エピローグ
それから数ヶ月が経った頃に訪れた冬は、とても寒い日が続いた。
東京も何日も連続で雪が降ったり、少し積もったり。高校の卒業式の日も、よく冷えていた。
桜の開花も例年より遅かったみたいで、四月に入ってもまだ薄桃色の花びらを降らせる桜並木を楽しめた。
今はもう散ってしまったけれど、地面にはまだわずかに花びらが残っている。
「美波」
不意に名前を呼ばれて顔を上げると、輝先輩がこちらに駆け寄ってきた。
「輝先輩」
彼は、春風で少し乱れた私の髪を軽く梳き、にっこりと笑う。
「すぐわかった?」
「ううん、迷った。大学ってムダに広いんだもん」
「わかる。俺も入学した頃はよく迷ったな」
今年の一月末、私は無事に志望校に合格した。
受験勉強は本当に大変だったけれど、めげずに頑張り続けたおかげでなんとか桜が咲いた。
輝先輩とまた同じ学校に通えるのだ。
私はもちろん嬉しくて、泣きそうになったけれど……。合格発表の日に付き添ってくれた彼は、私以上に喜んでいた気がする。
専門学校に通い始めた真菜とは、相変わらずバイト先で頻繁に会っているから、お互いの近況はちゃんと報告し合っている。
もうすぐ、木村先輩と同棲を始めるらしい。
なんだか大人に思えるけれど、幸せそうな姿を見ていると羨ましくもあった。
だけど、私だって幸せだ。
お互いの彼氏には秘密だけれど、密かにふたりでよく惚気合っている。
「とりあえず昼ご飯だな。そしたら、校内を案内してやるよ」
「うん」
輝先輩と手を繋ぎ、キャンパス内を歩く。
「今日、結構暑いな」
「まだ四月なのにね」
「もう初夏みたいだよな」
「プールとか行きたいかも」
自然と零れていた願望に、彼が嬉しそうに笑う。
「じゃあ、今年の夏のデートはプールだな。海も行くか」
「うん、いいね」
青空の下、数ヶ月先の未来のことを話して笑い合う。
もうすぐまた夏がやってくる。
好きだったけれど、大嫌いになって……。そして、今は大好きな夏が――。
【END】
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執筆期間
2022/9/1~2023/1/31
小説家になろう
2025/7/23~2025/8/9
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