セミテリオの仲間たち 番外編部3 望の生物体験、日記より
望八歳(人類編)
ずかんを見ていました。人間は昔、さると同じなかまだったという図がありました。お母さんにききました。「ねぇ、どうやってさると人間はちがう動物になったの?」すると、「野毛山のおじいちゃんに聞いたら。そういうのお母さんよりくわしいから」。私が「おじいちゃんは昔、サルだったの?」ときいたら、お母さんは大わらいしていました。
望九才(カブト虫編)
ホームセンターで買い物をしたらかぶと虫の幼虫をくれました。お母さんにたのんで、いっしょに何度も買い物に行き、カブトムシの幼虫をたくさんもらいました。大きな虫かごを買い、中にうつして、きりふききで水をやったりしました。さなぎがかえって、めすが4ひき、おすが2ひきでした。きゅうりやなすやゼリーを入れました。食事中のメスをオスがむりやりおさえて上に乗っていました。かわいそうだから、オスとメスを別の虫かごに入れました。たまごは一つもできませんでした。
望九才(うるさいーんだよぉ編)
お庭で虫がたくさんないています。コオロギやクツワムシぐらいは、なきかたが図かんにのっているし、お父さんもお母さんも教えてくれるからわかります。でも、図かんや虫の声のCDでも、わからない虫がないています。他の虫より大きな声で、うるさいくらいです。だからかもしれないけれど、そのなき声が♪うるさいーんだよぉ♪って聞こえちゃいます。ドファソシーシーシ、最後のシシシは最初のドより低い音です。だれかこの虫の名前知りませんか? 見つければ形で見て、図かんでしらべられると思って、お庭を探しました。でも、暗いし、近づけばなきやむから、その辺にいるんだとは思っても、かい中電とうでてらしても見つけられません。ド♯(う)ファ(る)ソ♯(さ)シー(いーん)シ(だ)シ(よ)ってなく秋の虫です。「すず虫だったらいいのにね」、とお父さんがいいました。でも、すず虫ならよいと思われて、コオロギだったらふつうの虫で、この名前も形もわからない虫が、私に「うるさい虫」とよばれているなんて、ちょっとかわいそうかも。
望十歳(ショウリョウバッタ編)
この前、遠足に行きました。畑がたくさんあって、川原にはススキもあって、秋色でした。ひっつき虫ではない、本当の虫もはんでいろいろつかまえました。私はショウリョウバッタを持ち帰りました。ショウコちゃんと名前を付けました。数日後に死にました。今日、先生が、学校に「この前の遠足でつかまえたイナゴをつくだににしたの。買うと高いのよ。一つずつどうぞ」とみんなに配ってくれました。私は、どうしても食べられませんでした。
望十一歳(イモリ編)
先週、県の水族館のサマースクールでイモリの飼い方を教わって、水族館の外で売っていたので、イモリを3匹買ってきました。次の日、水そうを買って来て、空気をぶくぶく入れるポンプを買ってきて、トリモツをやって、暑いから家の中の北に置いて、時々氷を入れて温度調節をしています。おととい見たら、たまちゃんだけになっていました。水族館では、同じ両生類のサンショウウオが共食いしていたので、イモリも共食いするのかもしれないと思っていました。今朝、二階のミニキッチンのはい水口のそうじをしていたお母さんが悲鳴をあげました。はい水口のあみの上でいもりが動いていました。にゅう君でした。すぐに水槽に戻しました。逃げ出したんだとわかって、もう1匹も生きているかもしれないと思って、方々床をさがしました。私の部屋の角でひからびていました。まるちゃんごめんなさい。逃げられないようにします。にゅう君とたまちゃん、もう逃げ出さないでね。
望十三歳(トカゲ編)
校庭に落ちた桜の花びらの掃除をしていたら、桜の木の下の日陰でトカゲを見つけた。薄い茶色の普通のトカゲ。かわいいからジャージのポケットに入れておき、校門を出た所で、シオリに見せたら、変な趣味と言われた。でも可愛いでしょと言っていたら、後ろから来た知らない先輩が、「おっ、カナヘビ、こうやると寝るんだ」と言って、私の手からトカゲをつまみ、手の平の上でトカゲ?カナヘビ?を仰向けにして喉の辺りをさすっていたら、眠ってしまった。不思議。「これ、くれる?」と言われて、なんとなく断りつらくて、あげちゃって。家に帰って図鑑で調べたら、カナヘビとトカゲは似ていて、でも違っていて、今は目の前にいないから、あれがトカゲだったのかカナヘビだったのか判らなくて、ちょっと残念。あの先ぱい、名札の色で2年生だってわかっているけれど、また会えるかなぁ。なんか、あげちゃったのがちょっと惜しい。でも、家に持ち帰って来ていたら、また愛ちゃんがなんて言うか知れていたしなぁ。
望十四歳(コウモリ編)
この前、帰り道、電線の真下に黒い小さなゴミ袋の切れ端みたいなのが落ちていて、風で動いているんだと思ったら、コウモリ。うわっ、珍しい。飛んでいるのは夕方に見ることあるけれど。そっとつまみあげたら少し動いたから、両手の中にかかえるようにして持ち帰り、戸棚の中に割ってない割り箸を本の間にわたして、つかまらせたら、さすがコウモリ! 逆さにぶらさがった。家にある図鑑にはコウモリはのっていなかったから、学校の図書館の図鑑で調べてアブラコウモリらしいと判ったけれど、人間に病気がうつるから素手で触ってはいけないと書いてあった。もう遅い。どうしよう。というよりも、もっと困ったのは、食べ物。小さい虫、どうやったらつかまえられるか。どうしようどうしよう、落ちていたくらいだから、自分では生きられないかもしれないし、なんて思って二日目、戸棚をそっと開けたら、割り箸から落ちていた。ごめんなさい。あなたの生命、救えませんでした。まだ名前も付けていなかったし。
望十五歳(ニホンザル編)頭に乗られる
野毛山の祖父母が愛知県に旅行に行くのに付いていった。受験勉強の気晴らしごほうび。明治村と犬山モンキーセンターにも行った。犬山モンキーセンターに行く途中で、昔、私がお爺ちゃんは猿だったかもしれないと思ったことを話したかったけれど、お爺ちゃんが怒ると思ったからやめた。で、モンキーセンターの中に、ニホンザルの檻に入れるようになっていて、入ったら、おじいちゃんとおばあちゃんの上には乗ってこないのに、私だけ、腕から肩にのぼられ、頭にまでのぼられてしまった。おばあちゃんは、「望は仲間だと思われているのね」と言われて、うん、私も猿から進化したのかもしれない、なんて思えたけれど、おじいちゃんには、「望はサルに馬鹿にされているんだ」と言われた。ニホンザルは私の上で私の髪の毛をひっぱっていた。ちょっと痛かった。
望十六歳(インド象編)前、別の動物園で水をかけられる人を見た、だからあまり近寄らなかったら、井の頭動物園のはな子は去っていった。ごめんなさい。こちらの警戒心を読んだのね。初対面でも、(あれっ、もしかして小さい時にも会ってるかも?)心読めるんだ。やっぱり動物って心通じると思う。これ人に言うと馬鹿にされること多いけれど。花子は上野動物園にいた花子(戦前餓死させられた!)から名前を貰ったとか。
望十七歳(ゴキブリ編 目が合うから)
セミが苦手、今も。アリも苦手、それほどでもないけれど。どうも小さいのはっていうか、昆虫はだめだわ。寿命短いし。魚類もだめだわ。抱けないし。水温や水質管理もたいへんだし。やっぱり生物一般より獣医がいいなぁ。虫って抱けないし。あったかくないし。でも虫とも心を読み合えるのかも? で、ゴキブリ、何故かいる気配を感じる。振り向くと目が合う。あっちもこっちも固まってしまう。で、殺虫剤を持って追いかける。殺すのを一瞬ためらっている間に逃げられる。あっちの方が察知能力が高い。けど、なぜ私はゴキブリが苦手なんだろう。すばやいから、黒いから、飛ぶから、ぬめっと光っているから、細菌を媒介するから、人類滅亡後の地球の主役になると言われているから、愛ちゃんが悲鳴を上げるから。全部だ。
望十八歳 (ハト編)
ミポがメールして来た。ミポの彼氏翼君の住んでいるマンションベランダにカラス除けに張ってあるネットにハトがからまっていて、助けてほしいって。冗談じゃないわよ。なんで翼君が自分でしないのよ。翼君は生き物苦手なんだと。望なら動物好きでしょ。ハトを抱けるなんてチャンス無いよぉ、だって。鳥も獣医が扱う対象なんじゃないって。そりゃなりたいけれど、まだ合格もしてないのに。はぁ。で、しかたないから、花粉症用のゴーグルとマスクをして、ミポといっしょに行った。たしかにベランダのネットにハトがひっかかっていた。たしかに可哀想。素手だと何かズーノシスがあるかもしれないし、翼君家のゴム手袋を借りる。つぶらな瞳に生気がない感じ。妙に赤っぽい。けど、助けるって言ったって、6階だよぉ。しかもこれ、ベランダじゃないじゃない。花台っていうの? 狭くて。ミポと翼君は部屋の中から見ているだけ。ネットの外では少し離れた所から仲間のハトも3羽ホバリングして見ている。心配している? ネットごと手をまわさないとどうにもできないし。バテテいるみたいだから、スーパーの発泡スチロールのトレーに水を入れて、くちばしの所に持って行ったら、水を飲んだ。まだハト抱いたことないし、鳥は恐竜の子孫だし、ちょっと怖い。動物とは心が通じるはず、と信じて、私はあなたを助けるために来たんだから、お願い暴れないで、おとなしくしていて、と強く何度も念じて、心を送って、ネットごとハトをつかんで、脚や羽の間にひっかかったネットをそっと外して、そっと手をゆるめたらハトは飛んでいった。すぐ、お礼を言うように戻ってきた。で、気がゆるんだ瞬間、下を見たら、怖かった。6階は高い。けど、ハトは怖くなかった。獣医の対象には鳥もいるんだっけ。忘れていた。鳥ももっと身近に知らなきゃね。うん、やっぱり健さんにおねだりして、あのルリコンゴウインコ買ってもらおう。どっちにしよう、青っぽいのか赤っぽいのか、両方はだめかなぁ。一匹じゃ寂しいでしょ。でもつがいにするとたまごうんでこども増えちゃうし。で、野生のハト一羽救ったくらいじゃ、私が今まで死なせてしまった動物のこと赦してもらうのは甘いかなぁ。大学、合格してますように。獣医になってもっと命を救わなきゃ。
望十九歳(エサ代、予防接種代編)
整理してみる。今私が飼っているのは、コンゴウインコ2と、ジャンガリアン1とゴールデン2と、イグアナ1、拾って来たイシガメ1だけ、かなぁ。マル2、タマ、ニューは、飼いたいと言ったのは私だけど、買ったのは愛ちゃんだし、あっ、でも私が飼ってるんだ。あれ、ってことは、イグちゃんもロロとララもお金出したの私じゃないし。私がエサ代の責任を負うのはどこまでか。助かったぁ、よかったぁ。予防接種必要な犬猫は私のペットじゃないもんね。予防接種費用は、私が資格とれば、手間賃分は浮くんだ。でもまだ先が長いし、でも祖父母と両親のだから。けどなぁ、バイトできる日が少ないし、これからもっと少なくなるし、バイト代が全部餌代に消えるんじゃなぁ。どうしよう。うん、家でバイトすればいいんだ。みなさまの犬猫含めて全部世話するから、ペットのみなさんの餌代よろしくってみんなにねだろう。決めた。へへへ、一人っ子ってこういう時得。買ったとか飼ってるとかペットとか、なんか引っかかる言葉。みんなお友達。気楽に一緒にいた日々が懐かしい、なんて。今後、餌代を考えたら、ミニブタは無理だなぁ。スペースもないし、藁代もかかるし。ウサギやリス、フェレットぐらいならいいかなぁ。自分で突っ込む。私は動物園を作りたいのか?
第7話、セミテリオから犬にも乗ってに登場する望。
番外編部1,2の続きでした。