03
かってはいないだろう。
瞳を閉じる。次に瞳を開いた時、子犬が居たのは公園ではなく、どこかの商店の突き出したビニール屋根の下だった。そこで子犬は女の子に抱かれている。女の子の隣には、・・・・・・同い年だろうか? 同じ制服を着た男の子が縁側に座っている。
「一件目だし、まだまだ勝機はあるだろ」
「だよねっ、じゃ、早速二件目のお宅訪問としようかっ」
「急ぐ必要もないだろ。ってか、今雨宿り中っての忘れたのか」
「急に振ってくる雨が悪いのさっ」
女の子と男の子は、子犬を連れて家を回っているらしい。たぶん、子犬の里親となってくれる家を探しているのだろう。
子犬はただじっと、二人を見上げている。
『たのしかった、いろんなものがみれた、ひとりじゃなかった』
そんな言葉が浮かびあがってくる。ボクはただただ子犬を眺め、それから空を見上げる。確かに雨は降っていて、二人と一匹は雨宿り中だったのだろう。
瞳を閉じる。過去から過去へ。もっとよく言えば、過去から現在に向かって、跳躍を繰り返す。次に瞳を開いた時に視えてきた光景は、また同じように商店の軒先で座っている二人と一匹だった。違いがあるとすれば、曇り空であることだけだろうか。
「見つからないねぇ」
「そうだな。まぁ、そろそろ見つかってくれるとありがたいけど」
「見つかるよ、次くらいに」
「はぁ。どうしてお前はそう能天気なんだよ」
「能天気って人聞きが悪いなぁ。私、前に言ったじゃん」
「なにをだ?」
「あれぐれっと、だよっ」
「あれぐれっと、ねぇ・・・・・・」
二人は楽しげに会話をしている。どうやら何件かまわったけれど里親は見つかっていないようだ。それにしても、あれぐれっととは何なのだろうか。私には意味が分からなかった。子犬はというと、今度もまた女の子に抱かれている。けれど、
『どうして。イヤだよ。また。どうして』
浮かんできた言葉は、また捨てられるという不安と恐怖だった。
「・・・・・・」
確かに、子犬にとっては捨てられるというのは正しいのだろう。いかに里親を探すといっても、子犬にとっては、二人に捨てられるのは変わらない事実だ。
瞳を閉じる。跳躍した先に視えたのは、また同じ店の軒下だった。けれど、空は雲の切れ間