14ルシア様救出(1)
翌日にはルシア様の居場所がわかった。
なにより彼女の命が優先ということでルシア様を救出する事になった。
ルシア様は数年前に一度結婚したが夫の暴力で離縁している。
そして半年ほど前にロドミール伯爵から縁談が来てルシアさんは彼の申し入れを受けたらしい。
貴族の女性が離縁して再婚できる確率はかなり低い。ルシアさんにしてみれば受け入れるしかない選択だったのだろう。
それでも、相手がこんなひどい奴とは思いもしなかっただろう。可哀想にきっと今頃心細い思いをしているに違いない。
ますますロドミール伯爵が許せなくなった。
夜の闇に紛れて潜入部隊が出発することに。
行き先は王都のはずれにある今は誰も住んでいない商人の屋敷。
何年も前に商売が傾き夜逃げして空き家になっているらしい。
そこにいるのはロドミール商会の息のかかった連中だと推測出来た。
そいつらはそこを住み家にして王都に出入りする商人は旅人から金品を奪ったりもしている荒くれもので時々ロドミール商会が利用しているとわかった。
大体妻に薬を盛ってそんな危険なところに放っておくなんて一体ロドミール伯爵はどんな人間なのかと思う。
偵察の物からの報告によるとルシア様はどうやら薬を与えられて朦朧として動けない状態らしい。
そんなことまでして欲しい通行許可証って。
まあ、それがあれば国境も難なく通れるのだろう。何しろ辺境伯から与えられた特別な許可証なのだから。
すでにロドミール商会関連の見張りはタクト兄様が小隊を連れて監視を開始した。動きがあればすぐにわかる手はずだ。
ロベルト様には父から遣いを出してあってルシア様の事は任せて欲しいと告げてある。
もちろん許可証は絶対に発行しないようにと念を押す。
今回の任務にはもちろん私も同行する。
ルシア様救出にあたって敵にルシア様がまだその場にいると思わせる必要がある。
私ならそれが出来る。暗示でそいつらに別の人間をルシア様と思わせればいいのだ。
~出発前~
私。グンネル。メルディ。ボリ。アイスが揃った。ビリビリとピチュはタクト兄様の応援。
それぞれ黒い上下の服を着てマントを羽織っている。フードを目深に被れば闇に紛れてしまうだろう。
「お嬢、絶対に俺達から離れるなよ」
グンネルが何度も念を押した。
「わかってる。絶対危険な事はしない」
「絶対だぞ!」
「ええ、グンネルしつこいわよ」
「お嬢グンネルは心配なんだ」ボリが笑いながら言う。
「そうだぞ。グンネルは目に入れても痛くないほどお嬢が大切なんだからな」アイスまで。
「それを言うなら私が一番お嬢様を思ってますよ」
もう、メルディまで。
「私もこの隊員の一人として扱ってちょうだい。特別扱いはやめて。さあ、いいから行くわよ」
「ああ、アンドレアくれぐれも気を付けてな。グンネル頼んだぞ」
お父様が声をかけた。
「「「「お任せ下さい!」」」」
「もう、みんなぁ~」
久しぶりの任務。私はお荷物扱いらしい。でも、みんなの足を引っ張らないようにしなきゃ。




