛ける。
「面を上げよ」
その声は、人を従わせるだけの圧力があった。
「よく来たエクレストよ」
「陛下に起きましては、ご機嫌麗しゅうございます」
「此度の問題、報告書はすでに読んである。市民に混乱を招いたのは失態であるが、その後の対応は及第点であろう。魔物による人的被害も無いと聞いている」
「ありがたきお言葉にございます」
「しかし、何も罰則が無いのでは周りに示しがつかん。お主には、罰として現在造っている塔の防護壁の費用の出資を命じる」
「謹んで承ります」
「うむ、今後もベルデを良く収めてくれ。期待している」
「ご期待に沿えるよう、最善の努力をいたします」
王は、エクレスト伯爵の答えに満足げにうなずき、その視線を横にいる蓮華へと移す。
「お主がイゾイーの名代か」
「お初にお目にかかります。病床の父に代わり、イゾイー家の執務を預かっておりますレンゲ・ヴァロッサ・イゾイーと申します。陛下にお目にかかれたこと、大変うれしく思います」
「うむ、お主にはこの後各国の者達も集めた会議に出てもらう。そこで、此度の件、一から詳しく説明せよ」
「承りました」
その後、つつがなく謁見は終了し蓮華たちはそのままの足で別の会議室へと向かう。
兵士が扉を開け、中へと案内する。そこは、円卓の置かれた豪勢な部屋だ。
円卓にはすでに何人かが座っており、入って来た二人に視線を向けた。彼らは、塔を有する各国の首脳陣だ。今回の事件に関して、詳しい説明と今後の対策をするためによこされた重要人物たちである。
視線を受けながら、二人は兵士に案内された椅子へと腰を下ろす。
「説明の準備は出来ているな?」
「はい、資料は人数分に予備も含めて準備してあります。すでに兵士に渡し、配布されているようですが」
先に座っていた者達の手元には高級紙がある。それは、蓮華が今日の為に用意した資料だ。
説明はそれを読みながら細かいところを補てんしていくことになる。
「そうか」
エクレスト伯爵が一つ頷き、自分も手元の資料に目を落とす。
そしてしばらくするうちに、次々と人が集まり、やがて円卓のほとんどの席が埋まった。
そこに、先ほどの王が到着する。
「皆様、お待たせいたしましたな」
「いえいえ、お忙しい中お時間をいただき、こちらこそ申し訳ありません」
「なに、事の重大さを考えれば当然のこと。さて、皆忙しい身でしょう。さっそく始めましょうか」
王の合図により会議が始まった。
「さて、ではまずイゾイー男爵名代から此度の経緯を説明してもらおう」
「はい。今回の事件の始まりですが……」
蓮華がその場で立ち上がり、資料を見ながら説明を始めた。
二十分ほどかけ、ようやく一通りの説明が終わる。
蓮華が腰を下ろすと各国の首脳陣は隣の席の者達と何やら会話を始める。
そんな中、蓮華の正面に座っていた男がおもむろに手を上げる。円卓に座っているメンバーの中ではまだ若さを感じる男性だ。その細い体はいかにも文官を思わせる。それを見て、王が発言を促した。
「少々確認したいことがあります。この二名に関してですが、この後も他の塔の攻略を目標に動くのでしょうか? そもそも、彼らはなぜ禁忌とされている塔の最上階に登るなどということをしたのでしょうか?」
王は蓮華へと視線を向ける。それを受けて、蓮華が再び立ち上がる。
「一度捕まえた際に尋問を行ったそうですが、その時の話は正直に申しまして妄想癖の塊としか言えないような代物と報告が上がっております。一応まとめておきましたが、ご覧になりますか?」
「ええ、ぜひ」
蓮華は、配った資料とは別にまとめていた紙束を兵士へと渡す。兵士はすぐにそれを首脳陣へと配っていく。
それを見た首脳陣たちは、噴き出すのを堪えるように、俯いて肩を振るわせたり、小さく咳払いをして誤魔化す。
内容は、リュンが話した通りの物だ。
塔は魔人を封印するための巨大な装置であり、その封印は弱まっている。塔は魔人を倒せるための実力を付ける練習場であり、塔の主を倒すことで、魔人へとたどり着ける。
しかし、魔人の封印が弱まっており、あと五十年もしないうちに封印は破られ、世界に魔人が解き放たれる。そうなると、人間という種族が滅ぶまで、魔人は暴れるだろう。
実際に塔の主から聞かなければ、妄想癖のある痛い人間の笑い話である。
「なるほど、クク……分かりました」
発言した男も、その内容を読み口元をひくつかせ笑いを堪えている。
「しかし、これだと他の塔が狙われる可能性は高いと言うことですか」
「はい、この妄想癖に沿って行動するのならば、二人は必ず他の塔の攻略にも乗り出すかと予想されます」
「うちとしてはかなり面倒なことになりますね」
男は塔を二つ有する国、ホウロウ帝国の文官だった。それゆえ、このことの重大さをすぐに理解する。
ホウロウの有する塔は、第一歩の塔と似ていて魔物が出現するフィールド+迷宮型の塔だ。そして、そこに出現する魔物の力は、第一歩とは比べ物にならないほど強い。
もし、万が一にでもホウロウの塔が攻略されるようなことがあれば、その強力な魔物たちが塔からあふれ出すことになる。被害は、ベルデの比ではないだろう。
「うちとしては、何としても捕まえるか殺すかしてしまいたいところですね」
「それはうちの国も同じ意見だ」
「当然我が国も」
シャノンと同じような塔を持つ残りの二か国からは、同意の声が上がる。しかし、最後の一国、フィリスタからはその声は上がらない。
むしろ、この会議自体に興味も無いようなボーっとした表情で円卓を眺めていた。
それを見た王は、フィリスタの代表へと声を掛ける。
「フィリスタの意見も伺いたいものだな」
「我々としては、この事件に興味を持たない。我が国の塔は全てを受け入れ、その攻略を目標としている。この者達が攻略に来ると言うのならば、歓迎してやろうではないか。まあ、この者達の行動を見ている限りは、我が国の塔を攻略できるとは到底思えないがね」
「まあ、何となくそう言うとは思っておったよ」
「では、フィリスタはこの件に介入しないと?」
「そう思ってもらって構わない。我が国は捕まえるために兵を出すことは無い」
「そうか。では、この会議の本題に入るとしようか」
今回の会議、ただ情報の共有だけが目的の会議ではない。それも会議の内容に含まれてはいるのだが、それだけであればわざわざ各国の首脳部を召集して説明する理由は無い。蓮華の作った資料を渡せばいいだけだ。
ここに集まった最大の理由。それは、シャノン王からの一つの提案についてどうするかである。
「この二人を国際指名手配犯として、全ての国で指名手配する。同時にこやつらを追う、特別な騎士団の設立。これらに関して意見を伺いたい」
シャノン王の提案はこの二つだった。現状、フィリスタに逃げ込まれる可能性の高い隼人達を、一国で追い続けるのは不可能に近い。下手に騎士団を派遣しようものなら、そのまま侵略行為とみなされかねない。
ならば、他国にも自由に移動できる特別な騎士団を結成し、その部隊に隼人達を追いかけさせようというものだ。
その意見に、ホウロウが真っ先に賛成する。
「我が国としては願っても無い意見です。ホウロウに侵入される前に潰してしまうのが一番安全ですからね」
「カルナも同じく賛成しよう」
「サインも賛成し、騎士の派遣に協力する」
「フィリスタは、特別な騎士団の結成に関しては賛成しよう。その騎士団に限りフィリスタへの入国も自由とする。ただし、我が国から騎士を派遣することは無い」
「それで十分だ」
もともと、学院国であり国民のほとんどが文官であるフィリスタの兵士の練度は非常に低い。もし、同じ部隊に配属されることとなれば、確実に差が出てしまう。
「では、シャノン、ホウロウ、カルナ、サインの四か国から騎士を抜擢し、騎士団の設立する。細かい事は後程話し合うとして、まずは名前でも決めてしまうか」
「そのまま混成騎士団でよいのでは?」
「やはり、各国が騎士を出し合うのだ。相応の名前が必要であろう」
「名前が広まれば、その行動に対する支援も受けやすい。やはり、民を安心させるような名前が良いのでは?」
それぞれが意見を出し合い、蓮華の中ではこの日一番議論が普及したのではないかと思えるほどの時間が過ぎる。
そして、名前が決定した。
「ふむ、なかなか良い名前になりましたな」
「まったくです」
「これならば民にも分かりやすいでしょう」
「では、新たに結成する騎士団の名は、連合守護騎士団とする。各国は相応の騎士を派遣してくれることを願う」
名前を決めただけで満足げな顔をする各国の首脳陣に気付かれないよう、蓮華は小さくため息を吐くのだった。