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第36話 いよいよ一般公開が近づいた日



 ミニコのリストアップした対象の前に現れ、現実改変を行い続けてしばらくが経過した。

 現在は地球各地で突然異能力に目覚めた者達が現れ、人によっては政府と渡りをつけたり、異能者協会に潜り込んだりと様々な活動に従事している。


 俺が人為的に作り出したダンジョン攻略のトップランカー候補は約十七名。

 その中でも一番最初に難病を治したブリジットちゃんなんかは、ダンジョンという悪意に立ち向かうべく神から力を授かったと喧伝し、ダンジョン撲滅を掲げた団体を立ち上げている。


 いわゆる活動家というやつだ。

 ブリジットちゃんはそのリーダーであり象徴。

 難病が急に癒えて空間魔法・偽を使いこなせるようになった彼女は、既に周囲の信者から現代に降り立った救世主であるかのように扱われている。


 アメリカ政府も自国に現れたスーパーヒーローを上手く活用し、国民に向けて彼女を主体としたダンジョン攻略チームを立ち上げると宣言した。


 本来ならこんな政治的な利用にはミニコがテコ入れをしつつ、なんだかんだ有耶無耶うやむやになるんだけどね。

 しかし今回に限っては本人もその家族もノリ気で、俺が擬態していた神というキャラクターを本気で信じて、ダンジョンを滅ぼせるならば政府と手を組むのは願ったりだと判断しているらしい。


 ちなみに、ミニコはこうなることを事前に予測していたし、俺にも事前に相談されている。

 ダンジョン攻略による人的被害を最小限に抑えるため、こうして旗印として運用する一人として最終許可を下したのは俺だ。


 まあ変な活動家や宗教団体と比べて、ブリジットちゃんの活動はレイドパーティーを組んでダンジョン攻略しよう、っていうだけだからね。

 誰の迷惑にもなっていない、コアなダンジョン攻略者というだけである。


 これで人的被害が減るならば、いいぞもっとやれと言いたいところだ。


 ちなみに、その件について今も日本のテレビ番組で取り上げられている。


『アメリカでは既に、ブリジット・ターナーさんの活動について国民から賛同者が募っているそうですね。日本のダンジョン一般公開と同時に、向こうでもブリジットさんを中心に添えた攻略レイドと呼ばれる部隊が突入するらしいです』

『いやあ、いよいよ新時代の到来ですか。ダンジョン攻略に関しては現在日本が最前線であるとはいえ、最早うかうかしていられませんね』


 日本は主練総理の打ち出す政策が成功を重ね続け、ものすごい勢いでダンジョン攻略の準備が整っている。

 しかしブリジットちゃんというスーパーヒーローを得たアメリカや、まだ話題にはなっていないが彼女と同等の戦力を得た各国が、ようやく態勢を立て直して日本に追いついてきたところだ。


 日本にはまだ鳳勇気くんや天上ひかりさんという切り札が残っているので、まだまだリードが崩れることはないんだけどね。

 とはいえ、これは関係者だけが知る極秘情報なので、ニュースにはなっていない。


 いやあ、勇気くんと天上さんが無双を始めたら、世間は驚くだろうなあ。

 今からテレビがどう取り上げていくのか楽しみである。


 なお、ミニコが運営する異能者協会などに属するサブボディたちは、基本的にダンジョン攻略にはノーターッチだ。

 ミニコと俺が自作自演でバンバン攻略していったら、興ざめもいいところだからね。


 あくまでもミニコが操る人形たちには、世界の安定のために裏方で働いてもらう事になるだろう。


『ちなみにこのブリジットさん、彼女は異能力を神から授かった奇跡であると発表していますが、そのあたりどう思われすか。ゲストの大山さん』

『ありえませんね。やはりこれは宇宙人による侵略ですよ。ダンジョンという要塞で地球侵略を目論むタイプAの宇宙人と、地球人を利用して目障りなダンジョンを潰す宇宙人タイプBが戦っているにすぎません』


 おお、この大山とかいう専門家みたことある。

 また出てきたのかこのおっちゃん。

 毎回テレビに出ては宇宙人侵略説を唱えているが、主張の整合性はともかく言っていることは面白いな。


 この自称ダンジョン専門家のおっちゃん、もしかしてこういう小説書いたら売れるんじゃないのか?

 懲りずに何度もテレビに出ているのがその証拠だ。

 世間からつまらん主張だと思われていたら、そもそも降板されているだろうからね。


「むっ。またこのおっちゃん妖精か~」

「なんだニア、おっちゃん妖精はあんまり好きじゃないのか?」


 ニアは堕ニートみたいなダメダメな妖精を可愛がる傾向があるから、このおっちゃん妖精もそれなりに気に入っていると思っていたが、どうなんだろう。

 そう疑問に思って聞いてみると、なんだか煮え切らない感じで首を傾げ、少し悩みつつも首を横に振った。


「う~ん……。びみょ~?」

「そうか。微妙か。まあそういうこともあるさ」

「へへへ、そういうことっ」


 うんうん、そういうこともある。

 と、そう思ったところで、ミニコがこっそりと骨伝導で正解を耳打ちしてきた。


「この大山というゲストが長々と持論を展開するため、緊急特番の際、番組の時間が延長されニアが一度プリズムキュートのオープニングを見逃しています。ちょっと好感度が低いのは、そのためだと思われますマスター」


 ……とのことだ。

 いや、そういう理由かよと思ったのは俺だけではないはず。

 しかしニアにとって、日曜朝のプリズムキュート視聴を妨害することは万死に値する。


 いつもはアニキである俺の言う事は必ず聞くのに、プリズムキュートを視聴している時だけは、いくら言っても食器の片づけすらおざなりだ。

 つまりニアにとって、そのくらいの価値を持つという訳である。


 むしろ宇宙人侵略論でオープニングを妨害しておきながら、ニアに微妙なおっちゃん妖精、くらいの認識で済ませられている大山氏が凄いな、これ。

 こうして再び出演しておいて、よくテレビの前のニアに威嚇されないものである。


 まあ、そんな世界の動きもありつつ。

 時々リオール交易都市に行きつつ、自立した先輩孤児の様子を見たり、魔王とやらの動向をチェックしたりして、バカンス期間はあっという間に過ぎていったのだった。


 なおこの間、少しだけ現実改変と亜空間航行技術の融合による転移装置を研究してみた。

 結果としてはミニコが科学的知見に基づいて魔法を勉強し、理論的には可能じゃね、というところまで漕ぎつけたんだよ。


 あとはその魔法理論に足りない動力的な部分を現実改変によって強引に補えば、転移魔法陣なるものが完成するらしい。

 という訳で、物は試しということで、その魔法陣の仕組みをダンジョンコアに転写して運用してみた。


 すると実験は見事に成功し、俺が手を加えたダンジョンは一度でも階層ボスを倒した者が、そこまでのフロアを自動でショートカットできるようになったのだった。

 つまり五階層のフロアボスを倒した人間は、ダンジョン入り口前に出現した転移魔法陣に乗っかると、六階層から始められるというわけだな。


 うーん、便利。

 残念なことに異空間を創造し干渉できるダンジョンの力と、亜空間に関するミニコの知識、そして俺の現実改変が融合しなければ転移は実現しないが、十分な成果は得られた。


 これならダンジョンに干渉さえすれば、専用フロアに狙って転移する魔法陣も設置できそうだな。

 いずれレイドバトル専用フロアとか作って、全世界交流の大規模レイドとかしてみたい。


 まあ、この辺はまたおいおいだな。

 とりあえず、この三か月の成果はこんなものである。


 そして季節は十二月の頭。

 自衛隊による何度目かの五階層チャレンジで突破成功報告があったり、急に現れた日本ダンジョンの転移魔法陣が話題になったりしつつも。


 ようやく冒険者組合なる組織主導のもと、ダンジョンの一般公開が始まったのであった。




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