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#16 闇で響いた雷

視界が――ぷつりと途切れた。


「……っ!?」


一瞬、何が起きたのか理解できなかった。だが次第に、漆黒が全てを塗り潰していく。


(視覚が……消えた……!)


嗅覚、触覚、そして視覚。残されたのは聴覚と味覚だけ。


空気の流れも温度も感じられず、目を開けているのかすら分からない。


「おいおい……立ってるのが不思議なレベルじゃねぇか」


椎尾の声だけが、くっきりと耳に届いた。


(これで三つ……次で終わる。聴覚まで消えたら、もう終わり……)


椎尾の足音。金属の擦れる音。――ナイフを抜いた気配。


(来る……!)


恐怖が脳を侵食する。それでも、膝は折れなかった。


(まだ……耳がある)


椎尾の嘲笑すら、今だけは道標だった。


(風。呼吸。衣擦れ。足音。熱じゃなく、音で――読む)


深く、静かに息を吸った。


――ザッ。


足が地面を蹴る音。左前方、距離2メートル弱。


「終わりだ、“班長”」


その声が、真正面に近づく。椎尾が踏み込もうとした、瞬間――


「――“雷閃”ッ!!」


轟音が夜空を裂いた。


視界は闇だが、煌真の掌から放たれた電撃は精密に椎尾を捉える。


ドッッッ!!!


悲鳴すら出ない雷鳴が全身を貫き、椎尾の身体は地面を転がりながら壁に叩きつけられた。


焼け焦げる臭いも感じられない。ただ音だけが、勝利を証明する。


(……やった、のか……)


足元がふらつく。だが――膝はつかなかった。


やがて、椎尾の身体が完全に沈黙する。


試合終了のブザーが鳴り響いた。


(……やった、のか……)

 

勝ったはずなのに、闇はまだ晴れない。


観戦ルーム


モニターが一瞬ホワイトアウトしたあと、結果表示が点灯する。


《Winner:井原 煌真》


「……マジ?」


千紗がぽかんと呟く。


夕音は目を丸くし、息を飲んだまま固まっている。


陽は眉を上げ、驚きと安堵が入り混じった表情で笑った。


ただ一人、葵生だけがそっと目を閉じ、静かに言葉を漏らした。


「――五感を削られて、なお一撃で仕留める判断……彼、本当に“素質がある”かもしれない」

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