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第17話 なぜか大魔導士マーリンだった日


 いやー、良いものを見せてもらった。

 ちょっと鳳勇気くんのリベンジ用に、二度目のスライムチャンレジをさせてあげようとしたら、珍しく女子生徒の連れがいたんだ。


 まさかと思い聞き耳を立ててみると、どうやら連れの天上ひかりさんとやらは勇気くんに気がある様子だった。

 俺は思ったね、リベンジするならここしかないと。


 そして放たれる氷結の剣舞にスライムの撃退。

 始まるボーイミーツガール!

 年甲斐もなく興奮してしまったよ。


 特に勇気くんが天上さんを守るために、戦うことを決意するシーン。

 確か「この怪異をぶち殺す……!」だったっけ?

 いや、ほんとアレは良いものであった。


 最後には天上さんという一般人を巻き込んでしまった謝罪と、今後どうすれば良いかという連絡があったりしたけど、まあそんなもの余談だ。

 天上さんの扱いについては、どうとでもなる。


 勇気くんを通じて裏の世界を知ってしまったことを理由に、こちら側に引き込んでもいい。

 もしくは裏の世界を知りつつも、一般人を貫きサポートするポジションでも美味しいだろう。

 今すぐに決めることはないので、この辺はゆっくりじっくり料理していくことにする。


 今はまだ勇気くんのダンジョン解放イベントが優先されるので、そちらに天上さんを同行させる形で様子を見ようと思う。

 なお、勇気くんに緊急事態として呼び出された師匠の長谷川としては、巻き込んでしまったものは仕方がない、今後はなるべく彼女のそばで君が守れ、みたいな返答をしておいた。


 ぜひとも俺が見ていないところで、今後もボーイミーツガールを続けていって欲しい。

 きっとこのラノベもかくやという状況に、神の爺さんもニッコリと微笑んでいるに違いない。

 少しでも面白いイベントを偶発させることができて、俺も爺さんも大満足だ。


 さて、そんなことがあった翌日。

 今日はいよいよ政府からの動きがあり、彼らと直接面会する日となっている。


 さすがに今日はニアを連れていけるほど緩い話し合いではないため、ニアにお小遣いを持たせて異世界にリリースしてきている。

 今回は情報収集はほどほどでいいから、前回助けた先輩孤児のみんなの様子を見てきなと言い含めてあるのだ。


 スパイ活動の初回ミッションから二、三週間は経ってるからな、せっかく助けた先輩孤児がちゃんと自立できるよう、多少の支援は必要だろう。

 なにせ先輩孤児の彼ら彼女らには、スラムで孤独に生きてきたニアを支えてもらっていた恩があるからね。

 ニアが助けたいと思うなら、存分に助けてやればいいのである。


「んじゃー、いくか」


 俺は戦闘用に現実改変したビジネススーツと、同じく変装用に現実改変したベネチアンマスクをつけて、メールで指定されたビルの最上階フロアに直接転移した。

 余談だが、このマスクをつけているとなぜか俺の顔や姿が特定できず、記録に残らない現実改変がなされている。


 黒髪だったのか、それとも金髪だったのかすら思い出せないだろう。

 俺を映した記録媒体には、ハムスターがひまわりのタネを奪い合う平和な動画が流れ、ほっこりするオマケ機能つきだ。

 素晴らしい完成度である。


「よ、ようこそおいで下さいました、大魔導士殿。いえ、マーリン殿とお呼びしたほうが宜しいですかな? 使用言語は日本語でも問題ないでしょうか?」

「ああ、どちらでも構わないよ。言語も大丈夫だ。日本のことは知り合いの天才異能者からレッスンを受けて、少し勉強したからね」


 予兆もなく唐突にフロアに出現した俺を確認した政府側のトップ、現総理大臣である主練おもねり尊拓そんたく首相が声をかけてくる。

 一瞬あまりの不審者具合にSPが一斉に動きかけたが、主練首相が腕をあげて止めていた。


 当たり前だが、めちゃくちゃ警戒されているようだ。

 だがそれ以上に俺のことを只者ではないと感じているようで、密室にいきなり瞬間移動するような芸当に対し、今回集まった周囲の研究者や重鎮は驚きを隠せていない。


 今も、どこから現れたのだとか、まさか瞬間移動……いやそんなバカなとか、こそこそと話し合っている。


 ちなみに今回のロールプレイは、太古の時代に活躍した大魔導を祖に持つ、裏の世界ではそれなりに有名な設定のエリート異能者だ。

 カバーストーリーとして、鳳勇気くんに語ったような太古から続く怪異と人類の歴史も伝えておいてある。


 しかもそれに加え裏設定として、鳳勇気くんの師匠をしている天才異能者、長谷川天気の親友であり、ライバル。

 大魔導士を祖に持つ優れた血統を持つ俺が、自分に匹敵するかそれ以上の実力を持つ長谷川を、目下最大のライバルとして認識しているという話も用意していた。


 この裏設定を使う機会があるかは分からないけどもね。

 ただせっかく別人として超越的な異能者を出すのだから、何事も準備は大切だ。


 とはいえ、なんでマーリン扱いなんだ?

 俺の架空の祖先がマーリンであったなどという話が、いったいどこから出てきたのか。


 あまりにも雑に鎌をかけられたので、ポーカーフェイスを維持するのが大変だったぞ。

 確かに大昔に活躍した大魔導士といったらマーリンだけどさ、別にピンポイントでその偉人だったとは限らないじゃん?

 ええ……、どうしようこれ。


 逸話的に、現実改変したエクスカリバーとか見せたほうがいいかな?

 というか、このまま流れに乗っちゃう?

 まあいいか、なるようになるだろう。


 大事なのは俺が長谷川天気とは別人であり、異能者界隈では彼より圧倒的に有名であるという認識そのものだ。


 この変装した俺に注目を集めることで、本体のスケープゴートになればなんでも良い。

 マーリンだろうがなんだろうが、好きにすると良いと思う。


 そんな感じでとりあえず納得した俺は、このフロアに集まった錚々たる面々に対し、前回から追加のお土産となる不思議アイテムを机の上に並べた。


 お土産の内容は前回とそう変わらないけどね。

 ただ一つだけ、今回は低級ポーションではなく異世界で売っていた中級品質のものを用意している。


 エウルバ商会に売り払った俺の現実改変ポーションが小さな部位欠損を治療できるとすれば、中級品質は骨折くらいなら一瞬で回復する。


 研究機関へ最初に提供した低級品質は切り傷が回復する程度だろうか。


 そのことを集まった研究者たちも理解したのだろう。

 見るからに前回とは違う豪華な装飾の中級ポーションを前に、息をのむ音が聞こえる。


「こ、これは……!」

「中級ポーションだね。前回提供したサンプルよりも高品質なものだよ」

「お、おおお……」


 駆け寄ってきた研究者グループがなんらかの調査機器をポーションに当て、よく分からない要素で感動している。


 ところどころで、科学的にありえないだとか、反応が前回とは違うとか、やはり未知の元素がないと成立しないぞとか聞こえてくるので、盛り上がってくれて何よりである。


 そしてそんな彼らを余所に、主練首相がそろそろ本題に入ろうと声をかけてきた。


「それで、大魔道士殿は我々に何をお望みでしょうか。……提供された物質はどれも、今後の人類史を大きく進歩させる奇跡といっても過言では無い」


 そりゃそうだ。

 低級品質ポーションですら医療革命が起きるだろうし、中級品質なんてどれだけの価値があるか分からない。

 それにこの品質では無理だが、ポーションは極めれば不老になれる可能性だってある。


 そのことを俺自身が証明している。


 魔石だって上手に扱えばエネルギー革命が起き、魔力を含む様々な魔物の素材は科学技術を大いに前進させるさろう。


 これを奇跡と言わずになんと言うのか。


「あまりにも有益です。日本で独占するにしても、同盟国に共有するにしても。その価値は計り知れない。だが、それ故に不可解だ」

「なるほど?」


 つまり首相はこう言いたいわけだ。

 これほど異質なものが、いままでどこに隠れていたのだと。


 それこそ、異能者という存在が急に現れたことも含め説明がつかない。

 まさに当然の疑問だな。


 だが、そのカバーストーリーは既に用意してある。

 いやむしろ、この反応を待っていたといっても過言では無いだろう。


 俺は内心でニヤリと笑いつつ、ここぞとばかりに政府をこちら側に引き込むため、新たな作り話を披露した。



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