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Ⅰ.春の陽気と冷たい風と-allegretto-

 音のない世界。色のない世界。けれどそれはボクにとってはいつからか当たり前になっていた日常。

 音はないけれど、この耳は確かに音が聞こえる。色は無いけれど、この瞳には確かに景色が映っている。

 不確かにしか映らないこの世界は、どこか冷たく、ほんのりと優しかった。

「・・・・・・・・・・・・」

 ボクには不思議な力があった。その存在を意識した時に、その存在を理解していた。不思議な感覚だった。けれど、理解した瞬間にはこの力は確かな自身の能力だと意識していた。

 ボクは少し広い歩道を歩いていた。四車線の車道には車が頻繁に行き交っている。ボクは立ち止まり、その景色を眺める。車は頻繁に行き交っているけれど、ボクの耳に届く音は無かく、ボクの景色に色が灯ることも無かった。

 少し歩くと、道沿いに大きな公園があった。もうすぐ陽が暮れる時間となりつつある公園は、この時間帯なのにも構わず人を受け入れていなかった。ボクは気になった。理由を訊かれたら、なんとなくとしか返せないけど。それでも確信があった。・・・・・・ここには色があり、音があると。

 公園に一歩踏み込む。すると、肌に心地いいほどの微力な風が吹いていた。季節はまだ夏の終わりに差し掛かる頃なのに、すでに風は秋のそれだった。

 公園の中を歩く。少ししてY字路にでる。そこには公園の地図が描かれた大きな看板。ボクはそれを覗き込む。どうやら、このY字路を左に行くと芝生のグラウンドがあり、右に行くと遊歩道となっているそうだ。看板から目を離す。左の道の先には青い芝生が見えた。右の道の先には細い遊歩道が、ゆらゆらと蛇行しながら続いている。遊歩道の周りにはたくさんの樹木が植樹されており、道は隠れるようにして消えていた。看板を見直す。どうやら遊歩道はグラウンドの反対側に出るらしい。ボクはもう一度見比べ、右の遊歩道に足を向けた。理由を聞かれたら、なんとなく、としか返せない程度だけれど。それでも、予感がした。・・・・・・この先には、音が溢れていると。この先には、色が灯っていると。

「・・・・・・」

 遊歩道をやや早めに歩む。・・・・・・ボクにとって音が聞こえるということは、色が灯るということは、とても嬉しいモノだった。それは、表すとしたらこんな言葉がお似合いだろうと自負している。だからボクは声にして、そんな自らの気持ちを素直に表現した。

「わくわく」

 ボクは大きく腕を振り、その先の出逢いに想いを馳せた。

 公園は規模としてはかなり大きい部類に入っているだろう。遊歩道は蛇行しているといっても、公園としてはかなりの長さだ。五分ほど歩いて、ようやく木製のベンチが見えてきた。背もたれはないが、多少休むには十分だった。ベンチに座ると、正面には矢印の形をした立て看


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