#17 班長の証明
仮想空間の照明が落ち、炎も瓦礫も跡形もなく消えていく。
床に仰向けに倒れていた椎尾は、焦げ跡だらけの上着を乱暴に払いつつ、上体を起こした。
「……クソ……あそこで仕掛けてくるとは思わなかった……」
悔しさを隠そうともせず舌打ちする。だがすぐに、ぐしゃりと前髪をかきあげ、肩で笑った。
「にしても――」
ゆっくりと顔を上げ、まだ息を整えている煌真を見据える。
「お前……目ぇ潰されてんのに、よく俺の位置特定したな。正直、ゾッとしたわ」
煌真は肩で息をしながらも、にやりと笑う。
「……耳が残ってたので。聞こえてんのに負けるわけないですよ」
椎尾は鼻で笑い、立ち上がると歩み寄った。距離一メートルほどで足を止め、真正面から煌真を見下ろす。
「認めてやるよ。――テメェが班長っての、文句はねぇ」
その言葉に、観戦ルームで見ていた千紗と夕音がほっと息を漏らす。
だが次の瞬間、椎尾は視線を動かし、透明なガラス越しにこちらを見ていた葵生を指差した。
「だったらよぉ……副班長って枠、空いてんだろ?」
突然の申し出に、観戦ルームがざわっと揺れる。
「――え?」
千紗が間の抜けた声を漏らし、夕音は目を瞬かせた。
葵生は無表情のままモニター越しに椎尾を見る。
数秒だけ沈黙が落ち――やがて、静かに口を開いた。
「……別に。構いません」
「マジで...?即OKかよ!」
千紗がツッコむが、葵生は淡々と続ける。
「陽が班長をやらない以上、煌真が一番適任。それに……あなたの能力は、チームにとって脅威でもあり武器にもなる。副班長を名乗るなら、責任だけは取ってもらいます」
椎尾は薄く笑い、親指を立てる。
「上等だ。喧嘩の売り方も買い方も心得てる」
煌真は黙ってそれを見ていたが、やがてぽつりと呟く。
「……変な班になってきたな……俺の初日から」
陽は苦笑しながら肩を叩いた。
「“まとも”だった時期なんて一日もないわよ、うちの班は」




