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第40話 三つ目の異世界に転移した日


 冒険者組合でのプリズムキュート突発ライブから少しの時が経ち、季節は冬の一月初頭にて。

 学生たちは冬休みに入り、今日も今日とて世間はダンジョンの話題で大盛り上がりだ。


 最近は鳳勇気くん率いるブレイバーが、ここぞとばかりにダンジョン攻略を進めており、ついに自衛隊の攻略チームを到達階層で抜いたという報告がニュースで取り上げられていた。


 なんでも自衛隊は八階層から現れるメタリックスライムに銃器が効かず、ついに快進撃にストップがかかってしまったらしい。

 全く効かないというほどではないらしいのだが、それでも現れる魔物は一匹二匹ではない。


 運が悪ければ五匹くらいの群れでメタリックスライムは出現するため、どうしてもこの階層で足踏みしてしまうようだ。

 まあこのメタリックスライムは守備力は高くても攻撃力はそれほどでもなく、時々ファイアーボールの魔法も使うが、魔法攻撃力も同じく低いため大事にはならない。


 故に自衛隊側も遭遇して即時撤退するだけなら、死傷者を出さずに逃げ切ることができるようだった。


 で、ここからが勇気くんと天上さんの異能力者コンビの話になるのだが、天上さんの勇猛果敢ブレイヴ・ビートはリジェネ効果と全能力に対するバフ効果がある。

 そして勇気くんの絶対零度アブソリュート・ゼロは金属ボディを持つスライムに特攻で、過剰冷却で金属体を脆くしつつアイスハンマーの衝撃で粉々にできるらしいのだ。


 つまり何が言いたいかというと、勇気くんの攻撃はメタリックスライムに弱点を突けて、天上さんのバフはメタリックスライムの攻撃を寄せ付けない。

 ……と、つまりこういう結果になるのであった。


「それで、ついに十階層のフロアボスを打倒し、二つ目の転移魔法陣を解放ねえ。やるなぁ勇気くん」

「むっ。……アニキが言うなら認めてやらないこともない」


 ちなみに我らがプリズムスレイヤーは未だ五階層で白亜ちゃんのレベリング中だ。

 既にちらほらと民間人からも五階層に挑戦する冒険者が現れつつあるが、無理をして白亜ちゃんに負担がかかったら本末転倒だからね。


 冒険は何よりも楽しく、そして安全にするのがおっさん流である。

 まあ、そのことでニアは少し不機嫌になっていて、本当の実力を発揮すれば一気に追い抜けるのにと頬を膨らませている。


「あらあら。ニアはマスターが絶対に最強じゃなきゃ納得できないようですね。よしよし、そんなに頬を膨らませなくたってマスターが本気を出せばダンジョンなんて瞬殺です。そのことはもう知っているでしょう?」

「そうだぜ! アニキが本気を出せば無敵だし! ぜったい最強だし!」


 そうかな?

 そうかも。

 確かに全てのダンジョンを違法転移で瞬殺する能力は持ってるな。

 ミニコの言い分には少し語弊があるが、言っていることはそんなに間違っていない。


「それに手加減してあげてるのはハクゥアのためだからなぁ~。仲間の成長を待つのも第一の子分の務めってやつ? オレ一人だけじゃプリズムキュートは成り立たないんだぜ」

「そうです。その通りです。よくできました、……うふふ」


 うんうん、今日もニアは良い子でなにより。

 ミニコの道徳的教育が日々行き届いているらしく、まだ幼いながらも少しずつ他者を思いやる理由を積み重ねていっているようだ。


 このまますくすくと成長すれば、きっと強く正しく優しい美人さんになることだろう。

 将来どんなモテモテガールになるのか、今から楽しみである。

 ちなみにこれは、超人幼女としてアイドル顔負けの人気を誇っていることとは、また別のベクトルの人気である。


「それでマスター。冒険者組合から依頼された講師役の考察は終わったのですか?」

「あ~。それについては、そろそろ本格的な行動に移そうとしていたところだ。今日中には転移するぞ」

「なるほど。ついに転移先の条件が定まったのですね」

「そういうこと」


 でもって、少し前にお偉いさんから依頼された異能学校の指南役、もとい異世界からスカウトする講師役の人選について。

 当初の予定通り人選そのものは「実力はあるが日の目を見ずにくすぶっている」という前提は変わらない。

 基本的にはこの法則が覆ることはないだろう。


 ただ、それにしたってスカウトする講師の能力や世界設定には、様々な条件がある。


 純粋に魔法文明が進んだ異世界でスカウトするのか。

 それとも魔法と科学がほどよく融合した異世界か。

 もしくは魔法初心者の地球に倣って少し分かりやすく、ようやく魔法文明が生まれ始めた頃の異世界にするのか。


 もちろん、使っている技術体系にも枝分かれがある。

 一つは詠唱、一つは魔法陣、奇抜なところだと魔導書の読破による技術インストール?

 なんなら錬金術が発達した技術体系でもいいね。


 こんな感じで講師役の人選を考えた場合、本当に色々な条件や候補が上がってくるのである。

 ここで欲張って「じゃあ全部盛りで!」っていうのもありではあるが、その場合、選定先はかなり成熟した大魔法文明とも言える世界観になるだろう。


 果たして魔法初心者の地球に、そんな隔絶した文明の技術体系がすんなり浸透するだろうか?

 ……たぶん、無理だと思うんだよなあ。


 なにせ地球は科学と共に発展してきた世界だ。

 魔法や異能力に関しては赤ちゃんレベルもいいところなのである。


 という訳で俺がミニコとあーだ、こーだ、と言いながらしばらく相談した結果、ようやく定まったのがこちらの異世界。


 まだ魔法文明の初期段階であり、ほとんどの技術は生まれながら高い魔力を持つエルフが独占しつつも、人類にもようやく魔法学校という教育機関が生まれ始めた、そんな感じのアナザーワールド。


 そこで権威のある魔法学校の講師としての資格を持ちつつも、なんらかの理由で迫害され日の目を見ない魔法講師。

 そんな人物をターゲットに、俺は次の転移先を目標に定めたのであった。


 なお、扱われている技術体系は基本的に詠唱魔法。

 魔法陣は概念としては可能であると研究者に認められつつも、まだ机上の空論の域をでないみたいな感じ。


 錬金術も同様に初期段階くらいの文明発達度だが、少なくとも薬草からポーションくらいは自作できるくらいの進展があるってことでイメージしておいた。


「完璧ですマスター。このミッションの成功を、今回の相談役である私ことミニコが保証いたします!」

「へへへ、アニキはいつだって完璧だぜ?」

「ふっふっふ。どうもどうも~」


 いや~、はっはっは。

 ほんと、我ながら転移能力に慣れてきたって感じがするね。

 異世界一つ目や二つ目に比べて、条件の絞り込みがこなれてきた感がある。


 これが人間の成長というやつなのだろうか?

 がっはっは!


 そんな感じでニアとミニコに煽てられ調子に乗りつつ、俺は行動を開始するのであった。


 ああそれと、今回は冬休みで暇している白亜ちゃんが自宅でお留守番らしいので、ニアをおおとり家に預けていく予定だ。

 ご両親も元旦が済んだばかりで仕事はお休みなので、鳳大河さんと鳳由美子さんもご在宅らしい。


 居ないのはダンジョンで無双している勇気くんだけだ。


 また、ニアは俺と離れたくなさそうな雰囲気を出していたが、白亜ちゃんの家でプリズムキュートの歴代コンテンツがテレビで見れるぞーといったら、しぶしぶ納得したっぽい。


 本当にしぶしぶって感じだったけどね。

 確かにニアにとってはプリズムキュートは魂の作品だが、アニキについていけないというのはそれ以上に抵抗のあることのようだった。


 まあでも、せっかく友達と交流できる機会があるのに、俺にくっついてばかりじゃどこかが歪に育ってしまうだろう。

 こういうコミュニケーションは疎かにしてはいけないのだと、俺は個人的に考えている。


 という訳で異世界の選定が終わった俺はニアをさっそく鳳家に預け、そのまま講師役のスカウトへと直行するのであった。


「……イメージよし。じゃ、転移!」


 そして次の瞬間。

 何やら焦げついたような匂いに顔をしかめ目を開けると、煙を吐く小屋の中から、グルグルの厚底メガネをしたボロボロのエルフが這い出して来るのであった。


「あ、あぁぁぁ……。また実験失敗です……。これで学園から支給された研究費はゼロ……。おしまいです。もう終わり。路頭に迷うしかないのです~……」


 うん。

 なんか人選失敗したかもしれない。

 先ほどまで、ちょっと異世界転移に慣れてきたぜ、とか笑っているおっさんが居たようですが、……はて?



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