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11呪いって?


 私は屋敷に帰ると着替えてお土産をメルディに渡した。

 「いつもありがとう。お礼をしたいってずっと思ってたけどなかなかチャンスがなくて‥ちょうどロベルト様が買い物に付き合ってくれたから」

 「お嬢様。こんな事してもらうなんて‥いいんですか?」

 メルディは包みをそっと開けた。

 「かわいい。お嬢様私一生大切にします!」

 「そんな。いいのよ」

 「そうだ。お嬢様は何を買ってもらったんです?」

 「えっ?‥」脳内にはキスの事し浮かばない。


 「あっ、そのリボンですね?良く似合ってますわ」

 「ああ、そうなの。ロベルト様が結んでくれて」

 「良かったですね。今回も暗示がうまく行ったみたいですね。お嬢様ならあんな冷酷辺境伯でもいちころですよ」

 「ええ、そうね。今度エンカーレッジに誘ったの。彼まだ会員じゃなかったみたい。だから会員になって連れて行ってくれるって」

 「お嬢様さすがですね」

 メルディは嬉しそうに部屋を後にした。


 翌朝、支度を済ませて廊下に出た。

 すぐにグンネルに出会ったのでプレゼントを渡した。

 大き目のハンカチを渡すと彼はうるうる瞳をにじませて早速そのハンカチが役に立った。

 もうグンネルったら可愛いんだから。


 ティートン侯爵家ではタウンハウスを2つ持っていて一方には父と私と使用人、タクト兄様は出入りが激しいが年の半分くらいは使っている。

 もう一方には王都で働くものが住むことになっている。顔ぶれはその時によって変わる。今はグンネルの小隊が滞在している。

 一階の廊下でボリに出会ったのでまとめて靴下を渡した。

 全員が揃うことはほぼないので「みんなに渡してくれない。ボリ、いつもありがとう。みんなにも感謝してるって伝えて」っとさらっと渡した。

 「いいんですか?お嬢様。こんな高いものを?俺、恐れ多くて使えないかもしれないです」

 「そんなのオーバーよ。いいから普段使いにして。その方がうれしい。良かったら又買ってくるから安心して履いてね」

 ボリが言うことは一理あった。靴下は結構値段が高いのだ。彼らは何度もほころびを直して履いていると知っていたから靴下を選んだのだけど、こんな事ならもう一足ずつ買えばよかったと後悔した。

 今度出掛けたら又買って来ようと秘かに思った。


 朝食の席で父も同席した。すでに監察局に行く支度も整っているらしい。

 「アンドレアどうだった?」

 さすがに夜会での様子が気になったらしい。

 「ええ、順調です。でも、彼に暗示は効かないみたい」

 父が珍しく眉を寄せる。

 「大丈夫なのか?無理ならタクトと変わらせる」

 「そんな。兄様も忙しいんです。それくらい自分で何とかできます。次はエンカーレッジに行く約束をしてます。だから私に任せて下さい。きっと尻尾を掴んで見せます」

 そう言うと目の前にある半熟の目玉焼きを口に入れた。

 うん、この半熟の焼き加減たまらない。口に運んだ目玉焼きの黄身がとっろとっろで私は思わず「うんんん~」

 「その様子なら大丈夫そうだな。いいか。暗示が効かないならあまり深入りはするなよ。危険だと思ったらすぐにあいつらを呼ぶんだぞ」

 あいつらとはボリ達の事。

 「わかってます」

 「エークランド辺境伯は手が早いと評判の男だ。充分気を付けるんだぞ」

 私は思わずくすりと笑った。

 「ええ、わかってます」

 私はその日は監察局で忙しく働いた。

 もう、お父様少しは手加減というものが!!


 午後には監察局から騎士隊に急ぎの書類を持って行った。

 「隊長、急ぎの書類です」

 「おっ、ありがとうアンドレア」

 「いえ、失礼します」

 「そうだ。これをやろう」

 王都騎士団ウィルダー・バッカロ。騎士隊長が父の幼なじみで私は幼いころから可愛がってもらっている。

 渡されたのは教会で売っているお守り。

 美しい水晶が淡いピンク色に輝いて神々しい。これはペンダントにつけれるようにトップにチェーンを通せる輪っかが付いている。

 「ありがとう。おじさま」つい隊長と言わずそう言うと首につけているペンダントを外してその水晶を重ねた。

 ティートン侯爵家で働く者はカナリアの紋章のついたペンダントをつけている。

 これは何かがあって囚われた時などに身の証を証明するため。王家から選ばれたものという意味合いがあるらしい。

 「つけたやろう。いいかアンドレア?気をつけてな」

 「ええ、もちろん」

 きっと父からいろいろ聞いているのだろう。


 ガレクシア国周辺の国々はラモート教という神を信仰していて国々には神官や聖女がいて祈りを捧げる。

 聖女は癒しの力を持っていてあちこちの出向いて治癒を行う。医者という存在は貴重で病気になれば貴族でも教会にある診療所で治癒を受けるのがこの国の通常だった。

 なので聖女はみんなからあがなわれる存在だ。


 私は帰りに騎士隊の隣にある教会に祈りを捧げに行こうと思い立った。

 そう言えばずいぶんと祈りを捧げていないと思ったから。

 教会には結構人がいて順番に神の像に祈りを捧げて行く。

 祈りを捧げて教会を出ると並木道を歩いて監察局を目指した。

 木々の間に人が見えた。男と女。

 ピンク色の髪の人と黒髪の人。どうやらもめている?

 私は思わず聞き耳を立てた。

 「ロベルト様、いきなり何ですか?」

 「だから、君なら俺の呪いを解けるんじゃないかって聞いてるんだ」

 はっ?あれはロベルト様では?

 「もう、久しぶ‥再会に‥いいですか。ロベルト様呪いはと‥‥いんですよ」

 「でも、ほんと‥まってるんだ。わ‥だろ?女に‥めかない呪いなんて‥」

 「女にとき‥ない呪い?じゃあ、ロベルト様は‥「ああ、女に何の感情もわかないんだ!」

 「それって大変‥?」

 「ああ、だからこう‥頼んでるんだ」

 「もしか‥私を?」

 「頼める‥君だけなんだ。どうか」

 「わかりました。何とか‥みます」

 「そうか。じゃあ、都合の‥‥に」

 「では、‥日後の‥‥取り合‥ず治癒魔法を‥かけ‥おきますから。ヒール!」

 淡い光がピクセン様の手のひらから広がった。

 「あ、ありがと‥」

 「いいえ。では‥‥後に」

 「ああ、たの‥」

 ピクセン様は優しく微笑んで去っていった。


 私は気づかれないようにその場を立ち去ろうとした。

 言葉は途切れていたが呪いがどうとか話していた。

 それに何よ!聖女様と知り合いなの?結構中良さそうだった。また会う約束?

 胸に湧き起こるもやもや。

 そっと気づかれないように立ち去ろうとしたが私は思っていたより近づいていたらしくロベルト様に見つかってしまった。

 「アンドレアじゃないか?偶然だな。こんな所で会えるなんて」

 いつもの強面な彼の眉が下がっていた。

 ふん!にやけちゃって!!

 あっ、密会を見られたから?



 

 







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