チェルノブイリと君と。
十年前に起こった原発事故で封鎖された地域、通称「チェルノブイリ」で暮らす十七歳の主人公、小林を巡る物語。
原発事故以降、チェルノブイリは完全封鎖されて、中から人・物が出ることは一切禁止された。逃げ出そうとした者たちはすぐに殺される。俺の友人の吉木のように。
物資は軍によって配給される。その物資の中に含まれる薬「ドニム」が、放射線に満ちた世界の中で唯一生き残るための命綱だった。
吉木の死からすぐ、若者たちのリーダーである友人の松本は脱走を企てていた。ほとんど不可能であろうその計画は、しかしどうしようも無く動き出してしまう。
そして時を同じくして、国家反逆罪を犯した少女がチェルノブイリに連行されてきた。ドニムを持たずに。声帯を潰され喋れない彼女に課されたのは、放射線による苦痛と死だった――