表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/26

#20 炎が奪ったもの

千紗は燃え上がる炎を見上げていた。

夜の闇を朱く染めるその光は、遠くからでもわかるほど激しかった。

駆けつけた頃には、すでに消防隊が消火活動を始めていた。


焦げた匂い。

耳に残るサイレンの音。

そして──その人影を見つける。


「……煌真くん?」


煙の向こう、立ち尽くしていたのは煌真だった。

肩を落とし、ただ燃える建物を見つめている。


その隣には、普段とは違う私服姿の椎尾がいた。


「どうしてここに……」


「自宅が近いんだ。騒ぎで飛び出してきたら……これだ」


椎尾の声は沈んでいた。


煌真はゆっくりと口を開く。


「……この建物、俺がいた孤児院なんだ」


千紗は息を呑む。

その目には、ただの火災ではない、もっと深い痛みが宿っていた。


「今のところ、生存者は……誰も見つかっていないらしいです」


その一言に、空気が凍りついた。


椎尾は拳を握りしめ、怒りを滲ませる。


「……誰がやったんだ。放火か?」


「...おそらく」


煌真は低く答える。


「でも……犯人はもうどこかに行ったはずです。火をつけたら満足して逃げる。それが普通です。 」


その時、背後から小さく笑う声が聞こえた。


「……普通なら、ね」


振り返ると、そこには宮河がいた。

炎の赤に照らされて瞳がきらめく。


「放火犯ってね、意外と現場を“見たがる”もの。自分の“作品”を見届けたいタイプが多いの」


「……つまり、まだこの中にいるかもしれないってことか?」


椎尾が鋭い目を向ける。


宮河は頷いた。


「ええ。観客のふりをしてね」


夜風が吹く。

火の粉が舞う中、千紗は本能的に周囲を見回した。

——確かに、そこにいた人たちの中に、妙に落ち着いた視線をした人物がいた気がした。


胸の鼓動が速くなる。

事件の匂いが動き出そうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ