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4では試しに付き合いを


 なのに‥


 突然父が切り出した。

 「エークランド辺境伯。娘が申し訳ない。実はあなたとこうして話はしたかったのはアンドレアが貴方を好きでな。婚約を申し込みたいからなんだ」

 父がそう言うと掴まれていた手がハッとしたように離され彼が一歩距離を置いた。

 「どういう事でしょう?」

 「今話した通りだ。君にアンドレアと婚約して欲しいんだ」

 「ティートン侯爵令嬢とですか?しかし、かなり年が離れていますが」

 まあ、確かに彼はすでに32歳、一度政略結婚をしたらしいがすでに離縁している。子供はいない。


 こうなったら仕方がない。暗示にかかった気もするが違うかも知れない。

 父が言い出したことを今さら違うとも言えない状況だとすぐに気持ちを切り替える。


 「エークランド辺境伯。すみませんでした。私、ずっとあなたが好きだったんです。でも、いきなりあんな事になって‥その‥恥ずかしくて思わずあなたを責めるようなことを言ってしまって‥どうかしてたんです。だってあなたのような素敵な方からすれば私など眼中になど入る余地もないと‥いえ、わかっているんです。お父様。エークランド辺境伯は困っていらっしゃいますわ。もういいんです」

 私はいやいやしながら後ろに後ずさりながらも彼に ”わたしはあなたが好き” とずっと暗示をかける。


 「いえ、ちょっと待って下さい。ほんとに?婚約すると言うことは‥いいか北の辺境に嫁に来ると言う事だぞ?ほとんどの貴族令嬢が行きたがらないと言うのに?あなたはそんなに私を好いていると言うのか?」

 えっ、もしかして効いたの?

 何だかその気になってもらっているような?

 ではもう一押し。


 「もちろんです。私はあなたを心からお慕いしています」

 両手を組んでウルウルの瞳でもうアピール。

 ちなみに私の瞳はルビーのような深紅。髪はとろけるはちみつみたいな黄金色。

 (あっ、ティートン家の血筋の人間はみんな深紅の瞳を持っている)

 侍女のメルディに言わせれば、華奢だけど出るとこは出ているし顔は凛とした美しさがあってお嬢様は私の憧れなんですって‥

 わかってるわ。冷たく見えるって言いたいんでしょう。

 でも、私には暗示って言う必殺技があるから。って今回は不安だけど。

  

 「だが、では先ほどあんな拒絶を?」

 「あっ、れは。いきなりで驚いてしまって‥淑女ならば当たり前の行動ですわ」

 なによ。自分が誘惑して来たくせに!でも、私が好きならあの行動はおかしいと思われても‥

 私は少し狼狽えて顔を俯かせる。

 父は何も言えなくてただその場にいるだけ。

 もう、お父様何かフォローしてよ。

 「お父様‥」

 「いや、娘はかなりの恥ずかしがり屋で‥この年になってもまだまだ子供でな。ハハハ‥」

 「ですが、婚約を4回もしたんですよね?それもすべて解消されたとか?」

 知ってたんですか?

 「あ、あ、あれは相手が悪かったんです。私に非はありません!」

 「そうでしょうね。相手はすべて監察局の取り調べが入ったと聞いてますよ。それにしてもティートン侯爵があんな婚約を許したのかがわかりません」

 「‥‥‥」

 お父様何とか言って下さい!父に視線を送る。


 「あれは、アンドレアがどうしてもと言うから仕方なく。父親は娘には弱いんだよエークランド辺境伯」

 「お父様!なんてことを‥」

 もう知らない!彼は絶対私と婚約なんかしたいと思わないはずよ。

 

 彼はそんな私をじっと見ながら眉間に皺を寄せて考えているらしい。

 腕組みした手をほどいてポンと手を打つと。

 「それほど言われるなら試しに付き合いをしてみますか。もちろん婚約はそれからになると思いますが」


 「「いいんですか?」」

 そうして私は彼の婚約者候補という事になった。

 一抹の不安は残るが取りあえず目的は達成できた?らしい。


 





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