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プロローグ

 ゆらゆらと揺れる水。

 塩素の匂い。



 オレンジ色の文字を映す電光掲示板。

 スタートの合図を耳に届ける電子音。



 どこまでも続く透明な世界。

 少しくぐもったような水しぶきの音。



 早鐘を打つ心臓。

 途切れ途切れに聞こえてくる声援。



 手を伸ばしたゴール。

 肩でする呼吸。



 もう逃げたいと何度も思ったのに、一度だって逃げることはできなかった。

 かけがえのない居場所。



 だけど……もう二度と戻れない。

 あの頃からずっと、私の心は溺れたままなんだ――。



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