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第9話 ダンジョンを攻略した日


 ……結論から先に言おう。

 俺とニアは一週間かけて、不人気ダンジョンを完全攻略した。


 いや、一週間で完全攻略は早すぎるだろうと思われるかもしれないが、待って欲しい。

 これには理由があるんだ。


 というのも、ニアのパーフェクトダンスをアパートから動画サイトに投稿したのち、俺達はさっそく冒険者ギルドに登録してダンジョンに潜ることにしたんだ。

 もちろん最初の数日は様子を見ながらも、地道に攻略していたさ。


 ギルドの初心者講習会でも言われていたが、ダンジョンに潜る際は必ず余裕を持った物資を用意し挑むこと、とか言われていたからね。

 攻略の途中で物質が尽きて引き返す余力がなくなり、そのまま帰らぬ人になるパターンが初心者には多いらしいんだ。


 高い戦闘の実力を持った初心者冒険者ほど陥りやすい罠なんだとか。

 要するにまだいけるはもう危ない、ってことだな。


 なので長期攻略になることを見越して物資を買いあさり、領主のダンジョン討伐隊が来る前になんとか最深部まで到達しようとして急いでいた。


 とはいえ戦力で言えば最初のうちは俺など過剰火力だったし、ニアのちょうどいい訓練になるくらいの難易度。

 で、これなら最深部までいけそうだなと、数日間ダンジョンで野営して、ふと気づいたんだ。

 あれ、これ別に野営する必要なくね、と。


 なにせ俺の最大の異能は転移能力である。

 別にダンジョンで野営などせずとも、毎日ダンジョンの外に転移してギルドに素材を納品しつつ、翌日にまた転移で続きの階層から始めればいいじゃんと。


 そしてその目論見は大成功し、毎日柔らかい布団で英気を養っていた俺とニアの攻略スピードは目に見えてあがった。

 なんなら多くの魔物との実戦でニアがさらに才能を開花させ、隠密や体術の腕もぐんぐんあがり、ボス部屋をプリズムキュートのオモチャが放つ必殺技「ラブリー・シュート」で焼き払っていたくらいだ。


 この点に関しては素晴らしい成果だと思う。


 で、さらに数日後。

 俺は最終的にあることに気づいてしまった。

 あれ、これ別に一層一層攻略する必要なくね、と。


 だって考えてみて欲しい。

 俺は転移能力で狙った階層に直接転移できるんだ。

 なら当然、ダンジョンコアがある最下層まで直接転移すればいいではないだろうか。


 つまり、そういうことである。


「大冒険だったなアニキ!」

「あ、うん。ソウダネ」

「えへへへ、これでアニキもオレもダンジョンスレイヤーかぁ! くぅー! もしかしてオレって冒険者の才能あるのかな!?」

「アルヨ」

「そうかな!? やっぱそうなのかー!」


 アニキが言うなら間違いないぜと、満面の笑みでニアは笑う。

 この純粋無垢な信頼が重いが、実は途中でショートカットしてるから実力関係ないよとは言わない。


 本来のダンジョン攻略がどれだけ難しい偉業なのかを知らない無邪気なニアは、途中でショートカットしてしまったことを、アニキならそんなこともあるよね、くらいに受け止めてテンションを大爆発させているからだ。

 俺としては水を差すのもなんなので、実際ダンジョンでは魔物相手にちゃんと頑張っていたニアを褒めちぎっているが、ぶっちゃけこれが正攻法なわけがないし、それは明白。


 よって、諸々の理由からこのダンジョンワープ事件はとりあえず完全に秘匿していくことと相成ったのである。

 こんなことが可能だと周囲にバレたら面倒なことくらい、もう目に見えているからな。


 このことはニアにも口を酸っぱくして、何度も繰り返し伝えておいた。

 ニアとアニキの秘密だぞ~、みたいな感じで。

 子供相手にはこういうノリがよく効くのか、いまのところ秘密を漏らす気配はないな。

 良い傾向だ。


 ちなみに攻略した不人気ダンジョンはオーソドックスな洞窟型でしたね……。

 罠も魔物も階層もぶち抜いて直接最下層を襲撃されたダンジョンさんには、さすがに同情を禁じえないところだ。


「さて、問題はギルドにどう報告するかだなぁ。いっそのこと誰かに功績をなすりつけられれば良いが……。まあ、このまま黙っておくのが無難かな」

「え、なんで!? オレたちが本当のダンジョンスレイヤーなのに!? そんなのヤダ!」

「ヤダじゃない」

「やだやだやだ!」

「こら、俺の腕にぶらさがるな。我がまま言ってもダメなものはダメだ」


 ワープ事件は内緒の方向性でニアと合意したが、どうやら自分がダンジョンスレイヤーになったことは周囲に自慢したいようである。

 だがどこで情報が洩れるかもわからないので、俺としてはダンジョン攻略の功績は誰かになすりつけるか、もしくは自然消滅した感じで調整していきたいところだ。


 なにせこちらとしてはダンジョンコアさえあれば目的は達成なのである。


 ギルドの初心者講習会によると、こちらの人類はこのダンジョンコアを最高品質の巨大魔石として利用していて、オークションにかければ金貨数百枚はするだろう高額な物らしいのだが、まあもちろん売る気はない。


 それにもう一つの用途として、今はカバンの中にある直系三十センチくらいのボーリング玉みたいなダンジョンコアは、どうやらこれを再び地中に埋めることで、別のダンジョンとして自然復活するらしいのだ。


 しかし再ダンジョン発生の際には地中や大気中の魔力を大きく消費してしまい、周辺の土地は畑に作物が実らないほどの不毛な大地になる。

 数十年単位でしばらくすると土地の魔力も回復するらしいが、まあ自分の土地にわざわざそんなことするやつはいない。


 短期的に見ればダンジョンリポップは完全に災いでしかないし、敵国にダメージを与えようにも数十年で土地が回復して、ダンジョンという鉱山だけがメリットとして生まれることを考えれば、安易に投げつけられない微妙なシロモノだ。


 人類がリポップ目当てでダンジョンガチャをせず、魔石として利用しようとしているのも頷ける展開である。


 まあ地球の場合はもともと魔力など必要のない環境なので、俺が魔力粒子を生み出すパワースポットに投げつけてやれば、ダンジョンリポップなどなんの被害もなく実行可能だ。

 意図せず、こちらとは世界の成り立ちが違うが故の裏技になってしまった。


 で、話を戻すがニアの件についてだ。

 やろうと思えばここで無理やりしかりつけることもできるが、できればそれはしたくない。


 子供の頃に受けた大人からの圧力はトラウマになりやすいし、ニアからすれば自力で頑張った結果達成した成果なのだ。

 努力したのに理不尽に怒られる経験は、ニアの成功体験に著しい影を落とすことになるだろう。


 それはダメだなと、俺は思う訳である。

 というわけで、別の案を提案する。


「ふむ、そうだな。そこまで言うなら仕方がない」

「え!?」

「よし。ニアがすごく頑張ってダジョンスレイヤーになったことを、俺の国のみんなに教えてあげようじゃないか」

「お、お……、おお……!」

「二つ名はプリズムスレイヤー・ニアだ!」

「おおぉーーーーーーー!?」


 存分に言いふらすと良い。

 とある世界でダンジョン攻略を成し遂げた新人YomeTuber、ニアとしてね!

 ぶっちゃけ、ニアからすれば日本のみんなに自慢しようが、交易都市の冒険者ギルドで自慢しようが関係ないのだ。


 ようは周囲の大人から認めてもらい、頑張ったで賞をもらいたいという、承認欲求を満たせれば良い訳である。


 そろそろ地球でも動きが必要だなと思っていたところだ。

 世界をちょいと面白くしてくれと依頼されてから、だいたい一か月は立つ。


 神の爺さんも俺の動きを今か今かと、ワクワクして見ているだろうからな。

 ちょっとくらい地球に異能を見せつけても良い頃合いだと思うんだ。


 そのために地球に魔力を供給し、ダンジョンコアも手に入れた。

 最初期の事前準備は、それなりに整ったと言っていいだろう。



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