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ごらん、馬車がゆくよ
悪いやつらから逃げた恋人たちは、ずうっと幸せに暮らしました。
恋人の一人は花を集めては、お茶や香水や、そのほかにもいろんな美しいものを作り、あちこちの市場へ売りに出かける器用な男でした。
恋人のもう一人は、男が色とりどりの花を手にとっては、美しいものへ変えていくのを眺めるのが大好きでした。時おり彼の膝に乗せてもらっては、ポプリの香りを楽しんだり、香水瓶にかけるリボンの色を話合うのも大好きでした。
彼に抱かれた幸せな女の首が落ちたのは、たしかまだ暑い盛りの日でしたが、彼女はもう少しも覚えていませんでした。その日の涙も、冷たい刃の感触も、なにもかもを忘れていました。
だから彼女は幸せでした。
そんな幸せな首を抱いた彼もまた、幸せでした。
幸せな恋人たちは、今日も馬車に乗って、美しい花を探しに行くのでした。




