イラッとしたら、パイを投げつけましょう。
やってみたくても、出来ないのが現実なんだ…
(友三、心の俳句)
――ああ、イライラする。
私は小塚 晴。この春から晴れて夢のキャンパスライフを迎えました。
そこそこの大学に入学して、はや一ヶ月、人見知りの私にとって、友達ができた事が奇跡です!!
だけど、世の中そうは上手くいかないのが現実。
私は今とても困っています。
「は〜るちゃんっっ!」
――………またかよ。
「?晴ちゃん?ねぇ、晴ちゃんってば!」
――うぜぇぇ
「なんです?佐久間先輩」
この人は佐久間 武仁。
同じ学部のひとつ上の先輩だ。
顔よし、性格よし、スタイルよし、の欠点なんてあるの?っていうくらい完璧な人だ。大学も特待生で入ったという、素晴らしい頭の持ち主。そして、よくモテる。女(主に)はだいたいこいつの味方をする。
しかし、私にとってうざい人に他ならない。
「連れないなぁ、晴ちゃんは」
「釣りたいならば、そこらへんのお姉さんにしたらどうですか?お手頃でしょう(私に比べて)」
「そんなこと言わないの、俺は晴ちゃんと一緒に居たいのに……」
少し悲しそうな顔をしてみせる。
―うぜぇぇ!!もうウザさ倍増だよ!何悲壮感だしちゃってんの!?周りは私が悪者のような目で見るしさぁ!困ってんのはこっちじゃぁぁぁぁ!!!!
「あ、あははは…冗談きついですよ。私なんかに構っていてもつまらないですよ?どっか行って下さい」
―私は大人だからな!心の声なんて漏らさないぜ!
最後の本音は除いて…
「?つまらなくないよ?晴ちゃんと居るの凄く楽しいし、ほっとするんだ」
「………」
「だからさ、晴ちゃん、俺と付き合わない?」
「………」
「ん〜、でも、俺としては、もういろんな過程乗り越えて婚約でもいいと思うんだけど、どうかな?晴ちゃん。……晴ちゃん??」
――聞いていれば、ずけずけと……
理想ばっかり吐かしやがって……
だいたい私がお前に惚れていると思うか?(答えはNOさ!)
顔がいいぶん、何しても許されると思ってんのか?
お前の取り巻きどももうぜえし………
晴の手がプルプル震えているのを見た、武仁は………
「どうしたの、晴ちゃん。もしかして、嬉し泣き??そうだったのか!嬉しいなぁ」
……………コロス。
運よく近くにはお笑いとかでよく使われているパイがあった。
それを密かに手に持ち、構える。
「待って、……あった。泣かないで。例え嬉し泣きでも、晴ちゃんに泣かれるのは辛いんだ……」
武仁はハンカチを手に持ち、晴の顔を覗き込むような姿勢になった。
――今だ!!!!
―ぱあぁぁぁぁぁんっっ―
「はぁ、はぁ、はぁ」
「……………………」
落ち着いたところで一言。
「なんで私がお前と付き合わなくちゃいけないんだ?顔に自信があるからといって、全てが許されると思ってんのか?なめんじゃねーよしかも、どんだけ勘違いしてんだよ。嬉し泣き?するわけねーだろ。あれは怒りで手が震えてしまったんだよ。この勘違い野郎が。さっさと失せろ」
ここまで一息で言った後、晴はハッとした。
「…と、いうことで、失礼しますっっ!!!」
私は猛ダッシュでにげましたよ。ええ。
でも、これで、あの人は私に興味をなくし、付き纏われる事もなくなると思うと、とても清々しい気持ちでいっぱいです!!!
―やったぁぁ!明日から平穏な日々が手に入る!!
翌日、そう意気込んで学校へ向かいました。
だけど、理想どうりにいかないのが現実。
逃げた後ろで先輩が爆笑していたとか、その後もっと執拗に追いかけ回される運命だったとか、結局強引に付き合わされたとか、いつの間にか、子供が出来ていたとか。(もちろんできちゃった婚)
私は知る由もなかった。
しかも、全てが武仁の手の平の上でもがいていた事にすぎなかった、という事に関しては一生知る由もなかった。