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第60話 女王に謁見した日


 ヴァリオ殿下に連れられて、俺とニア、そしてエリシーナさんは首都惑星の宮殿へとやってきた。

 特殊部隊さんは小型艇のホープ・セブンの正式な入港手続きで離れてしまっているが、ここまでくればそう御大層な人数で護衛する意味もない。


 俺もメタル・ホワイトドラゴンは首都惑星の宇宙港に預けてしまっているし、特殊部隊さんが離れたのはアレが盗まれないように監視も兼ねているらしいからね。

 といっても、もともと現状では俺しか動かせないし、ホビーアイテムが元になったオモチャなのだから失っても惜しくはないんだけども。


 ちなみにヴァリオ殿下は金ピカのウェポンアーマーに搭乗していたイメージ通りの金髪に碧眼だった。

 SF世界の人間の寿命が分からないのでなんとも言えないが、おそらく地球での外見年齢ならば二十代前半といったところだろう。

 エリシーナさんもちょうどそのくらいである。


 そうしてしばらく豪奢な浮遊ボートに乗りヴァリオ殿下についていくと、宮殿の中心部と思わしき荘厳な扉が備え付けられた謁見の間にたどり着いた。

 既にこちらの動向は連絡がいっていたようで、扉の前で警護の任務についていた護衛兵と護衛ロボが敬礼し通してくれる。


 こんなことを言うのは失礼かもしれないけど、超科学を得て発展したこの世界でも、護衛はロボットに任せきりにはならなんだなと少し感心。

 原始的な手段である人間の護衛と、自動ロボットの両立で警護態勢を整えているあたり、やはりAIの反乱などを恐れてのことなのだろうか。


 ウェポンアーマーは人間が搭乗することで最大パワーが発揮できるらしいのだが、この兵士はバトルスーツは着ていてもほぼ生身そのままだ。


 もしかしたら王族専用の護衛ってことで、人的コストを度外視してセキュリティに気を配っているのかもしれないなと、そんな取り留めもないことを考えるのであった。


「さて、ここが謁見の間だ。今回は君たちの行動があまりにも迅速だったため、周囲には邪魔な貴族がいない。存分に母上と語り合うと良い」

「感謝いたしますヴァリオ殿下。これで私に家の未来を託した父と家臣にも顔向けができます」


 ……ん?

 いま母上といったかな?


 ということはここ銀河連邦のトップは女王陛下ということになるのか。

 これだけ進んだ世界において、男女でなんらかの能力差が生まれるとは思わないが、地球や中世世界をメインの活動場としていた俺からするとかなり珍しい光景だ。


 そうして謁見の間まで歩みを進め、今回は特殊な事情により無礼講ということで俺とニアは頭を下げる以外の礼儀作法を免除されつつ。

 ようやくこの銀河連邦のトップである女王陛下との謁見と相成った。


「よい、面を上げよ。お前達のことは既に諜報部と我が息子のヴァリオから聞いている。よくぞ参ったなサンダリオン家の長女と、彼女らに力を貸す無双の英雄よ。我こそはこの銀河を統べる女王、ルゥルゥ・マグニ・アテルナである」


 そうして顔を上げると、そこには巨大な玉座にちょこんと座る、ニアと同じくらいの幼女がドヤ顔を浮かべこちらを見下ろしていた。

 えっ、予想していた女王様となんかイメージ違うんだけどと思ったのは俺だけではないはずだ。


 俺の横で佇んでいるニアをチラッと見てみると、同じように首を傾げて不思議そうな顔をしている。


 というか、これたぶんニアよりも小さいな。

 周囲の屈強な護衛や豪奢な椅子も相まって、余計にちんまりして見える。


 ただ態度だけはやたらとデカいので、そこだけはまさに女王といった風格を醸して出している。

 うーん、さすが宇宙は広い。

 これはもう人体の神秘とかじゃなくて、こういう風に遺伝子を改造した結果生まれた人間としか思えないが、まあ異世界なんだからそういうこともあるのだろう。


 何より、エリシーナさんは当然女王のことを知っているのか、特に動揺することもなく恭しく側近と思わしき男性にデータを渡してるしね。

 まだ名実ともに幼女のニアはともかく、ここで俺が動揺してしまうのはさすがにダメだろう。


 顔だけでもシャキっとしとこ。


「うむ、確かにデータを受け取った。解析結果はすぐに出るだろう。お前達も分かっているだろうが、今回の件は馬鹿な貴族たちの暴走だ。それを御しきれなかった我が王家にも責任はあるが、しかし王侯貴族と権力闘争は切っても切り離せぬ。家を守りたくば、今後も同じようなことは幾度もあると心得よ」


 この女王の発言にエリシーナさんは目を伏せ、悔し気な表情一つ見せずに静かに肯定した。

 だが確かに正しいのは、悔しいが女王の方だろう。


 足の引っ張り合いなどくらいで没落するようでは、どの世界でだって貴族などできるはずもない。

 これが一般の民間人ならともかく、彼らサンダリオン侯爵家は領地を持った局所的な王なのだ。


 例えば一国の王が他国からの圧力に負けて、だって嫌がらせされたから政策が失敗したんだもの、なんて子供みたいな言い訳が通用するはずもない。

 そう考えればルゥルゥ女王の言い分は正しく、そして何よりそれを承知の上で、結果的にデータを渡し切ったエリシーナさんも正しいということだ。

 少なくとも俺はそう考える。


 それからしばらくデータの解析を待っている間に、女王はエリシーナさんの要件は一旦済んだとばかりに、今度は俺に話題の矛先を向けてきた。

 その瞳には隠し切れない好奇心が宿っており、絵面だけを見れば幼女がおっさんにお年玉を強請るかのような様子に見えなくもない。


 さて、色々と聞かれることはあるだろうが、どうカバーストーリーを組んで受け答えしようかね。

 そろそろ地球での活動も恋しくなってきたし、銀河連邦に戦力を求められて釘付け、というのは避けたいところだが……。


 まあ、なるようになるだろう。



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