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最初のプレゼントです

「それでは、言い訳を聞こうか、父さん。」


「うん?私が何か悪い事でもしたのか?」


「ああもう!人身売買はれっきとした犯罪だろ!?」


「この子の耳と尻尾を見ろ、獣人だ。合法合法。」


「道徳的な話をしてるんだよ!」


「?だってお前がさみしそうだったからな。」


「さみしいよ!さみしいからこそコレは悪手ですよね!?」


 ナナリとお父様が口論を始めたよ。あ、ナナリって言うのは今大声を出してる男の子ね。身長は私よりちょっと低いかな。そのナナリが私のご主人様になるっていう話だったんだけど……


「父さんとしてもだな、獣人の飼育を通じてお前に命の大切さを教える時期かと思ってだな。」


「命の大切さ!?あんなことがあった以上、僕は同世代の中央値をはるかにこえて命の大切さを知ってるからね!?」


 ……話、通してなかったんかい……


 私は絶望した。ナナリが私のご主人様にならなければ、私は野良犬として扱われ、命がどうなるかわからないから。


「それだけ元気なら大丈夫だな。じゃあ後は若い二人で、ごゆっくり。」


「ちょ、まてよ!」


 ナナリは制止したけど、お父様は視界から消えた。え、気配とか匂いごと消えたんだけど?


「はあ、どうすんだよ、コレ……」


 私もどうしよう。護衛として雇われたという事は、内緒にするように言われてたんだけど……


「ご主人様、いかがいたしましょう?」


 ナナリは頭を抱えてたけど、ああもうと向き直った。


「トシ、同じくらいだろ。ナナリと呼べ。タメ口でいい。」


「あ、それ助かる。よろしくね、ナナリ。」


「切り替え、速すぎんだろ……」


「ねえナナリ。この街の事、案内して欲しいな。」


 ここは集合場所の中央市場の真ん中。凄い数の人がいるから、ひとりふたり大声を出しても誰も気にしないみたい。


「お前の方が命令すんのかよ……」


「お前じゃなくて、シズク。誇り高き"東の国のシバ族"の末裔でとっても強いんだから。そのうえ私は文字の読み書きもできる天才ワンちゃんなの。」


「聞いたことない品種だな……」


 ナナリは指を口元に当てて考え込む。私はその右手を掴んで引っ張り、私の頭の上に乗せた。


「ほら、このピンと立った耳。」


 そして腕を下ろして尻尾を触らせる。体が密着したからささやいた方がいいかな。


(この内側に巻いてる尻尾が目印。)


 あまり耳や尻尾を触られた経験がないから、自分でやらせておいて心臓の鼓動が跳ね上がる。


(はい、これで覚えた?)


「耳元でささやくのやめてよ!?」


 ナナリは私の手を振りほどいて距離を置いた。顔を真っ赤にしてるのがなんとも可愛らしい。


「僕は君を家族だとは認めない。」


 うーん。想定より素直な反応をするなあ、って思ったわけ。


「差し出がましいマネを……申し訳ありません。ご主人様。」


「だから!」


「街を案内してほしいな。ナナリに。」


「わかった……ついてこい、シズク。」


 ナナリが手を差し出したので、私は握り返した。


「最初にどこ案内してくれる?」


「保健所。確かこっちの方角だ。」


「え、ちょっと?」


 私は抵抗して……え、できない!抵抗できないんだけど!?そのまま市場を半分引きずられるような感じでグイグイと。


「ナナリ、冗談でしょ……?」


 そこは市場でも保健所でもどこでもない、人けの一切無い路地裏。私の背中の後ろの壁が冷たい息を吐いてる。


「非常に不本意だけど……」


 ナナリはこの壁より冷たい口調で言葉をつむぐ。


「痛くはしない。ましてや苦しくもないから。」


 ナナリの左手の指が私の首筋をなぞる。その冷たさにゾッとした。私が恐怖で声も出せないでいると、彼は右手をくるんと私の首の後ろまで回し……


「首輪。付けないといけないルールなんだ。」


 彼が持っていたのは革製の首輪だった。私は安堵で倒れるかと思った。彼はというと首元でカチャカチャと悪戦苦闘してる。


「ちょっと……苦しいかな。」


「あ、ごめん。僕もこういうの初めてで。」


 彼が首輪を緩めるとちょうどぴったりの装着感になった。でも私は……


「もうちょっとしめて。」


 そう言うと彼は微笑み、ほんのわずかに首輪を絞めた。


「鎖も必要なんだけど、今はこれで。」


「ん……ありがと。」


「じゃあ、この先を案内するよ。」


「どこに連れて行ってくれるの?」


「保健所。」


「やめて~ころされる~。」


 そのままナナリの住んでる寮?ってところまで案内された。

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