01 見える運命の赤い糸
運命の相手と結ばれたいと願う男子高校生の想いは叶うのか
超能力を持つ彼の青春ラブコメディ
「あなたは運命の赤い糸を信じますか?」
そう… 運命で結ばれた2人の間に繋がる赤い糸…
急にこんな質問をされて戸惑う人もいるだろう
だけどオレは信じている
だって、赤い糸が見えるのだから…
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オレの名前は赤井紡この春から高校生だ
実は超能力を持っている
超能力と言ってもスプーンを曲げたり、手を触れずに物を動かしたりなんて事は出来ない
その能力は人と人の間にある運命の赤い糸をみることが出来るというもの、ただ見るだけである
見える赤い糸の特徴は次の通り
特徴その1:糸には干渉出来ない
オレの能力は赤い糸をみるだけである
糸に手で触れたり、切ったり、ましてや他の糸を繋げたりなんて事は出来ない
逆に糸の重さを感じたりキツく結ばっていて痛いということも無い
見るだけと言ってもこの地球上にいる全員の運命の赤い糸が見えているわけなので視界のいたる所が糸だらけである
しかしこの糸は自分の意志で見える/見えないの選択が可能だ
頭の中で見たいと思えば実物があるかのように見えるし、見たくないと思えば一切見えなくも出来る
特徴その2:形状は2人の関係性で変わる
赤い糸は体に結ばっていて相手の体に結ばる糸に繋がっている
太さや形は糸それぞれである
今にも切れそうな細い糸から、どんな刃物でも切れなさそうなものまでいろいろだ
これは恐らく2人がお互いをどう想っているかが関わってるんだと思う
いつでもイチャついてる両親を見るとそれぞれの手から極太のワイヤーみたいな糸が2人の間に繋がっている
一方、じいちゃんの手からは15センチ位の糸がぶら下がっている
ばあちゃんは既に亡くなっていて相手が居ないからだろう
でも、その短い糸はいつも手を合わせている仏壇の方に揺れている
じいちゃんは恥ずかしがって言わないけど、きっとばあちゃんの事を今でも想っているんだと思う
この糸が見える能力は物心ついたときから備わっていた
両親に2人の糸のことを伝えたら喜んでいたのを覚えている
その時に運命の赤い糸があると知り、自分にもそういう相手がいるのだと嬉しく思ったものだ
もちろん自分から出ている糸もある
左手薬指に結ばれた赤い糸がはっきりと見える
セーターを編む毛糸のような太さの糸が薬指から垂れている
ただ、この糸に少し問題がある
糸の先を追って視線を落として床を見てみる
その床には指から続く糸、糸、糸、糸…
目視で糸の向かう先を確認出来ないほどの糸の量だった
糸を辿れば運命の相手に辿り着けると安易に考えていたが触れもしない大量の糸を辿るのは不可能に思えた
糸は今も大量に自分の周りにあふれている
しかし、これまで何度か糸が巻き取られているのを見たことがある
例えば、自分が描いた絵が地域のコンテストで入賞したときや、水泳大会に出場したとき等である
自分なりに頑張ったり良い結果があった時、糸が少し指に巻き取られていた
とは言っても、見えるようになってから数年経つがまだまだ行き先も分からない状態のままである
自己研鑽を積めば短くなると信じて頑張ろう
春になり学校生活も始まるしこの先の出会いに期待したいと思う