夕香とリン編
以前のペースで投稿出来てる感じですね。
今話から、夕香とリン編がスタートしました。
多分…ハラハラドキドキする事間違い無し!の内容では有りません…。
ユルユル夕香とリン編をお楽しみ下さいませ。
第78話 夕香はマイペース
「ふふふふっふ〜ん♪」
何処か楽しそうに、大きな木の元へと向かう夕香。
一体何が楽しいのか、全く理解出来ないリン。
何故ならば、使者が放った怪物達を引き連れていたからだ…。
怪物が出現した時に、夕香が
「遠い所からわざわざ来てくれたのね〜ありがとう〜。疲れたでしょう?あそこの大きな木の陰で、一休みしない?」
と、意味の分からない事を言うのだ。
(エッ…?)
理解出来ないリンは、混乱して仕舞う。
[この方何を言ってるの!?そんな悠長な状況でも無いのですが!?]
と、プチパニックするのだ。
だが何故か、夕香の提案に“分かった”と頷き、ユラユラと、夕香の後に付いて来るのだ。
今は、夕香の言葉に従ってる様にも見える怪物達だが、何時夕香を襲うかも知れないのに、如何してそんな余裕を持てるのか、理解し難いリン。
ハラハラドキドキしながら、何時でも対応出来る様に、臨戦体制を保っていた。
なのに
「やっぱり海外の方は何処か違うわよね〜、骨格が違うのかしらね、顔の造りや体格がしっかりしてるわね〜」
(?…????)
この人は、一体何を言っているんだろうと、リンは思った。
何故なら今夕香達が居る場所は、小高い山の丘で周りには誰も居なかったからだ。
もしかしたら、自分のセンサーに反応しない人物が居るのかと、周りを探索するのだが、虫や小動物くらいで、やはり人は、誰1人として居ないのだ。
だから尚更困惑するリン。
(あ、あの夕香様?1つお聞きしたい事が有るのですが…)
「うん?なぁ〜に?」
(今言っておられた、外国の方とは…誰の事を指して言ってるのでしょうか…?)
と、至って当たり前な質問をするのだが
「誰って、決まってるでしょ?」
と、分かり切った事を何故聞くのだ?みたいな返答が来た。
(……申し訳ありません、私にはちょっと理解が及ばなくて、誰の事だか分かりません…)
リンが、其う答えると
「あら、目の前に居るじゃないの〜。この彼等の事よ?」
(!?…エッ…)
目の前の彼等と言われても、其処には怪物しか居ない…。
“エッ…まさか、彼等の事とは、この怪物達の事!?”
と、やっと夕香の言っていた人物を理解する。
(ゆゆゆ、夕香様!?再度確認ですが、彼等とは、あの者が放った怪物達の事でしょうか?)
「えぇ其うよ?他に誰が居るって言うの?」
(エエエッ!?)
見事に驚くリン。
「如何したのリンちゃん、そんなに驚いて…。エッもしかして…」
(ははは、はい…)
今度は一体何を言うのかと、身構えるリン。
「この方達以外に、私が気付かない人が、何処か近くに居るのかしら?」
と、予想だにしない言葉を聞いて仕舞う。
呆気に取られて、何も言えないリン。
「如何したのリンちゃん、何処か具合でも悪いの?何だか本調子じゃ無いみたいだけれど…」
一体何を言っているんだこの人は?と思うリン。
本調子じゃない状態を作ったのは、貴女なのですが?と言いたいリン。
この時に為って、ようやく自分の主人が、揺るぎない最強の天然なのだと、理解を深めるリンだった。
このままではこれから先、天然行動を発動される度に、確実苦労をさせられると嘆くリン。
更に思った事。
其れは、天然の上にマイペースな夕香の、危機管理能力が余りにも低く、危険察知など無理だとも思えたのだった。
如何したものかと考えながら
(夕香様、このモノらはあの者に、夕香様達の魂を輪廻へと向かわせる為に、解き放たれた怪物なのですよ?主人の夕香様に、こんな事を申すのは失礼ですが、大変危険な状況をお作りに成ってます)
リンはリン成りに、夕香の性格を踏まえて、敢えて“使者”とか、キツい表現をしない様にして、身の危険性を問い正した。
なのに返って来た言葉がまた
「えぇ、其れは分かっているわリンちゃん。其れを分かった上でね、前の方達と違うなぁ〜とね、私思っちゃったのよ…」
と、危険を承知で、この状況を自ら作り出したのだった。
恐ろしきかな天然…。
恐れを知らないのか、はたまた唯の超弩級が付くポジティブなのかは分からないが、夕香に言えるとするならば、大胆で豪胆だと言う事だろう…。
「ねぇねぇリンちゃん、本当に如何しちゃったの?また黙ったままでいるけれど、大丈夫?お腹痛くない?」
本気で心配そうな顔をして、リンが宿る指輪を見る夕香に
(あっ大丈夫ですよ〜夕香様〜。私には、夕香様達の様な器官は有りませんから、腹痛は起こさないですよ〜。其れよりもですね、何故以前の怪物と違うと思われたのですか?私は其れが気に成りました…)
と、普段からの言い方に変えた。
主人に仕えるモノとしての話し方をしても、何だかバカバカしく成ったのか、其れとも只単に、夕香に気を許して仕舞ったのかは分からないが、リンの中では既に、夕香の位置付けが低く為ったのは、間違いないと思える。
「そぉ?其れなら良かった〜♪私の大事なリンちゃんに、もし何か有ったら如何しようかって心配だったのよ〜。これで一安心だわ〜」
(其れは良かったで〜す。夕香様〜、其れは私も同じ何で〜、ムチャだけはしないで下さいね〜)
「えぇ了解よ♪」
(良かった〜。で、何が違うか教えてくれませんか?)
「あら其うだったわね、心配して、すっかり忘れてたわ…ゴメンね…。えっと其うそう、以前のあの方達って、この方達より何処か線が細いと言うか比べてみるとね、以前の方達、何だか小さく思えたのよ…。だからね、此処タイの国だからかしら、作りが違うのかな?ってね、思ったのよね〜」
これが、夕香の感じた事らしい…。
(あぁ成る程です!確かに其う思われちゃいますよね?でも安心して下さい。以前よりも強く為っただけでして、強いて言うのならば、頑張ってトレーニングしたって思えば良いかと思いますよ〜)
「あっ其うなの?な〜んだ其うだったのね〜、ウフフ〜トレーニングして鍛えて来たのね〜、偉いわ〜」
おいおいあんた達、何処が安心で、何処が偉いのだ?と思うのだが、残念な事に、其れをツッコむ者達が居ない…。
如何やらリンも夕香と同じ、天然臭をプンプン匂わせているみたいだ…。
……………
エッ、待てよ…?
と為ると…此処には天然さんしか居ないと言う事に成る…。
大丈夫なのか?
信康に聖司やカンちゃんに、阿沙華が居たのなら、胃をキリキリさせていたに違いない…。
ツッコミ満載の2人を相手しなければ成らないと、確実精神を消耗し、気疲れしていたに違いないだろう…。
ほわほわな2人の会話で、此処一帯が、緩く和やかな雰囲気と時間が流れる。
其の為か、2人の会話を大人しく聞いていた怪物達は、うつらうつらと体を揺らし、船を漕ぎ始める。
其れに気付いた夕香が
「あら?皆さんを放ったらかしにしちゃってたわね…ゴメンなさいね、折角遠い所から来たって言うのに、何のおもてなしもしなくて…。あっちょっとだけ待っててくれる?今この木さんにね、何か分けて貰えるか聞いてみるわね〜」
其う言って、大きな木に語り掛ける夕香。
「ねぇ大きな木さん、貴方の側で休ませて貰ってるのに、図々しいとは思うのだけれど、彼等をもてなしたいの。少しで良いから、貴方の葉に付いてる露を分けて頂ける?出来れば器となる大きな葉も人数分頂けないかしら…ダメ?」
と、大木にお願いする夕香。
突然、また何を言い出すのかと普通の人なら思うのだが
(大木さん、私からもお願い。夕香様に分けて上げてくれる〜?ダメ〜?)
と、一緒にお願いするのだ。
まるで大木が、人と同じ存在だと思ってるみたいで、当たり前の様に、普通に話し掛ける2人。
始終ニコニコしている夕香の元に、5枚の大きな葉が舞い降りて来た…。
「わぁ〜嬉し〜い♪ありがとうね、私のお願いを聞いてくれて〜」
其の言葉の後直ぐにポタポタと、5枚の葉目掛けて、透き通る雫が落ちて来る。
葉の器に、透き通る雫が溜まり
「ありがとう大木さん、これで彼等を少しでももてなす事が出来るわ〜。お礼は後で必ずするわね〜」
フフフッと笑い、大木を優しく撫でる。
「では皆さん、お待たせしちゃったわね〜。大木さんから頂いた雫で、旅の疲れを癒しましょうね〜。はい如何ぞ〜」
其う言って怪物達に、雫の入った葉の器を手渡して行く。
渡し終えた後
「大木さん、私の分迄用意してくれてありがとうね、とても嬉しいわ〜」
と、大木に感謝する夕香。
其う言ってまた、大木を優しく撫でると、葉に溜まった雫が、キラキラと輝き始めた。
「わぁ〜素敵♡これ、大木さんのお気遣いよね?ありがとうね、大木さん♪」
ウフフッと笑うと、風も無いのにサラサラと音を立てて、大木の葉や枝から音が奏でられるのだ。
奏でられた音を聞き、ニコッと笑い
「さぁ皆さんお待たせ、木陰に座ってお話ししましょ〜」
其う言って、大木の木陰に座る夕香達。
「さてと、大ちゃんから頂いた雫を飲んで、ゆっくり寛ぎましょうか〜」
(…大ちゃん?…あの〜もしかして、この大木に名前をお付けになられたんですか?ねぇ夕香様〜?)
「えぇ其うよ、ダメだったかしら?」
(いえダメでは無いのですが〜、更に聞きますけれど、もしかして、大木だから大ちゃん何ですか〜?)
「あら良く分かったわね〜、其うよ〜。凄いじゃない〜リンちゃん、良く当てたわね〜。流石私のリンちゃんだわ〜」
(エヘヘ〜其うですか〜?褒められると嬉しいです〜)
……………
バカかアンタ達…。
此処に信康、聖司に阿沙華とカンちゃんが居れば、確実其う言われただろう…。
そんな事は誰もが分かるとも、言われたに違いない…。
ワイワイキャッキャッと2人和んでいるが、全く危機感無しで、本当に大丈夫なのだろうか…?
そんな心配も他所に、怪物達はゆらゆら揺れて、2人の会話を楽しんでいるみたいで、一切襲う気配は無かった。
其れ所か“ふ〜ヨイショッと…”みたいに、ゴロンと横に成る始末。
其れを見た夕香が
「あらゴメンなさい…放ったらかしにしちゃって…。先ずは自己紹介をしなきゃね〜。私は龍乃瀬 夕香と言います。そしてこの子はね、リンちゃんって言うの〜。宜しくね〜皆さん♪」
(リンで〜す。宜しくお願いしますね〜)
……………
っちょっと待てーーーっ!!アンタ等何悠長に、自己紹介してんだ!?
と、何処からか聞こえて来そうだ…。
だが…
「◇○☆△※+〆×◎▽◇☆+×」
と、怪物が何かを話して来たのだ。
「………ねぇリンちゃん、ちょっと良い?」
(何でしょう夕香様…?)
「やはりこの方達、外国の方みたいよ?」
(エッ?何故また、其う思われました?)
「だってね、言葉が日本語じゃ無いんですもの…」
……………
違うだろ!?其うじゃ無いだろ!!
誰かこの天然にツッコミを入れる事は出来ないのか!?
と、思わずにはいられないのを他所に
「私、語学が得意じゃ無いから、何処の国の言葉か分からないわ〜…。如何しましょうかしら…」
折角話が出来ると思ってた夕香が、言葉が分からないと本気で困っている様なのだ…。
「今から一から覚え様としてもね〜…其れじゃぁ遅過ぎるし〜…如何しましょう…」
夕香は夕香なりに、本気で悩んでいます。
そんな夕香に
(あっ必要が無いと忘れてました)
「えっ何を?」
(彼らの言葉は古代の言葉ですし、多分…長い年月で、ちゃんとした言葉はまともに話せなく為ってると思いますよ〜。ですから、夕香様が分からないのはですね、しょうがないかな?みたいな感じです)
「あら、其うなの?其れじゃ如何したら良いのかしら…。今の私じゃ、如何する事も出来ないわよね…」
(だ〜い丈夫ですよ、夕香様。私が話せる様にしますから〜。ちょっと待っててくれますか?)
「えっ!?リンちゃん、そんな事も出来るの?」
(えぇ出来ますよ〜。私の得意分野ですから〜)
「其うなのね〜、其れじゃあお願いしちゃいますね♪宜しくリンちゃん♪」
(ハ〜イ任せて下さい♪)
と言って即、翻訳機能を起動するリン。
巫阿燐やカンちゃんが、あれだけ苦労し、あのシルバでさへかなりの時間が掛かったのに、僅かコンマ1秒程で作業を終わらせるリン。
天然頭なのに何故か、超細かい作業が得意なリンなのでした。
(はいか〜ん了!夕香様、これで会話が出来ますよ〜)
「本当に?まぁ〜凄いわね〜、こんなにも早く完了するだなんて、流石私のリンちゃんだわ♡私嬉しい〜♪」
(エヘヘ〜褒められた〜嬉しい〜です♪ふふふ〜さぁさぁ早くお話ししちゃって下さいね〜)
「ありがとう〜ねぇ〜。其れじゃ〜早速、もう一度聞きますね皆さん。皆さんのお名前教えてくれますか?」
此処で再度、自己紹介が再開です。
「私は龍乃瀬 夕香です、宜しくね♪」
「…私達には名前…有りません…使い捨てですから…名前など付けられてません…」
「凄いわリンちゃん!本当に会話が出来ちゃったわ〜!本当に凄いわね〜、流石私のリンちゃん♡…えっ?…名前が無いの?…其れに使い捨てとは…?」
リンの施した機能の凄さに大喜びしたかと思えば、怪物達には名前が無い事と、使い捨ての言葉に夕香は、とても険しい顔をした…。
「あの〜失礼じゃ無ければね、如何言う事なのかを聞かせてくれるかしら…。大丈夫?」
真剣な顔で尋ねる夕香を見た怪物達は
「私達を創りしモノは、唯、貴女達の魂を消滅させる為の道具として創り、只其れだけの存在なのです…。なので何時でも破棄出来、量産出来るモノとして、名など与えられてません…。唯、私達を創るに至って、多くの魂が混ざり合っています…。其の魂達には名前が有るのですが、遥か昔の事で記憶も曖昧に成り、自身の名を覚えてるモノは、ほぼ居ないでしょう…」
怪物から聞かされた内容で、使者の非道さを知る夕香とリン。
永い年月も、使者の仕打ちの酷さを思うと
「何て酷いの…とても許せない…。でも其れ以上に貴方達の辛さを思うと…うぅぅ…苦しかったわよね…うぅ…辛かったわよね…」
悲痛な表情をし、涙を流す夕香。
「ごめんなさいね…私達の輪廻に巻き込んで仕舞って…。何と詫びたら良いのかも分からない私を許さないで下さい…。其れに、何も出来ない私を許さないで下さい…」
ピカさんに見せて貰った過去の出来事を知っている夕香は、当時の王族だった自分達に、関係の無いモノ達を巻き込んだと詫びるのだった…。
其の詫びを聞いた怪物の魂達が
「何を仰います…あの者は、元々全てを無にしようと考えていたのです…。彼奴に取り込まれた時に、其の邪念を知りました…。ですから許しをこう事などしないで下さい…。如何か、ご自身を其処迄責めないで下さい…」
其う、怪物の魂達の代表が答えてくれた…。
其の言葉に溢れる涙が止まらないまま
「ごめんなさい…そしてありがとうございますね…。貴方達の辛さや苦しさが癒やされるかは分からないけれど、大ちゃんがくれた輝く雫を飲んで、ゆっくり休んで下さいね…」
未だ止まらない涙だが、慈愛に満ちた笑顔で言う夕香。
「ユイナ様…」
何故か既に、夕香がユイナの生まれ変わりだと理解している怪物達。
「さぁ如何ぞ…。あっ其うそうリンちゃん、この方達が落ち着ける様に、あの人に見付からない様に隠す事出来ないかしら?出来るのなら暫くお願いしても良い?」
(はい分かりました夕香様。其れくらいなら、とても簡単に出来ますから、直ぐに結界を張りますね〜…はい完了です)
「えっ!?もう出来たの?」
(はい夕香様。この一帯は、完全に誰からも干渉される事は無いですよ〜。安心して下さい)
何と隔離結界迄をも、いとも簡単に機能させるとはと、とても驚く夕香。
リンは、天然要素を持っているのだが、術を発動するのがとても早く、有りとあらゆる術や知識を有しているのだ。
なのに何故か天然…。
そんな風だからかリンは、神音のお気に入りでも在ったりする。
ロマンや巫阿燐はアホ扱いで、融通が利かないシルバはライバル。
魅了を持つ識は、気ままな気質で合わない。
カンちゃんは末っ子としての扱い。
そんな中で唯一リンだけは、術や知識が豊富なのに天然の所為か物腰が柔らかく、扱い易いと言う事で、とてもお気に入りなのだ。
少し話が逸れたが、かなり優秀なリンだと言えるのだ。
だから夕香が驚くのもしょうがないのだ。
何故なら、夕香もリンと話をしてて
“リンちゃんって、少し変わってるわね〜”
と、お互い“天然”だと認定しているみたいなのだ。
ウフフ〜と笑い合いながら、ちゃんと結界が張られてる事を確認した夕香が
「これで安心して寛げるから、皆さんゆっくり寛いで下さいね。大ちゃんからの雫を一緒に飲みましょ〜」
夕香が其う言うと、素直に雫を飲む怪物達。
一緒に飲んだ夕香が
「まぁ、何て透き通った甘い雫なの!?今迄に、味わった事の無い甘さだわ…」
大木の雫の美味さに思わず驚き、其う呟く夕香。
(へぇ〜其う何ですかぁ〜大ちゃんの雫、そんなにも美味しいのですか?夕香様…)
余りにも美味しいと驚く夕香に、リンが尋ねると
「えぇ、驚く程の美味しさよ〜♡凄いわね〜大ちゃんって〜。流石は優しい大ちゃん♪こんなにも美味しい雫をありがとう♡」
抱擁するかの様に大木を抱き締め、感謝の言葉を述べる夕香。
其の喜び様を見たリンが
(良かったですね夕香様♪美味しい雫…エッ?美味しい!?)
此処でリンが、ちょっとした違和感を感じ
(ねぇ夕香様、お聞きしたいのですが、幽体で在る夕香様が何故美味しいと感じられたのですか?本来なら幽体の其の身では、温度を感じないのと同じで、味覚も無い筈ですが…。其れにちょっとだけ、夕香様の力が高まってます…)
其処迄言った時、夕香とリンは同時にある事に気付くのだ。
其れは
「えっ…もしかして大ちゃんが何かしてくれたの?」
(多分其うだと思います…。でなければ、説明が付きませんし…)
リンの言った内容で大木が、恩恵を齎したと理解した夕香が
「大ちゃん…ありがとう…大好きよ♡」
と言って、優しくキスをした時…
パアァーーー…
突如、怪物達が光り輝き始めた。
其の光景に驚く夕香とリン。
「!!どどど、如何したの!?と、突然…」
(!…夕香様、このモノ達…浄化され始めてます…)
「エッ!?じょ…浄化!?」
(はい、浄化です…)
「そ、其れって、消えて無くなるって事!?」
(其のままでしたら、其うなりますね〜)
「……そっか…其うだったのなら、其の方が良いわよね…」
(夕香様?如何されました?…何だか寂しそうにされてますが…)
夕香の表情を見たリンが、如何したのかと聞く。
「……えっとね、折角お友達に成れたかな?ってね、其う思ったのだけれどね、永い時をずっと苦しめられてた方達がね、これでやっと苦しまずに天国へ行けるんだってね…思ったの…。もう少し一緒に居たかったけれど、其の方が、この方達にとって良いですもの…。私が我儘言ったらダメだわって、只其う思ったのよね…」
夕香の思いを聞いた、元怪物達の魂が
ー ユイナ様…私達は貴方と共に、この先もずっとご一緒させて頂きたいと思っております ー
「えっ?…」
ー 貴方様のおかげで、私達は解放されました。其の恩にも報いる為に、如何か側に居させて下さい…。必ずや、ユイナ様のお力に成りますから… ー
解放された魂達が、夕香の力に成ると言うと
「ダメ!其れはダメ!」
と、厳しい顔をしてダメだと言う。
ー な、何故ですか?一体何が駄目なのでしょうか…? ー
魂達が、其う聞き返すと…
「だって…貴方達は永く辛い時を過ごして来たのでしょう?私には想像も出来ないくらいの思いを…。今やっと解放されて、自由に成れたのよ?其れなのに、私なんかの為にまた、その身を犠牲にしようだなんて…ダメ…ダメよそんな事は…。そんな事をされてもね、私は嬉しくは無いの…。お願い分かってくれる?私の為にもお願い…」
自分の思いを伝えながら、涙を流す夕香。
其の夕香を見た魂達は
ー ユイナ様…私共に、そんな勿体無いお言葉を賜るとは…。ユイナ様、ご安心して下さい。私達は決してこの身を犠牲にしようとは、一切考えてはいません。お力に成ると言ったのは唯、ユイナ様の手伝いをしたいと思ったのです…。其れに王族の貴女様に失礼だとも思いながら、貴女様と仲良く成れたならと…この先もずっとご一緒させて頂けたならと…其う思ったのです…。許されない事とは思うのですが、如何か側に居させて頂けないでしょうか…ユイナ様… ー
其う魂達が言ってくれた…。
其の言葉に
「…本当に其うなの?其れが貴方達の本当の気持ちなら、私はとても嬉しいわ〜…。でも本当に良いの?私達と一緒に居ると、貴方達も危険な目に遭うのよ?私は其うならない様に、精一杯貴方達を守るけれど、守り切れない事も出て来るわ…。其れでも本当に良いの?」
夕香は、解放された魂達を案じて、再度問うのだ。
其の問いに、魂達の答えは
ー 構いません。ユイナ様と共に居られるのなら、これ以上の喜びはございません。其れにユイナ様はお気付きに成って無い様ですが、ユイナ様と対面した時既に、私達は癒しを施されていました。ユイナ様の其の癒しを身近に感じたいと、我々は思っています…。ですから如何かお側に居させて下さい… ー
其れが魂達の本当の気持ちだったのだ…。
夕香の権能は、相手を労り慈しむ程、癒しと浄化をフルに発揮する、聖なるヒーリングなのだ。
其れを無意識に発動している夕香。
更に言えば其の慈愛により、大木の大ちゃんにも影響を与えていたのだ。
だから、大ちゃんから受け取った雫から、甘さを感じたのだ。
其れを解放された魂達の話から、夕香とリンはやっと其の事に気付くのだった。
「えっ?其うなの?」
(あぁ〜だからだったんですね〜、納得〜です)
……………
オイオイ反応が軽いぞ!?と、誰かがツッコミそうなのだが…。
そんな事など全くお構いなしの2人は
「私って凄い事してたのね〜うふふ〜」
(ですね〜。夕香様凄〜いですよ〜)
と、キャッキャっと話に花を咲かせていた。
只ひたすら不安しか無い気はするが、夕香は無事リン本体を見付ける事が出来るのだろうか…。
「リンちゃ〜ん私知らないうちに、凄い人に成ってたみたいなのよ〜、何だか得した気分♪」
(ですよね〜夕香様〜♪私は最初から分かってました〜)
「あら其うなの?流石リンちゃん、何でも分かってるのね〜偉いわ〜。何でも出来るリンちゃんって素敵ね〜うふふ〜♪」
(そんなぁ〜照れちゃいます〜)
……………
うん、大丈夫…。
きっとこの2人なら、どんな困難でもこんな感じで、全てを上手く乗り越えてくれるだろう…。
多分…。
第78話 夕香はマイペース 完
前書きで言いましたが、はい!其の通り!の内容でしたね…。
ユルいわ〜…ユル過ぎる…。
大丈夫かな…こんな内容で…。
そんな不安を抱えつつ、次をお待ち下さい。
多分、次もユルユルでしょう…。
ユルユル…ユルユル…ユルユル……。




