02
ボクは小さく笑うと、首を振り考えを中断した。そして、一つ大きく息を吸うと、力を制御する。
この物語は、子犬と女の子の物語。
ボクが瞳を開いた時、そこは音と色に囲まれた世界で。不確かな世界に身を置いているボクにとって、すべてが揃った世界だった。ボクが過去を視ると、そこには色と音があり、世界の別の在り方がボクに映る。ふと下を見ると、ボクの足下にはダンボールに入った子犬が居た。丸くなって震えている。ここはどこだろうかと辺りを見回すと、公園の片隅らしいことがわかった。けれどこの公園は小さくて、ボクと出逢った公園とは別の公園らしいことが分かる。
そこに制服を着た女の子が現れて、子犬が居ることを認めるとこちらに駆け寄ってきた。
「・・・・・・」
女の子は何を思っているのだろう。ただじっと、しゃがんで子犬を見下ろしている。
「・・・・・・よしっ」
女の子は一度大きく頷くと顔を上げ、すぐに子犬の元から離れていった。ボクは気になったが、子犬を通して過去を視ているので子犬の側から離れることはできない。そして子犬は、小さな声で鳴いていた。寂しいと、悲しいとこぼしながら、元の飼い主に向けてだったのかわからないけれど、どうしてともこぼしていた。・・・・・・これもボクの力の一部。過去を視るときに、対象者の想いも文字として浮かびあがってくる。
けれど私は傍観者。ただ視ることしか許されない存在だった。
ここで一度過去が途切れ、また別の過去に繋がる。そこは夕暮れの公園で、子犬に餌をあげている女の子がいる場面だった。これは、私が大切なモノを見つける過程を視ようとしている為に起きる過去の跳躍。テレビ番組の録画のように、要らないモノ、たとえばCMなどをスキップするかのような感覚だ。
場面が浮かびあがると同時、子犬の想いが文字として浮かんでくる。
『こわい、こわい、こわい、・・・・・・おいしい、けどこわい』
そんな文字が浮かんできて、ボクはクスッと笑ってしまった。
『もうないの? ありがと』
そんな文字が浮かんでくる頃には、綺麗に食べ終えて短い尻尾を振っていた。
女の子は軽く子犬の顎の下を撫で、微笑んでいる。子犬もまんざらではないようで、大人しく撫でられている。
「・・・・・・」
そこには芽生えたばかりの情が見て取れた。それがどの種類のそれなのか、芽生えたばかりだから分かる筈もないけれど。それは何という感情なのだろう。ボクはそれをそれと言い表す言葉を知らなかった。まだ芽生えたばかりのそれは、当事者である筈の一人と一匹にも未だ分