表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

#26 覚悟の単独任務

翌日。


簡易会議室に集まった煌真たちの前で、葵生はタブレットを操作しながら報告を始めた。

画面には複数の地図と、黒塗りされた施設の位置が点々と表示されている。


「調査は終わったよ。あの闇闘技場の件、実はユスティティア・ルカヌスがかなり前から追ってる事案だった」


煌真は意外そうに目を見開く。


「もう、そんな前から……?」


「最近、各地で似た構造の闇闘技場が確認されてる。そこで行われてるのは非合法の能力者同士の戦闘だけじゃない。

 賭博、闇取引、違法薬物……全部セットだ」


葵生の声は淡々としていたが、その内容は重かった。


「問題は警戒心。向こうは相当用心深い。ユスティティア・ルカヌスの主要メンバーの顔と能力データは、ほぼ全部割れてる」


画面が切り替わり、空の建物の内部写真が映る。


「私たち(ユスティティアルカヌス)が動くと、いつもこう。踏み込んだ時には、もぬけの殻」


椎尾が舌打ちをする。

「完全に先回りされてやがるな……」


沈黙が落ちた、その時。


「……だったら」


煌真が、少し考え込むようにしてから口を開いた。


「俺が行くのはどうですか」


全員の視線が、一斉に煌真に向いた。


「俺、まだ新人です。

 正式に活動し始めてからも日が浅いし、表に出たことも少ない。

 顔も能力も、まだ向こうに知られてないはずです」


葵生は一瞬、目を細める。


「……単独潜入、ってこと?」


「はい。闇闘技場に“客”か“参加者”として入り込めれば、最低でも場所の特定と運営の手がかりは掴めると思います」


椎尾は腕を組み、難しい顔をした。

「危険すぎる。そういうとこはただの遊び場じゃねぇ。能力者を消耗品みたいに扱う連中だぞ」


「分かってます」


煌真は即答した。


その目には、迷いがなかった。


葵生はしばらく黙り込み、タブレットの画面を消した。


「……正直に言うね」


その声は、先ほどまでよりも低かった。


「この件、上には上げられない」


煌真は一瞬、言葉の意味を測りかねた。


「ユスティティア・ルカヌスとして正式に動けば、また同じ結果になる。顔が割れてる以上、向こうは必ず逃げる」


椎尾が眉をひそめる。


「つまり……」


「第20班だけでやる。極秘で」


空気が張り詰める。


「記録にも残らない。応援も、公式なバックアップもなし。何かあっても、組織は“関与していない”ことになる」


煌真は息を呑んだ。


「それでも――行く価値はある?」


葵生の問いに、煌真は迷わなかった。


「あります」


椎尾が口を開こうとするが、葵生が手で制した。


「危険なのは分かってる。でも、今の状況で中に入れるのは煌真しかいない」


沈黙。


煌真は拳を握りしめ、ゆっくりと顔を上げた。


「……俺が行きます」


その声は、震えていなかった。


「孤児院を燃やした連中が、あの闇闘技場と繋がってる可能性があるなら、俺が確かめます」


葵生は、ほんの一瞬だけ目を伏せた後、静かに頷く。


「分かった。これは第20班極秘の潜入調査。知っているのは、ここにいる人間だけ」


そう告げられた瞬間、

煌真は理解した。


これは命令ではない。

逃げ場も、保険もない――自分で選んだ道だということを。


そして彼は、

誰にも知られぬまま、闇闘技場へ踏み込む覚悟を決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ