EPISODEⅤ 銀河との連結
放心状態で固まっていた人間たちに家に帰るよう促して、
残された3人は近くに聳え立っていた廃屋の中に居た。
光の差さない暗い部屋の中、3人は其々の瞳を光らせながら話をする。
「で…、未来空は何しに来たんだよ。」
或空の問いに答える前に、蒼月が口を開く。
「ボクが喚んだからじゃないの?」
「それもある!…けど、これ渡しに来たんだ!」
未来空が開いた手の中には、銀河を閉じ込めた水晶玉があった。
水晶玉の中では、赤く輝いた銀河が一定の周期で自転していた。
「…これ、クェイサー…か?」
「そうだよ!全天神セイリオス様に代わって届けに来た!」
未来空は、2人に天星世界での出来事を説明した。
ディオスクロイが侵攻し、雷霆ケラウノスを以て天狼星に攻勢を開始したこと。
その攻勢に依り、人間界では異径の類『テラス』が出現し始めたこと。
「…じゃあボクたちを襲った、あの獣は…!」
「あぁ、恐らくテラスだろ…。」
或空が倒れ、蒼月が浄化出来なかった理由。
天空神ゼウスの雷霆ケラウノスに創られた存在だったからだ。
それが意味する、この世界の未来を想像して背筋が凍る。
「ディオスクロイの目的は、天狼星の生命体を抹殺することらしいね!」
こんな状況でも笑顔を崩さない未来空に、多少苛立ちを感じる2人だったが。
今はそんなことよりも、この未曾有の危機を脱する方法を考えなければならない。
頭を悩ませていると、不思議そうな顔で未来空が2人を覗き込む。
「…え、これ使うと思って持って来たんだけど?」
そう言って未来空が指差したのは、或空の手に渡ったクェイサー。
赤い光を放ちながら、自転を続けている。
「そう、か。これを人間たちに…。」
「えっ?!そ、そんなの危ないよっ!!」
蒼月が止めに入るも、或空の耳には届かない。
赤い瞳が、赤い銀河にリンクしていく。
赤色矮星アルコルと、赤方偏移クェイサー。
それは瞬く間に強烈な赤光となり、水晶玉の中の銀河が或空の瞳に這入り込んだ。
「或空っ!大丈夫なの…?!」
光が収まった瞬間に、蒼月は或空に駆け寄る。
「…オレ、クェイサーとは相性いいから。心配すんな。」
以前では見せなかった怪しい笑い方で答える。
綺麗な赤色だった或空の瞳が前より暗くなっていた。
代わりに、右の瞳は何もしていなくても仄かに発光する程度の輝きを放つ。
「オレがクェイサーを制御する、だから人間たちにも力を…。」
不揃いな瞳で、そう願った。
もちろん、最初に脳裏に過ったのは今日会った人間たち。
夜が明けたら、彼らにクェイサーの力を分けることとなった。




