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第47話 いざ出陣した日


 さあ、いよいよやってまいりました、戦いの季節。

 世界各国から我こそはという英雄たちが、続々と転移魔法陣の前に集結しているのが、テレビ局のニュースを通じて報道されている。


 いやまあ、実際には戦いの季節なんて存在しないんだけどね。

 単純に全世界合同イベントであるレイドバトルが楽しみなだけである。


 ちなみに現在は三月の上旬。

 大学生なんかだと、もう春休みに入っている人も多いのではないかといった頃合い。


 それ以下だとまだ授業なんかもあるだろうが、今は世界の脅威が具現化してそれどころじゃないからね。

 日本ではもう全校臨時休校状態で、世界中から集った英雄や戦士たちに祈りを捧げ、成り行きを見守っているらしい。


 本当にこういう時の連帯感はさすが日本だと思う。

 なんならこの世界的な危機に際し、命を張ったマスコミがカメラを構えて実況中継しているくらいだ。


 ここぞとばかりに報道ネタを貪る彼らだが、俺としてはレイドバトルが全世界に中継されるのは、地球を面白くするという使命の上で凄く有益だ。

 なのでレイドバトルの会場となる場所でも、背後にいる彼らのことはキッチリと守ってやろうと思っている。


 なお、レイドバトルの開始時刻はミニコと相談した結果、もうそろそろ転移魔法陣を起動するかといった頃合い。

 あと数時間もしないうちにダンジョン前に現れた魔法陣が光輝き、転移起動状態になることだろう。


 ミニコはその辺を政府に伝え、そろそろレイドバトルを始められるよう各国の動向を調整している。


 それまでこちらは、なるべく自宅のアパートでゆっくりする予定だ。

 今もニアに強請ねだられたポテチを広げ、リビングで緊急特番ニュースを観戦している。


『日本の皆さん、いえ、地球の皆さん。聞こえますでしょうか! たった今、アメリカの英雄、無敵要塞ことブリジット・ターナーさん率いるチームが転移魔法陣の前に姿を現しました!!』

『国際ワールドテレビから中継! 現在インド、ブラジル、オーストラリア、イギリスの英雄たちも続々と集結しています!! 見てください、彼らこそ最強の英雄、世界の希望! 錚々(そうそう)たる面々です!』

『こちら大江戸テレビ局! ついに日本の希望、ブレイバーのお二人が自衛隊のヘリから降り立ちました! ……い、いえ!? 二人ではありません! なにやら小学生ほどの少女も同行している様子! これはまさか、妹さんでしょうか!?』


 ほえ~。

 どの番組もすごいことになってるな。


 三月に入り受験戦争シーズンも落ち着きを見せたと思ったら、今度はまさにレイドバトルシーズンの到来である。

 自分でイベントを企画しておいてなんだけど、日本どころか世界中の盛り上がり具合に俺はちょっとドン引きしている。


 レイドバトルを企画した当初は、まさかここまで乗り気になってくれるとは思わなかった。

 俺としてはちょっと強いボスでお祭りしようぜ、くらいのノリだったんだけどね。


 まあでも、これほどのイベントなら神の爺さんもニッコリだろう。

 毎回やるには大きすぎる祭りだが、時々やるくらいにはちょうどいいかもしれないな。


「あっ! あいつ知ってる! ムテキヨーサイ? っていう変な女!」

「ん? ニアはブリジットさんのことが気になるのか?」

「うん」


 そしてどうやらニアはブリジットちゃんのことをライバル視しているらしく、キリリッとした顔でテレビ画面を食い気味に見ている。

 どうやら最近やっとテレビが妖精のたまり場ではないことに気づいたらしく、テレビの中には妖精ももちろん居るが、その他にも遠くの地上を映し出せる仕組みもあると理解した様子。


 なおブリジットちゃんのことをなぜ気になるか聞いてみたところ、なにやらニアは無敵という言葉に反応を示しているらしい。


「ほんとーの無敵はアニキだから、あいつはきっと偽物だな。へへへ、この戦いでオレとアニキの力を見せてやるんだぜ!」

「そうかそうか。頑張れよニア。ずっと前からレイドバトル楽しみにしてたもんな~」


 そう言ってニアの頭をわしゃわしゃすると、頭をぐりぐりとこすりつけ甘えてくる。

 なお、今回は俺だけではなくニアもレイドバトルに出撃する予定だ。


 その上ミニコも連れていくので、一応世間を騒がせている黒幕が大集結することになる。

 もしこれが悪の組織とかだったら、主人公である英雄達に俺たちの情報が洩れて、袋叩きにあうこと間違いなしだ。


 実際はそんなことあり得ないけどね。


 なお、今回のレイドバトルの標的であるドラゴンについて。

 総合的な戦闘力は摩天楼の五十層以降に出現するドラゴン種の強エネミー、レッドドラゴン・オルタナティブを改造した特殊個体だ。


 さすがに五十層の魔物がそのまま出現すると、攻撃力も行動速度も高すぎて勝負にならない。

 なので現実改変で能力値をちょこっと配分調整し、総合力は変えずに生命力を極限まで伸ばした。


 つまり攻撃と素早さは五階層から十階層くらいの強さで、体力だけレイドボスに相応しい化け物具合といった調整が成されているわけだ。


「うん。改めて見ても良い配分調整だ。よくやったミニコ」

「これくらいの計算は当然です、マスター。私は銀河最高の最新型AIですから」


 電子妖精ボディの胸をそらし、えっへんと自信満々に答える。

 このやり取りからも分かる通り、巨大モンスターの能力配分を実行したのは俺だが、その配分内容をちょうどいい具合に計算し提案してきたのはミニコである。


 こいつが居なかったら今頃は能力配分調整がぐちゃぐちゃで、よくわからん変なモンスターが生まれていたに違いない。

 本当に助かる相棒である。


 そうこうしてしばらく。

 ニュースではブリジットさんや勇気くんがテレビのインタビューに登場しつつ。


 『見ているかしら日本の主人公ブレイバー。お互い信じるものは違うけれど、神から授かったその力を無暗に振るわないところは尊敬しているわ。今回はお互いに世界を守り抜くため、協力し合いましょう』

『神様という存在が本当にいるかは分かりませんが、俺たちもアメリカの主人公ヒーローと力を合わせて挑むつもりです。よろしくお願いします』


 なんてお互いに尊重し合うライバル関係のような、それこそ少年漫画的な応酬を見届け、ようやく転移魔法陣を起動する時間となった。


 余談だが、ブリジットちゃんが言っている「神の力を無暗に振るわない」というのは、日本以外だと特にダンジョンで鍛えた能力を暴力沙汰に利用したり、なんなら俺が直接異能付与した者の中にも、あまり良い噂を聞かない人間も存在しているが故の発言だ。


 まあその良い噂を聞かない云々は、事情を知っているこちら側としては完全に濡れ衣だと知っているので、ノータッチなんだけどもね。


「ということで、さて。そろそろレイドバトルが始まる頃合いだな。準備はできているかニア、ミニコ」

「プリズムステッキよーし! ミニコよーし! アニキよーし! 完璧だぜアニキ!」

「こちらも準備完了。いつでも出撃可能です、マスター」


 よーし、そうこなくては。

 それじゃいっちょ、こっそり参加しつつも周囲を守りつつ、最後にはここぞとばかりに大暴れしてやるとしますかね。


 たしかミニコが集めた情報によると、エルネシアさんからリリースされた情報により、敵は規格外天空巨竜なんて言われてるんだっけかな。

 ちなみに海外だと誰が最初に言い出したのかは知らないが、タイタニック・オーバースカイ・ドラゴンなんて言われているらしい。


 なんかちょっとかっこいいなと思った俺は、きっと童心を忘れないおっさんということなのだろう。

 そうに違いない。




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