#6 推薦
班本部の空気は、さっきまでの騒がしさが嘘のように落ち着いていた。
皆が席に着き、煌真を中央に座らせる。
葵生は軽く目を閉じて呼吸を整え、それから静かに口を開いた。
「……井原煌真。君がユスティティア・ルカヌスに正式に加入するには、本来ならば“選抜テスト”を受けなければならない」
その言葉に、煌真は神妙な面持ちで頷いた。
だが葵生は一呼吸置いて、続ける。
「けれど……近年は能力者の志願者が減少している。あの戦い以降、特にね。だから制度が一部変わった。――“特定の人物の推薦”があれば、テストを経ずとも加入が認められる」
煌真の目が大きく見開かれた。
「……推薦……?」
葵生は頷く。
「そう。実力を認められた隊員が推せば、その人物は試験免除で正式に迎え入れられる。もちろん無条件ではなく、本部の承認は必要だけど」
煌真は一瞬迷ったように俯き、それから思わず顔を赤くしながら口を開いた。
「あ、あの……その……推薦してくれる人って……だ、誰、なんですか……?」
その視線は、真っ直ぐに葵生に向けられていた。
――だが、受け止められた葵生は、ほんのわずかに顔を歪め、こめかみを押さえる。
「……また……頭が……」
小さく呻いたのち、彼女はゆっくりと指を伸ばし――横に座る陽を指差した。
「……推薦者は……高頭陽」
「……えっ……!?」
煌真は椅子から転げ落ちそうなほど仰け反った。
目を丸くし、声が裏返る。
「は、陽さん……!? ……そんなにすごい人……だったんですか!?」
陽はむすっとした顔のまま、腕を組んでそっぽを向いた。
「別に……大したことじゃない」
だが煌真は興奮気味に身を乗り出す。
「いや、すごいっすよ! あの水使いをぶち抜いたのも見たし、推薦枠まで持ってるなんて……! 本気で尊敬します!」
千紗は横で吹き出しそうになりながら肩を震わせ、夕音は苦笑を浮かべていた。
葵生だけは、もう限界と言わんばかりにこめかみを押さえたまま、深く息を吐いていた。
――こうして、井原煌真の正式加入が現実味を帯び始めた。




