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【昔話秘話】封印された桃のオノマトペ

作者: かくしか

 昔々、テレビもラジオも絵本も無い昔。娯楽が少なかった昔の話じゃ。

 ジジババが寝床についてから聴かせる昔話が、孫達の最大の夜の楽しみじゃった。ジジババは孫達を喜ばそうと、子供の頃に覚えた昔話に独自の演出・脚色を加えたものじゃ。


 川に桃が流れる場面は、孫達からの問い掛けに悩まされておった。

「オババ、なぜ桃が流れてくるのけ」

「オババ、おら桃食いてぇ」

話を度々中断させられ困ったババは

「ドンブラコッコ、スッコッコ、ドンブラコッコ、スッコッコ」

と妙な抑揚を付けてみた。


 はじめて聞く言葉だったので、孫達は始めキョトンとしたが、ババは構わず色々と抑揚を変え繰り返した。

 ドンブラコッコ、スッコッコ、ドンブラコッコ、スッコッコ、ザンブラコッコ、スッコッコ、ドンブラコッコ、スッコッコ

 子供達はその言葉と抑揚を楽しんだ。桃が流れてくるという非現実はどうでも良くなったのじゃ。


 話のつかみは大成功じゃった。

 じゃがあまりに楽し過ぎたため、孫達は桃太郎が鬼退治に出かける肝の部分以降の印象が薄くなってしまったのじゃ。

 過ぎたるは及ばざるがごとし。

 楽しいのもほどほどに留めておくべきだったのじゃ。


 孫達は毎晩同じ話をババにせがんだのじゃ。

「オババ、ドンブラコ話してけ」

「オババ、スッコッコ話してけへ」

 同じ話に飽き飽きしたババは、スッコッコを封印することにしたのじゃ。


 河上から大きな桃が流れてきたのさ。

 ドンブラコ、ドンブラコ


 こうして世界最初のラップミュージックは日の目を見ること無く、物語ババの楽曲は失われてしまったのじゃった。


とっぴん、ぱらりん、ざっぴん、ぽろりん、て。

読んで頂き、ありがとうございました。

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