01
板が。【中間地点。休憩場】と書かれている。
「・・・・・・」
これで半分なのか。今来た道も、これから進む先も、木々が邪魔して先まで見通せない。最初は小さい公園だろうと思ったけれど、横長の公園だったらしい。
「――――」
ふと、音がした。私がそちらを見ると、そこは草むら。ガサゴソ、ガサゴソと音がする。
「・・・・・・犬?」
草むらはガサゴソと揺れているが、私の瞳にはそれらは白黒でしか映らない。ガサゴソと揺らしている物体が私の瞳に色を灯す。それはまさしく犬だった。それがズサっ、と体を滑らせて草むらから飛び出してきた。・・・・・・ちょうど、私の目の前に。
「きゃふっ」
甲高い声をして、くてっと寝そべっている小型犬。もしかすると単にまだ子犬なのかもしれない。鳴き声がそんな感じだったから。
「きゅ~」
ボクは音と色を運んでくれたこの子を抱き上げて、両膝の上にのせた。
「くぅっ?」
子犬は愛らしい鳴き方をして、ボクの顔を見る。どうやら滑ったショックから立ち直ったみたいだ。数秒、子犬と目が合う。すると興味がなくなったのか、ぷいっと視線を外し膝の上で丸くなってしまった。丸くなり、規則正しい呼吸音を漏らしている。眠ってしまったのだろうか? とても人に慣れているような仕草ばかりだったし、飼い犬なのかもしれない。
首もとをみると、そこには黄色の首輪がされていた。
「・・・・・・」
ボクは気になった。この、音と色を運んでくれた子のことが。ボクは気になった。この子に音と色を与えてくれたであろう飼い主のことが。
だからボクは、力を使うことにした。その力には代償がある。代償というのはおかしい気がするから言い換えると、付属効果といえるかもしれない。それが、ボクが日頃体験しているこの光景だ。音がなく、色がない世界。この耳と瞳を通して伝わる世界は、どうやら色と音を運ぶために必要なモノがあるらしい。つまりそれを持っているモノは音を運び、色を灯す。が、それを持たないモノはただ白黒の、サイレント映画と化してしまう。
ボクが持つこの力は、その必要なモノを視ることだ。この子犬の過去を、大切なそれを見つけるまでの物語を視ること。その過去の景色の中で、ボクはただの傍観者であるしかない。過去を視ているだけで、過去に飛ぶ訳ではない。だから、ボクが傍観というカタチの干渉をしても、なんら現在に影響はないのだ。あるとしたら、それを視た自分の心境くらいだろうか。
「・・・・・・ばかばかしい」