表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

#5 加入

陽は、一歩踏み込むと同時に、手に宿した炎を強く燃やした。

轟、と熱が膨れ上がり、路地の空気が一気に揺らぐ。


「ハッ、来いよ! 水の防御に勝てるもんか!」


水の能力者が嘲笑しながら両腕を広げる。

次の瞬間、透明な壁のように濃密な水が前方に張り巡らされた。

陽の炎を受け止め、蒸気を立てながらも揺るがない。


だが、陽はまるで怯む気配もなく、淡々と口を開いた。


「……三大能力、ってあるでしょ?」


陽はそのまま、真っ直ぐ炎を押し出しながら言葉を続ける。

「雷は“突”。

 水は“柔”。

 炎は“打”。」


ゴウッ、と炎が揺らぎ、さらに膨張する。


「相性だけ見れば……雷の煌真は、まあこの有様」


ちらりと、倒れ込む煌真に目をやる。


「炎のあたしは、水に弱い。――そう思うでしょ」


その瞬間、水の壁が一気に膨張し、炎を押し返そうとする。

男は勝ち誇ったように笑った。


「そうだろ! 俺の水には勝てねぇ!」


だが――次の瞬間。


「……現実は、そんな単純じゃないのよ」


陽の拳が、灼熱の炎を纏ったまま水の壁へ突き出された。

バシュッ、と激しい蒸気が立ち昇る。

本来なら炎は水にかき消されるはず――だが、陽の炎は一切弱まらない。


「な、なんでだ……!?」


男の顔が青ざめた。


次の瞬間、轟音とともに壁を突き破り――炎を纏った拳が男の頬を直撃した。


「ぐはっ!」


鈍い音とともに男の身体が宙を舞い、背中から地面に叩きつけられる。


路地に、重苦しい沈黙が落ちた。


陽は、燃え残る炎をふっと消し、冷たい視線で立ち尽くす男たちを一瞥した。


「――“相性”だけで勝てるなら、誰も苦労しない」


蒸気がまだ漂う中、その言葉はやけに重く響いた。


男たちは陽の炎を目の当たりにし、怯えたように後ずさった。

その中の一人が、捨て台詞を吐き捨てる。


「……すぐに、俺たちの復讐が始まる……覚えておけよ」


それだけ残すと、三人は蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

湿った路地に蒸気だけが残り、静けさが戻る。


煌真は地面に手をつき、荒い息を吐きながら陽を見上げた。

目を丸くし、口元が笑みに変わっていく。


「……すげぇ。あんな水をぶち破るなんて……!」


その声には、尊敬というより純粋な興奮が滲んでいた。


陽は肩をすくめ、つっけんどんに答える。


「あたしにとっちゃ普通。……ほら、立てる?」


煌真はよろよろと立ち上がり、素直に頷いた。


その背を軽く押しながら、陽は言った。


「じゃあ――あたしの班に連れてく」




ユスティティア・ルカヌス第20班本部。


陽に案内されて入ってきた煌真は、やや緊張気味に周囲を見渡した。

部屋の中央には、明石千紗と岩月夕音が腰掛けている。


「……あ、あの……井原煌真です。16歳です」


軽く頭を下げると、千紗が目を細めてじろりと見た。

「へぇ、年下じゃん。ここに入る気なの?」


「……はい。そのつもりです」


真剣な答えに、千紗はわずかに口角を上げた。


夕音は対照的に、柔らかい笑みを浮かべながら手をひらひらさせる。


「よろしくね、煌真くん。私たちの班……って言っても、まだちょっと事情があるけど」


煌真は二人の空気に少し安堵し、小さく笑った。


――が、その瞬間。


「……新入り?」


背後から低い声がした。

振り返ると、葵生が静かに立っていた。


一歩踏み出し、陽に視線を投げかけてから、淡々と口を開く。


「君が連れてきたのか?」


「そう」


陽が短く返す。


煌真は慌てて頭を下げ――そのまま、変な声を漏らした。


「……っは、はぅっ……!?」


「……?」


千紗と夕音の目が同時に細くなる。


沈黙が走る。


煌真は真っ赤になり、必死に言葉を取り繕おうとするが……頭の中では、

(やばい……タイプすぎる……! 真面目系で冷たそう感じなのに絶対優しい……これ……これぞ理想……!)

と暴走した妄想が止まらない。


その様子を真正面から受けて、葵生は額に手を当て、わずかに顔を歪めた。


「……っ……ごめん、少し具合が……」


そう言い残し、背を向けて早足に部屋を後にする。


残された千紗と夕音、そして陽。


「……あんた、やらかしたわね」


千紗が呆れたように言い、夕音は吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。


煌真は青ざめて肩を落とし、心の中で叫んだ。


(ち、違うんだ……! 本当に違うんだ……! でも……タイプすぎるんだぁぁぁ……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ