セミテリオの仲間たち 番外編部1 望の生物体験、愛の育児日記より
望一歳(アブラゼミ編)
公園で日陰を求めて大きな木の下に行った。しばらくして帰ろうと、私は空のバギーを押して、先に木陰から出た。私に呼ばれた望は、周囲を見回して、半べそ、きょろきょろ、ワァッと大泣き。樹上からはアブラゼミの合唱。地上にも起き上がれない無数のセミがクルクル回りながら鳴き続け、私が迎えに行くまで、望は木の下から動けず。
望二歳(クジャクとアリ編)
動物園。望はとことことこっと、放し飼いのクジャクのところに行って、「クジャクさん今日は」とぺこり。クジャクは羽を広げてくれたが、威嚇したかっただけなのかも? その後、ふと地面を見たら無数のアリ。アリが怖くて、アリを踏むとアリが死ぬかもしれないから怖くて、二つの恐怖で望は固まっていた。
望三歳(カラス編)
児童館の仲間と共にピクニック。カラスがたくさんいた。「カラスさん、こんにちは。カァーカァー」とやっていたら、カラスがピョンピョン跳んでやってきて、望のサンダルの先をくちばしでつついた。望は泣いた。「サンダルさんが可哀想」と。あれはカラスの挨拶なのか威嚇なのか。
望三歳(アジ編)
水族館。アジが水槽の中で円を描いて泳いでいた。望一言、「おいしそう」。私と健さん、顔見合わせて、なんとなく居心地悪い。お魚屋さんじゃないのに。
望三歳(ウサギのたまご編)
英語教室の方で、イースターパーティをした。よその文化体験には良いから。で、望にもチョコレートのたまごをあげた。「うさぎさんってたまご生むの? 鳥のなかま?」と言うから、冗談で、「だから何羽って数えるのよ」と言ったら信じてしまった。「チョコレートをもっと欲しいからうさぎを買って」と。訂正するのが大変だった。うさぎがたまごを生まない事も、チョコレートのたまごを産む鳥はいないことも。
望四歳(ヘビ編)
動物園。動物に触れる時間があって、ウサギやハムスターやモルモットならまだしも、望は手を挙げて、シマヘビ?を首に巻いてもらう。私は怖くて、母と遠くから見ていたのに、薄黄色のヘビを襟巻きのようにして、望はニコニコ。もちろん毒はないそうだけれど、変な子と思っちゃいけないのかしら。セミもアリも苦手だったのに。小さいのが多いのは気持ち悪い? 大きいのなら長くてもよい?
望四歳(ライオン編)
一番近いのは上野動物園、次が東武動物公園とこども動物自然公園。でも、実家からの野毛山が一番近いのかも。上野はなんか狭苦しい。東武は高い。こども?は交通不便。で、初めて多摩まで遠出した。ライオンが、交尾していた。「あの♂、♀の上に乗っていじめている。かわいそうだよ。どうして動物園の人も他のライオンさんも助けないの?」
性教育、そろそろ始めた方がいい?
第7話、セミテリオから犬にも乗ってに登場する望の母、愛の育児日記から。
番外編部2に続きます。
お読み頂きありがとうございました。 霊園セミテリオの気の世界を、お楽しみ頂けましたなら幸いです。
お読みになられたあなたと、書き手の私が共に生きておりましたら、再来週水曜日に再会いたしませう。