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「ちょっとお話しないかい?」

 えー、どうも。ふぁもにかです。この度はとある業界の人々に喧嘩を売ることになり得るタイプのオリジナル小説を書くことにしました。まぁボチボチやっていこうかなと思います。ちなみに『これが僕らの新宗教聖戦(ネオ・ジハード)』略して『これジハ』は週一もしくは0の付く日に更新したいと考えております。何はともあれ、これからよろしくお願いします。


 ――1885年。ドイツ。

 広場は騒然としていた。逃げ出す者。腰を抜かす者。立ち尽くしたまま現実逃避を始める者。実に様々だ。広場に残った数多くの人々は皆一点を凝視している。彼らの視線の先には全身血まみれの人間が立っている。右手には血まみれの本。左手には直径1メートルもの大きさの人の首。はっきり言って異形である。まさに人外たる化物のなれの果て。それを携えた全身血まみれの人間が突如広場の中央の高台に現れたのだ。先の人々の反応は当然だろう。


「皆の衆、よく聞け」

 人間の声は力強く、騒然を通り越して混沌と化した広場を一言で黙らせる。まさしく鶴の一声だ。人間が弱っているように感じられないことから全身の血は大方返り血なのだろう。


「神は死んだ。――我が殺した」

 人間はニイッと表情を凶悪なものへと変えて左手に掴んだ巨大な首を頭上に掲げる。今度こそ人々は戦慄した。我らの神が殺された? そんなことあり得ない。誰もが否定しようとした。しかしできなかった。彼らの眼前に映る首は死してなお神々しく、あまりの神聖さゆえに誰もが皆目の前の首を神のなれの果てだと直感で認めてしまったのだ。


「我が名はニーチェ。フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ。人類史上初の神殺しを成し遂げた『超人』だ。もう一度言おう。神は死んだ。神を信仰する旧時代は今日をもって終了した。これからは人を超越した我のような超人を信仰する新時代だ。目に見えない不確かな神はここに滅びた。皆の衆、選択せよ。新時代を生きるか。旧時代にしがみつくか。……賢明な判断を期待する」

 人間――ニーチェ――は愉悦に満ちた表情で一方的な演説を終えると神の亡骸と右手の本を手放して空間と同化するようにして姿を消した。

 この日。ニーチェの動かした運命の渦は宗教を大きく変化させることとなった。

ニーチェの衝撃発言を受けた人々の反応は二極化した。ニーチェの言葉を信じ神はもはやいないと判断。ニーチェが残した一冊の本から『神理』を知り選ばれし超人を信仰することにした人々。ニーチェの言葉の一切を頑なに否定し神の生存を信じ続けこれまでと同様に『魔術』を行使する道を選んだ人々。現代宗教において前者はネオ宗教と呼ばれ後者は旧宗教と称される。


 ――後にこの出来事は『ニーチェの凶笑』として裏社会の歴史に刻まれることとなるのであった。



 ◇◇◇



「少年よ。君に伝えたいことがある」

 とある薄暗い一室にて。彼はいた。180センチを裕に超える長身痩躯にオールバックにセッティングされた燃えるような紅髪。わずかに白髪が混じっていることから壮年の男性なのだろう。しかし年相応の落ち着いた雰囲気とは無縁だと言わんばかりに生き生きとした表情を浮かべている。童顔に分類される顔も相重なってその姿は無邪気に野原を駆け巡る少年を幻視してしまうこと請け合いである。


「我は神理(しんり)識徒(しきと)である」

 男は得意げに眼鏡をクイっとあげると毒々しいほどに白さを主張する白装束をバサっとなびかせる。中々に悦に入っているらしく動作がいちいちオーバーだ。いい歳のくせして恥ずかしくはないのだろうか。街中で同じ動作ができるのであれば彼は一部から猛者認定されることだろう。


「神理の識徒?」

 ここで男の前方で体育座りをしている少年が疑問の声をあげる。男と同じく紅髪の少年である。いい歳のくせに精神年齢が低いであろう男の話を真剣に聞いているようだ。少年にとって興味深い話だったのか純真無垢なルビー色の瞳が若干輝いているように見える。男は少年の問いに待ってましたと言わんばかりに一つ頷き演技染みた言動で流暢に語る。神理の識徒の何たるかを。


 神理の識徒。それは科学と相容れない異質な概念――神理を扱う者達を示す言葉である。術式を作成し己に宿る神力を注いで術を発動させる魔法みたいなもの、それが神理。神理の識徒達は何らかのネオ宗教に属し日々裏の世界において信者獲得合戦を行っているのだ。ポピュラー所といえば『セイントキリスト教』『ディヴァインイスラム教』『テラヒンデュー教』といったネオ宗教があげられる。他にもあるがここでは割愛。


「そして我が属するのは――唯我独尊教。己の定めたルールのみに従い絶対的な自由を尊重する個人宗教だ。我は唯我独尊教の創設者にして一代目超人を務めている」

「……唯我独尊教」

 少年は反芻するように男の創設した宗教名を口にする。その瞳はますます輝きを増していく。ちなみに個人宗教とはネオ宗教以外の宗教である。ネオ宗教を歴史あるポピュラー宗教と位置付けるならば個人宗教は個人が創設できるマイナー宗教といった所だ。また超人というのはいわば国王のような立場だ。つまり男は唯我独尊教の中で一番偉く崇拝されるべき立場だということになる。


「少年よ。変わりたいとは思わないかね?」

「……変わりたい。変わりたいよ父さん!」

 男の問いかけに少年は力強く答える。少年の強い意思の籠った眼差しに男は「うむ。いい返事だ」と満足そうに頷く。今ここにおいて男と少年が父子関係だと証明された。是非とも少年には男のような残念な大人になってほしくないものである。


「我、緋条(ひじょう)(すすむ)緋条理(ことわり)に命じる。手段は問わん。我が愛する唯我独尊教の広告代表としてなるべく多くの信者を獲得せよ。唯我独尊教存続のために」

 天井のスポットライトが男――緋条進――のみを照らす中、進は少年――緋条理――を指差して命令を告げる。相変わらず進の動作が仰々しいのはご愛嬌と思い込むしかない。


 ――この日。この時。緋条理の世界は確かに様変わりすることとなった。日常に隠された非日常を知った少年は今ここにおいて生まれ変わり新たな世界に足を踏み入れることとなったのであった。



 ◇◇◇



 ――五月八日(月) PM4:00 A校舎 一階廊下


「おっかしいなぁ~」

 紅髪にルビー色の目をした少年――緋条理――は廊下を歩いている。身に纏っているのは制服だ。黒を基調として所々に赤のアクセントが加わっている類いのものである。理の燃えるような紅髪と中々似合っている。

 現在地は神理の識徒育成学校日本支部『いざなぎ』。通称いざなぎ学校。福岡に存在し小等部から大学部まで一貫しているマンモス校だ。『超』なんて言葉がショボく思えるほどに沢山の生徒がここに通っている。入学条件はたった一つ。神理の存在を知っていること。ここに通う生徒たちはネオ宗教や旧宗教、個人宗教等の裏社会の常識を携えてここに足を踏み入れる。父親から神理について教わった理も例外ではない。


「なにがいけなかったのかなぁ……」

 理は頬を掻きながら思案する。思いをはせるのは今朝のこと。父親から唯我独尊教の信者獲得の使命を受けて理はいざなぎ学校高等部に一年生として転入することとなった。

 日本支部に通うこととなった理由は簡単だ。日本支部が一番信者獲得の可能性が高いからだ。日本の宗教事情は他国と比べて非常に混沌としている。セイントキリスト教の信者もいればディヴァインイスラム教の信者もいる。テラヒンデュー教だったり無神教だったりの信者もいる。個人宗教の数など数えきれないほどに存在する。要は日本全体が1~2個程度のネオ宗教で統一されていないのだ。例えば国全体でセイントキリスト教のみを信仰するといった状況にないのだ。そこに付け入れば理の所属する唯我独尊教の信者を増やせるとのことで理はいざなぎ学校に転入してきたのである。


 先生に呼ばれた理は1-5と書かれた教室に入り黒板を背後に立つ。理を興味深そうに見つめる41対82の瞳。最初が肝心だと理は1年5組の生徒達を一瞥する。なにせ日本を重要地点として信者獲得に努めようとしているのは何も唯我独尊教だけではない。ポピュラー宗教個人宗教問わずどのネオ宗教も日本での信者獲得合戦を繰り広げている。唯我独尊教を掲げた理など飛び入り参加の新参者に過ぎない。圧倒的不利な状況下で信者を獲得するためには第一印象が大事であり、それはつまり転入生たる理の自己紹介に全てがかかっているといっても過言ではないのだ。理は一度深呼吸をして声をあげた。「皆さん初めまして。僕は緋条理。唯我独尊教の敬虔たる信者が一人です。唯我独尊教広告代表としてこれからじっくり皆さんを唯我独尊教大好きっ娘に洗脳してみせますのでどうぞよろしくお願いします」と。


 理にとってこの自己紹介は完璧そのものだった。クラスメイト全員が理に好印象を抱いてくれる魔法の言葉だと理は認識していた。理は転入生がやってくる際に恒例の質問タイムでは唯我独尊教に関する質問を初め様々な質問が飛び交い、休み時間毎には唯我独尊教に興味津々な1年5組クラスメイト諸君に囲まれる未来を想起していた。しかし現実はそうはならなかった。結局誰も理と接触してこようと試みず、理から声をかけてもどこかよそよそしい反応が返ってくるだけだった。転入生デビュー失敗。今現在の理の悩みの種である。


「なにがダメだったんだろ。ちゃんと冗談交じりに言ったんだけどなぁ。敬語にも問題なかったはずだし……」

 理はうんうんと頭を悩ませて放課後の廊下を適当にぶらつく。自己紹介の際に満面の笑みで『唯我独尊教』やら『洗脳』やら口走ったことが原因だとは露にも思っていない。ともかく1年5組クラスメイト陣とのファーストコンタクトに見事に失敗した理には世話焼きな心優しきクラスメイトによるいざなぎ学校の案内がない。自力で学校内の施設の把握の必要に迫られた理は男子寮を探す傍ら学校内をうろつくことに決めて――


「ねぇ。少しいいかな? 緋条理くん」

「へ?」

 頭上から鈴を転がしたかのような澄んだ声が響く。理が視線を向けた先には階段。その踊り場に微笑を浮かべた少女が立っている。淡い桃色の髪を背中までまっすぐに伸ばし、スレンダー極まりない体躯。可愛いというより美人さんと表現した方が似合っている少女。理には見覚えがあった。1年5組クラスメイトの一人だ。


「君は確か――」

「私は結城リア。君の言う唯我独尊教に興味を抱いた一人だよ。お互いの親交も兼ねてちょっとお話しないかい?」

 桃髪の少女――結城リア――は凛としたサファイアのような瞳で階下の理を見下ろして提案をする。降ってわいたような魅力的な提案。やっぱり僕の自己紹介にミスはなかったんだと理は快諾したのであった。



 ◇◇◇



 ――五月八日(月) PM6:00 A校舎 一階廊下


「いやぁ、ホントに助かったよリアル()さん。僕一人だったら確実に迷子になってたね。ありがとうリアル娘さん」

「ふふふ。どういたしまして。理くんの反応はとても面白かったから私としても学校を紹介した甲斐があったってものだよ」

 リアの案内のおかげで一通り校舎の把握に成功した理はリアにお礼を述べる。実際リアと談笑しながらの校舎内の施設把握は楽しかったと言える。あまりに校舎内が広くて複雑なせいで少々歩きつかれたことを除けば中々に有意義な時間だった。


「ところでリアル娘さんというのは?」

「君の愛称のつもりだけど? 結城リアと僕にここについて色々と教えてくれるチュートリアルとをテキトーにかけて作ってみたんだけど……もしかしてそういうの嫌いだった?」

「いや。そういうのを付けられるのは初めてだから新鮮だなぁって思っただけ」

 リアは「リアル娘さんねぇ……」と理がつけた愛称を自身に馴染ませるように何度も呟く。歩調が軽やかになっていることから理が親しみを込めて命名した愛称は気に入ってくれたようだ。良かった良かったと理はしみじみと頷く。


「後は男子寮に理くんを案内すればOKだね」

「何から何まで本当にありがと。リアル娘さん」

 数分ほど歩いて理とリアは校舎の玄関ホールにたどり着く。その間の話題は理の愛称について。リアが「お返しに私も理くんにピッタリの愛称プレゼントするよ」と得意げに笑みを浮かべたのが始まりだ。リアと親交を深めるためどんな愛称でも受け入れるつもりだった理。だが実際リアの口から飛び出してきたのは『獄炎の断罪者』だったり『理不尽な反逆者』だったりと理の想定の埒外のものばかり。邪気のない素敵な笑みを見せるリアを傷つけないよう丁重にお断りして今に至る。理の脳裏に『リアル娘さん厨ニ病説』がまことしやかに囁かれることになるきっかけの出来事である。ちなみに今朝自分が『洗脳』などという厨ニ病チックな言葉を口走ったことはきれいさっぱり忘れ去られている。


「ふふふ。さっきも思ったけど感謝するのはまだ早いんじゃないのかい?」

「ん? それってどういう意味?」

「ここいざなぎ学校日本支部の校舎が一つだけだと誰が言ったのかい?」

「な、なんだと……!?」

「いざなぎ学校はA校舎からF校舎まで全部で6校舎あるんだよ。他にも体育館だったり多目的ホールだったりと色々あるしね。2時間そこらで学校全体を把握したと考えるなんて甘い甘い。ここのマンモス校レベルを舐めてもらっちゃあ困るよ。日本の神理の識徒育成学校日本支部はここ(福岡)にしかないんだから」

 理はリアから告げられた新事実にわなわなと戦慄する。リア曰く、今日案内したのはA校舎らしい。初見の方なら絶対に迷うであろう複雑怪奇な構造をした迷宮(校舎)が後5つもある。理はドッと疲れを感じずにはいられない。


「……あ、明日も案内頼めるかな? リアル娘さん」

「うん。この私に任せなさい。とりあえず明日はB校舎だね。高等部の生徒はA校舎とB校舎さえ知っていれば大体何とかなるからね」

「え、そうなの?」

「うむ。そうなのだよ」

 理はホッとため息をつく。リアの言い方からB~F全校舎を回る必要はなさそうだと判断したからだ。虚ろになりかけた目を正常に戻すと理はリアとともに校舎を出ようとする。


「ん?」

 何か声が聞こえたのはまさにその時のこと。理は立ち止まり校舎の奥を見やる。リアも「どうかしたのかい?」と理の背中から理の視線を追う。


「なんだ? この俺の言うことが聞けないのか?」

「聞く必要がありません。分かったらさっさとどいてください。私にはこれから用事があるんです」

 二人の視線の先には一人の女生徒と彼女を取り囲む複数の生徒達の姿があった。ナンパだろうかと理は推測するも「なッ!? 貴女ナルナーク様の要望を断る気なの!?」「あなた、正気? ナルナーク様に誘われることがどれだけ光栄だと思っているの!?」「謝るなら今の内ですわよ!?」との甲高い声が理のナンパ説を否定する。


「ナルナーク・フォン・アシュトレイ。隣の1年6組の生徒だよ。個人宗教『恋愛真教』の創設者なんだけど……その実、ただ彼がハーレム形成してるだけなんだよね」

 何これと首を傾げる理にリアがすかさず分かりやすく説明してくれる。確かに緑髪碧眼のどこぞの皇子かと問い詰めたくなるような見目麗しい外見をしたナルナークはハーレムを形成できるだけの素質を持っていると言える。リア自体は苦笑いをしているのでナルナークに好印象を抱いていないようだが。

 二人をよそに女生徒と彼女を取り囲むナルナークと愉快なハーレム達との揉め事は加速する。ナルナークによるハーレム加入申請を丁寧語で断る女生徒。言葉で通じないと見るや女生徒に手を出そうとするナルナーク。「や、やめてください!」と女生徒が叫ぶも今現在A校舎の玄関ホールには誰もいない。理とリアを除いて誰もいない。


『おい緋条。ちょっと■■■してくんない?』

『アハハ。緋条のくせに何言ってんだァ? バッカじゃねえの?』

『お前に■■なんてあるわけないだろ。頭大丈夫か?』


「理くん?」

「のど乾いたから飲み物買ってくる」

 気づけば理は揉め事の中心地へと歩を進めていた。「じゃあ私にも何か炭酸入りのものを頼めるかい?」と尋ねるリアには後ろ手に手を振って応える。今日一日世話になったんだからジュース一本くらい奢らないとなと理は前を向く。目指す場所はナルナーク一行に囲まれ身動きのとれない女生徒の背後に存在する自動販売機である。


「――ッ!?」

「おっと。悪い悪い」

 理はナルナークにわざとぶつかるようにして接触する。背後からの衝撃にナルナークは前につんのめる。突然の闖入者を前に誰もが「……え?」と石像のごとく固まる中、理は何事もなかったかのように紅茶と炭酸飲料を購入する。


「テメエ、何しやがる!?」

「何って……ジュース購入?」

「おい。ふざけてんのか?」

「いやいや。僕は至って真面目だよ。ただ自動販売機前を占領してる君をのけてジュースを買っただけじゃないか。というか自分の気に入った女の子を君のハーレムに加入できなかっただけで何をそんなに怒ってるのかな? 折角のイケメンが台無しだよ?」

「……よっぽど痛い目に遭いたいらしいな」

 いち早く我に返ったナルナークは理の胸倉を掴んで凄んでみせる。ナルナークの怒気を気にも留めずに挑発し続ける理。早速ブチ切れたのかナルナークが理に殴りかかようとして――


「ナルナーク様! この人、例の転入生ですよ! 唯我独尊教の!」

 理の顔に見覚えのあったナルナークハーレムの一員の声によって拳を止める。「ほぉ。こいつが例の……」と理の胸倉を放して嘲りを存分に含んだ笑みを浮かべるナルナーク。当の理はバカにされていることに気づいていない。それどころか唯我独尊教がちゃんと周知されているという事実に喜びを隠しきれずにいる。


「ん? 何を笑ってんだ?」

「ああいや、僕の所属する唯我独尊教が順調に知れ渡っているのが嬉しくてさ」

「ククッ。確かに傍若無人な劣悪個人宗教として広まってるな。転入生は危険人物だというお墨付きで」

「え? そうなの? ……まぁいっか。君のハーレム教よりはマシだろうし」

「ハーレム教じゃねえ! 恋愛真教だ! 新時代にふさわしい恋愛価値観を創造する崇高な宗教だ!」

「女の子に手を出してまで君のハーレムメンバーに無理やり加入させようとしといて何言ってんだか」

 ナルナークの挑発を意にも介さずにやれやれと理はため息交じりに言葉を吐く。唯我独尊教が誤解されて伝わってしまっていることは意図せぬ誤算だったが唯我独尊教の存在がより多くの生徒の知る所になっているのであれば及第点だ。何せ現行の唯我独尊教のメンバーは理を含めてもたったの6人なのだから。まずは存在を知ってもらわなければ始まらないのである。誤解を解くのは後でいい。


「クククッ……いいぜ。そこまで俺の恋愛真教を愚弄するってんなら俺にも考えがある。俺、ナルナーク・フォン・アシュトレイは恋愛真教の超人として唯我独尊教に新宗教聖戦(ネオ・ジハード)を申し入れる」

「ネオ・ジハード? なにそ――」

「神術≫≫≫【契約】」

「――ッ!?」

 挑発が通じず逆にカウンターを喰らったナルナークは愉快そうに理を指差し神術を発動させる。右手の甲に熱を感じた理が目線を向けるといつの間にか青白く淡い光りを放つ六芒星の紋章が刻まれていた。


「クククッ。これで俺とテメエとのネオ・ジハード開始は確定だ。実施日は一週間後。俺の恋愛宗教。テメエの唯我独尊教。互いの宗教の主義主張を賭けて戦おうじゃないか。テメエが勝てば俺は恋愛真教の看板を下ろす。そいつにも手は出さねえ。テメエの好きにすればいい。た・だ・し。テメエが負ければ唯我独尊教の看板を下ろせ。俺の一挙手一投足の邪魔をするな。勿論そいつも俺のハー……恋愛真教の一員になってもらう。いいな?」

「え!?」

「……言ってる意味がよく分からないけど要は君に勝てばいいわけだ。いいよ。唯我独尊教広告代表として君を倒してやる」

「ちょっ、待っ――」

「フン。大した自信だな。哀れに思えてくるよ。『神理』を知って間もない転入生ごときがどこまで戦えるか、非常に楽しみだ。ああ、分かってると思うが逃げるなよ? 逃げればその紋章が牙を向くからな。痛い所じゃ済まないぞ?」

 一方的にネオ・ジハードのルール決めを行い理の了承を得たナルナークはハーレム陣を引き連れてその場を去っていく。何とも悪役染みた高笑いとともに。後に残されたのは「で、結局ネオ・ジハードって何?」と首を傾げる理と「わ、私を置いて勝手に話を決めないでくれませんかッ!?」と訴える、ついさっき理とナルナークに無視されて涙目となった女生徒の二人のみであった――



リアル娘さん「私の存在を忘れていないかい……(涙)」

一同「「「「あ……」」」」

 ということで第一話終了。導入部って奴ですね、わかります。現時点で分からない設定等は後々説明するつもりなので生暖かい目で待ってやってくださいませ。……設定表とか随時更新式で投稿した方がいいのかなぁ。


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