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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
終わりの始まり
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語られる者、語る者 その5

第9話 語られる者、語る者 その5


光の主の記憶と共に映し出される過去の出来事。

それは映像というより、バーチャルに近いものだった。

上を見上げれば空が見え、左右を見渡せば、そこに有る建物や人々が映し出されていた。

流石に、匂いや風の触れる感触は得られないが、自分がここに居るんじゃないかと思える程の臨場感に、皆驚くばかりである。

すると人々の話し声が聞こえて来た。

音や音声は聞こえるのだと認識し、喝采と聞こえてくる人々の話し声を聞いてみた。

「○€×*|→:×<°,-÷¥☆|\〆」

何を言っているのか全く分からない。

完全に日本語では無い事は理解したが、この都市は日本の過去では無いと思えて

「光の主よ、ここは過去の日本じゃ無いんじゃないのか?全く言葉が分からなくて、別の国か、又は別次元の世界なんじゃないのかと、思えて来たんだが…」

そう問う聖司に

「ここは別次元でも、別の国でもなく、れっきとした日本の過去で合っている」

そう断言し

「この時代の言葉は、自然の力を扱う為、この様な言葉を使っているのだよ。この時代の全てのものは、自然も人も、同じ性質を持ち合わせているのだ。其方達の言うところでは、スピリチュアルエネルギーや霊力、サイキックと思えば良いかも知れんな…。それが当たり前の時代だったのだよ」

と、そう答える。

「何を話しているかが分からないのは、これから起きる事に対しても、何かと都合が悪いな…。では其方達にも分かる様に、自動的に言葉の変換が出来る様にしておこう」

そう言った瞬間から、人々の会話が理解出来る様になった。

「おおっ!分かる、理解できる!」

と、とても驚く一同。

所々では有るが、聞き取れない言葉が有るのだが、光の主によると、自分達の時代には無い失われた言葉だったり、古い記憶のものなので、曖昧なものは変換出来ないらしいとの事だった。

だが翻訳機能も付いた事に、光の主の高スペックに驚きと感心が上昇して、本当はメチャクチャ凄い奴だったんだと、今更ながらに改めるのだ。

感心していると、

「今居るこの場所と時間では、一部の事柄しか分からぬな…、では全てを見渡せる所に、時間と共に移動するとしよう」

すると風景が早送りされながら、高い空へと移動して行く。

その途中から、この時代のハイテクノロジーな文明に圧倒されるのだ。

巨大な建物が土地ごと宙に浮いていたり、水の球体の中にも家らしき物があって、それもまた幾つも宙に存在していたり、人々は当たり前の様に、()()で空中を歩いていたりと、現代では不可能だと思える技術が、五千年も前にあったのだと思わされた。

光の主に言わせると、この技術はごく一部なのだと言う。

まだまだ様々なテクノロジーが、そこかしこに有るとは、聖司達にすれば、神々の世界かファンタジーの世界かと思えて仕方がない。

これが本当に、過去の日本に存在していたなんて、今現在でも信じ難いと思えるのだった。

そしてほぼ全体を見渡せる高さに到着すると、目の前には、先程見ていた巨大な建物だと思っていたものより、比較にならない位の、更に一際立派で全貌が分からない程の巨大な建造物が、光の膜に包まれて浮いているのだった。

「ここが、この都市を統べる王の居城だ」

と、光の主が言う。

これ程凄い文明を築き上げた者達を統べる王は、聖司達にしてみれば、既に神そのもの様に思えた。

初め頃に、光の主のレクチャーされた内容に、満ち溢れたエネルギーを使うには、その者の力が比例するらしく、力が強くなければ、建物を浮かしたり、宙を歩いたりは出来ないらしい。

そう聞かされた聖司達は、これ程迄巨大な居城を維持している王の凄さと恐ろしさを実感していた。

「ではあの居城に、時を進めながら向かうとしよう」

そう言われ、王の住む城へと向かう。

向かう最中、早送りではあるのだけれど、王の住む居城にての出来事が全て流れ込んでくるのだった。

この都市と対となす、異国の都市の者達が、近々訪れる事。

その異国の都市とは、長年、覇権を争う敵対関係として、対立している都市である。

和を唱えるこの都市とは違い、この都市の様な、発展している幾つも有る巨大都市の全てを我が物にしたい、異国の都市。

その異国の都市の名は、ラバンと言う。

そのラバンは、巨大では有るが、こちらの都市よりも規模が小さい為、点在している小規模の都市を滅し吸収しては、この都市に戦争を仕掛ける事を繰り返しているのだ。

自然の力をそんな事に使うラバンに、そのままでは自然エネルギーが枯渇して、民や都市だけでは無く、地上の全てが死滅する恐れがあると、何度も忠告するのだが聞く耳を持たず、蛮行を繰り返すラバン。

そのラバンに、唯一対抗出来るのがこの都市の王族なので、ラバンがその蛮行を改める迄、長年何度も対抗してきたのだ。

その対抗に、流石に疲弊して来たからなのか、ラバンから和睦の申し出が有り、それを承諾する為の和睦交渉をこの都市で、行われる事になったのだ。

その交渉に各都市からも、都市を統べる王達が一同に集う。

その交渉の日が近づいてくるに連れ、居城ではその準備に慌ただしくなっていくのだった。

そして、交渉の日が間近になるに連れ、各都市から王族達もこの都市に集い始めるのだった。

ラバン以外の王族が全て集い、後はラバンのみとなる。

和睦交渉が、いよいよ明日となった日の夜、この都市の王は思った。

この交渉が上手くいけば、この世界は永遠に平和な世となるだろうと。

その為にも、誠心誠意で臨む事を自分に誓うのだ。

全ての民の為、生活を豊かにしてくれる自然の力に感謝する為、そしてこれから先の者達の為に。

それから夜も更け、明日の交渉も有るからと、王も休む事にした。

日は明け、昼近くにラバンから使者が到着する。

その時には既に各都市の王族と、この都市の王族が謁見の間に半円を描く様に待機していた。

そして、その謁見の間にラバンの使者が3人入って来る。

堂々とした歩みで半円の中心まで来ると、何処か不適な笑みを浮かべながら、少し深く頭を下げて挨拶をする。

「各都市の王族の方々、お初にお目見え頂きまして、誠に恐縮でございます…」

丁寧な口調なのだが、やはり不適な笑みを浮かべている事に、この都市の王だけただ1人、使者からの不穏な気配を感じてしまうのだった。

そして別の使者が、

「この様な場と機会をお作り頂け、大変喜ばしい限りです。各都市の王族の皆様方、誠に有難うございます。では皆様、今日は良き日になります様、何卒お願い申し上げます…」

そう言い終えると

「では皆様方、始めましょうか…」

と、勝手に話を進めようとする。

その不躾な態度に

「何を勝手に!今日この場で発言出来るのは、王族のみなのだぞ!それを使者如きが、勝手に話を進めようとは、何たる不届き者め!其方の主たる王は、一体何をしておる!未だ現れないでは無いか!」

他の都市の王が、激怒しながら問うのだが、使者は何食わぬ顔で

「王は来られません…、王が何故わざわざこんな所に来る必要が何処に有るのですか?ただの和睦交渉如きに…、その程度の事など私達で充分!」

と、悪びれる事なく言い切るのだ。

それを聞いた各都市の王族達は、

「何と!?貴様ー!!」

「此奴を今直ぐ処刑せねば!!」

などと怒りたち、収拾が付かなくなり始めるのだった。

その怒りを鎮める為に、この都市の王が

「各々方、どうかその怒りを鎮めて下さらぬか?この者達に今一度、私からどう言う所存かを問うとしよう…。だから今暫し、その怒りを抑えて欲しい…」

と、王族達をなだめるのだった。

それを聞いた各都市の王族達は、未だ怒りが収まらないのだが渋々承諾する。

少しずつ落ち着きを取り戻し、それを確かめて王が問う。

「先程其方が申した事は、ラバンの王の意思なのか?それとも其方一存の発言なのか?」

「フッ…、皆まで言わなくともお分かりでしょう?これはラバンの王の意思でございますよ…」

先程感じた、不穏な気配が更に強まる。

これは、決して見逃してはならないと思うのだが

「では、和睦交渉は、初めからする気は無かったのだな?」

「ええ、そうでございます」

「そちらから、この和睦交渉を申し出たはずだが?その申し出も偽りだと言う事なのか!?」

「ええ、ですからそう申し上げてるじゃないですか」

「ならば先程、一体何を始めると申したのだ!」

これ以上もない程の危機感を感じ、思わず声を上げる。

本当は、ラバンからの申し出があった時から、ずっと感じていたのに、心の奥底で危険だと警鐘が鳴っていたのに、それでも一途の望みになればと、ラバンの申し出を受けた自分の愚かさが悔やまれる。

でも何処か信じられない思いがあったから、念の為にと、他の都市の王族達にも協力を得て、ラバンを牽制する為に、全ての王族を招いたのだった。

でも、その事が過ちだと気付くのには遅過ぎた…。

「フハハハハっ!決まっているでしょう!分かり切った事を何度も繰り返すとは、何とも馬鹿なお人だ!」

そう言って両腕を高らかに挙げ、勢い良く振り下ろす。

「さぁ始まりです!()()と貴方の都市()()()()()()()が、今幕を開けたのだ!!」

その言葉をキッカケに、それまでラバンの使者に怒りの声を上げていた他の全ての王族達が、一斉にこの都市の王に向かって、攻撃を仕掛けて来るのだった。

それに驚きを隠せない王。

「!?──皆どうしたのだ!?其方らが何故我を攻撃する!?」

その問いに答える者は、誰一人としていない。

そこに居る全ての王族達の目には、生気が感じられない。

その動きにも覇気はなく、まるで死人か意思の無い者が動いているかの様だった。

余りの不自然さに、流石に何かあると

「其方達!一体何をした!?この者達に、何をしたのだ!!」

迫り来る驚異に焦る王の問いに、声高らかに笑いながら

「ここに居る王族全ての魂を傀儡にしたまでの事、貴方をこの都市を滅ぼす為にな!」

してやったと嬉しそうに言うのだ。

「そんな馬鹿な!?これだけの事を為すには、長い時間と許されない禁忌を犯さなければ無理な筈…まさか…それをラバンの王はやったのか!?」

「確かに禁忌を犯し、長い時を掛けて、1人1人を傀儡にするのには苦労しましたよ…ですがやったのはラバンの王ではありません!私が全てやったのです!」

「何を!?貴様、それではやはり其方の一存だったと言う事だったのか?」

「いいえ、ラバンの王の意思ですよ。…まぁ、そのラバンの王も今では私の傀儡ですがね…」

フフフと笑いながら答える使者。

「何とも信じられん!…貴様如きに、あのラバンの王程の力を持った者も操られるとは…そんな事などある筈がない!…貴様がそれを為せる程の力を持っているとでも言うのか?」

「そうですよ、そうでなくてはこの現状を作り出せないでは無いですか」

止まない王族の攻撃をいなしながら、このやり取りに、段々と分かって来た事があった。

「さては貴様、禁忌とされてる力をその身に宿しているな?…死者の魂をその身に宿し、それを使役すると言う禁忌を…」

「良くぞお分かりで!…そうです!その禁忌を持って、貴方…いやお前とお前の一族、この都市全てを滅ぼす為に、私は存在しているのだ!」

先程迄の不適な笑みでは無く、今は殺戮者の顔と変貌している使者。

その目には、王に向けられた鋭い殺意しか無いのだった。

「ではラバンの王は、本当はこの事に関与してはいないのでは無いか!やはり其方の一存だったのだな!」

「いいえ、ですからあれも関与してはいるのですよ!っと言っても、操り易くする為に、私が少しずつ今の王になる様、悪意の種を植え付けていきましたがね…!」

そんな恐ろしい事を平気でする使者に

「何と馬鹿な事を…ではラバンの王は…」

「あぁ、あの王は駄目だ…、あの王は使えない…本当の王は平和を愛し、この都市とも共存する事を願ってましたからなぁ…ですから私自ら変えて差し上げたのですよ、どうです?素敵でしょう?殺戮を愛する王だなんて!」

「貴様…本当に馬鹿な事を…何と…何と卑劣な愚行を犯したのだ!…」

その行為に嘆く王。

それを聞いた使者は

「貴様が言うな!先に卑劣で愚行を犯したのは貴様じゃないか!」

その言葉に

「我が!?一体何を言っているのだ!?」

と聞き返すが

「忘れてたとは言わせん!だがもう良い!さぁ死ぬが良い!!」

その言葉の後直ぐ、光に覆われた居城に衝撃と轟音が響く。

その事態に、奥で待機していた近衛兵や王の家族一同も、何事かと謁見の間に集まる。

思っても無い状況に戸惑いながら

「貴方、この状況は一体どうされたのですか?」

妻である王妃が聞く

「今は説明している余裕が無い!皆も済まぬが手助けしてくれぬか!?」

ここまで慌てふためく王の様子に、只事では無いと理解し

「取り敢えず言う通りにしよう、事が片付き次第、説明するのだぞ!()()()よ!」

王の名を呼びながら、襲い来る王族を蹴散らすセルジの父である先王。

それに続いて、先王妃と3人の兄妹も戦闘に加わる。

「近衛兵達よ、お前達は民の安全を確保せよ!敵の攻撃はこの居城だけではあるまい、民の避難と襲い来る敵を殲滅するのだ!」

そう号令を掛ける。

今迄のセルジなら、殲滅させる事など無いのだが、今回は別。

何故なら、我が都市もそうなのだが、他の都市をも巻き込んでしまった事により、ラバンその物を滅さなくては、今後これ以上の惨劇が繰り返される事になるので、それを許してはいけないと、強く思ったからだった。

「王族達は、動けなくするだけで良い!後は我が此奴らを消し去ろう!」

そう言って、セルジは使者と対峙する。

かなりの時間は掛かったが、其々が自分の役割を全うし、残すは使者のみとなる。

「くぅっ!流石は各都市中1番の王族だな…、各都市の王族達でも歯が立たんとは…」

使者は、悔しそうに唇を噛む。

「残すはお前達と、操られたとは言え、この愚行を許したラバンには、消えてもらうとしよう…。では覚悟するが良い!」

そう言って、セルジは力の限り、最大出力の光の球を頭上に作り出す。

「最後に聞くが、其方は我に怨みが有る様だが、我が其方に何をしたのだ?言ってみるが良い。それが其方の最後の言葉になるのだからな!」

そう言われ、使者は答える。

「本当に忘れている様だな…、良いだろう、教えてやろう!」

そしてセルジのした事を話す。

「貴様は私の家族を皆殺しにしたのだ!親や妻どころか、まだ幼く何も罪の無い妹にも容赦なく、お前のその手で殺されたのだ…!私達一家が何をした?何もしてないのに、ただの戯れで殺されたのだぞ!…瀕死だった私は死に間際に、最愛の家族の魂を喰らい生き延びたのだ!この怨みを必ず晴らすと、必ず復讐してやると!」

その言葉に嘘は言っているとは思えないのだが、セルジには心当たりがない。

「我が其方達を殺した?…そんな馬鹿な!そんな記憶は一切ないぞ!?」

そう答えるが、

「お前にすれば、些末な事なのだろうよ…、だが本当の事だ!私は忘れない!お前のその顔を、1度も忘れた事など無いわ!」

そう言うと同時に、セルジに襲い掛かる。

「死ねぇー!」

出来れば事の真相を明かしたいと思うのだが、真に迫り来る使者に、これ以上は無理だと悟り、セルジは

「真相が分からないままでは有るが、済まんな…其方達には消えてもらおう…」

と、光の球を弾けさせる。

光の球は、無数に飛び散り、使者や遠く離れたラバンの都市に降り注ぐのだった。

その光の球を浴びた瞬間、使者もラバンもこの世から消滅したのだった。

消滅したと同時に、傀儡と化していた王族たちも、元の状態に戻り、これで全てが終わったと安堵する。

だが忘れてはいけない…あの使者は、魂を喰らい生き延びた事を…。


全てが終わった訳では無い、始まった事をセルジは未だ知らないのだ。


第9話 語られる者、語る者 その5 完

今回長い文になりました。

次でこの語られる者編、完了すると思います。

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