29ロベルト様の話って?
ティートン侯爵家のタウンハウスに帰りつくとみんな疲れた顔をしていた。
タクト兄様やビリビリやピチュは王都外れの屋敷に戻ってレーラや魔術師を監察局の牢に連れて行くと言って別行動になった。
ロドミール伯爵もすでに捕らえられているらしい。
帰りはアイスやロベルト様と相乗りするのは気まずかったのでバッカロ騎士隊長の馬に乗せてもらった。
バッカロ騎士隊長はアイスのお父さんでもある。
アイスは仕方ないなと素直に引いた。
ロベルト様も泥だらけでさすがに一緒にとは思わなかったらしい。
それにしてもどうしてバッカロ隊長がいるのか知らないがとにかく申しわけなかった。
「バッカロ隊長にまでご迷惑かけてすみません」と謝った。
「気にするな。俺はアンドレアの親父に頼まれたんだ。ロベルトをこっそり見張るようにとな。だからロベルトと行動を共にしたってわけだ。安心しろ。あいつはロドミールと関わってはいない。それよりあいつ。お前に惚れてるんじゃないのか?」
「そんな事ありません。あれは契約です」
「なんだ?前の女の事か?あいつはどうにもならん奴だ。ロベルトは毛嫌いしてるらしいが」
「そうですか?でも、聖女様だってロベルト様を」
彼の周りにはたくさんの女がいると思い出す。
「あっ、そのことなんだが‥ロベルトにはあの魔術師の術が効かなかったみたいだが、何か知ってるか?」
「彼はもともと暗示にかかりにくいそうですから」
「だからと言ってあんな強力な術が?」
「そう言えばあの時聖女様が彼に付与魔法を授けてましたが」
「聖女が?そう言えばアンドレアに渡したお守り持ってるか?」
「ええ、ほらここに」
私はバッカロ隊長から貰ったお守りを見た。
淡いピンク色の水晶がひときわ光揺らめいた。
「アンドレアも平気だったんだろう?やっぱり加護もおかげかもな。実はそれな。アイスからアンドレアに渡してほしいって頼まれてな」
「えっ?アイスがこれを?もう、アイスったら直接渡してくれれば良かったのに。後でお礼言っておきますね」
しばらく沈黙があった。
「ああ、そうだな。それより騎士隊にもそのお守り取り入れるかな」
「でも、単なる偶然かもしれませんよ」
「ああ、だから実験的にやってみる価値はあるだろう?」
「もし効果があるならすごい発見です!」
「ああ、それで悪いことをしようって奴が減るなら願ってもない事だ」
私達はそんな事を話しながらタウンハウスに帰って来た。
すぐにみんな着替えをするために一度別れた。
ロベルト様はすぐにルシア様に会うようだ。とにかく彼女が無事で良かった。
私はお風呂に入って着替えをして身支度をしてダイニングに行くとすでにみんな揃っていた。
父にタクト兄様、ロベルト様とルシア様も同席していてグンネルやアイス、ボリにメルディがいた。ビリビリとピチュはまだ仕事があるらしい。
「アンドレア。報告は聞いた。無事で何よりだった」
父が一番に声を掛けてくれた。
「はい、お父様。ご心配を掛けましたがみんなのおかげで無事任務を終える事が出来ました」
「ああ、これで宰相を追い詰めることが出来るだろう。みんなご苦労だった。さあ、ゆっくり食べてくれ。エークランド辺境伯もルシア様もゆっくりしてくれ」
席に着くとロベルト様が畏まった様子で立ちあがった。
「ティートン侯爵やみなさんには本当に感謝してもしきれません。本当にルシアの事や今回の一件はお世話になりました。ルシアも無事に保護していただきこんな素晴らしい夕食までご招待いただいて本当にありがとうございます」
ロベルト様が感謝を述べた。
「あの、私からも是非お礼を。本当に私を救い出していただきありがとうございました。まさか夫があのようなことを考えているとは知らず皆さんにご迷惑をおかけした事心よりお詫び申し上げます」
ルシア様は申しわけさなそうに俯いた。
「ルシア様あなたのせいではありません。あなたは被害者です。みんなあなたが無事で何よりですよ。もう嫌な事は忘れましょう。さあ、食事にしましょう」
さすがお父様。
「ルシア。もう気にすることはない。さあ、ご厚意に甘えていただこう」
ロベルト様は優しく声をかけるとルシア様はやっと顔を上げて食事を始めた。
ルシア様が無事でなによりだ。
和やかな食事が終わるとロベルト様がお父様に話があると言った。そして私も同席して欲しいと頼んで来た。
その眼差しはすごく真剣で私の中に一瞬の期待と不安が沸き上がった。
ロベルト様の話は‥
婚約の話はなかった事にするとか?
それともこのまま婚約を続けたいとか?
私はこのまま婚約を続けたいと思っていた。




