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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
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77/85

護都詞と識編 5

 今回は、其れ程間を空けずに、続きを投稿出来ました。

 前話の終わり方で、モヤモヤされてる方には、其のモヤモヤを吹き飛ばす内容に成ってる筈です。

 多分ですが…。

 では護都詞と識編の続きを如何ぞ〜。

第77話 我が愛しの識


 体から、黒い煙が立ち昇り、激しい怒りに身を包む護都詞が居た。

 生まれてから、此処迄激しく怒りを露わにした事が無い護都詞。

 無駄を嫌い、根っからのナンパ師の護都詞は、叱る為の怒りは有っても、本気で胸の奥底から怒る事は無かった…。

 聖司が心を閉ざした時も、弥夜が護都詞以上に激怒した為、自然と怒りが収まったのだった。

 だから今迄、本気で怒る事が無かった…。

 だが、今回だけは違った。

 自分の全てを投げ打ってでも、護りたい存在の識にあの使者が直接触れ、破壊しようとしていた事に、今迄感じた事の無い程の怒りが湧き上がって来たのだった。

 ブチ切れた護都詞が言った言葉は

「殺す…」

 だった。

 生まれてから今迄、一度も言った事の無い言葉…。

 其れを今初めて言う護都詞の怒りは、もし此処に家族の全員が居たのなら、誰もが驚き恐れただろう…。

 其れ程珍しく、激しい怒りを露わにして、使者へとジリジリ詰め寄るのだ…。

 対する使者は

「フンッ小賢しい…。貴様の様な老耄(おいぼれ)が、出来もせぬ事を抜かしよるわ…。そんな老耄が、一体何がしたいんだと〜?笑わせる…。ハハッ私を殺すとはな…。フハッ…フハハハハハハハッ良いだろう!私を殺してみせよ!出来るモノならばな!アッッハッハッハッハーー…」

「……………」

「本当の事を言われて、何も言い返せないみたいだな〜。ほら如何した?さっさと私を殺してみよ!だが其の前に我に敵わぬ事を知らしめ、逆に返り討ちにしてくれるわ!ワッハハハハハハハ!」

 力量の差を理解している使者は、護都詞が自分を倒せると思い込んでいるのだと思い、そんな甘い夢物語通りに為る筈が無いと、現実(リアル)を突き付ける気に成っていた。

 だからか、護都詞の事が滑稽で哀れな奴だと思えて、可笑しくて笑いが止まらなかった。

「……………」

 無言のまま識を真ん中に挟む様に、使者の近く迄辿り着く護都詞。

 護都詞から立ち昇る黒い煙で、表情が見えないのに対して使者は、余裕の有る顔でニヤニヤしていた。

「其の黒煙を纏っている所為で表情は見えぬが、内心恐怖で立っているのもやっとなのだろう?其の証拠に、未だ私を殺そうとはしてないのだからなぁ〜…」

 何故か饒舌な使者。

 内心、心穏やかでは無い状態なのだろうと思うと、可笑しく、愉快に成って来たのだろう。

 下卑た笑いをしながら

「フフン…臆病者のお前らしいなぁ〜?来ぬのなら、私から軽く叩いてやろうか〜?」

 と、怨念を乗せた風を護都詞に向け、放つのだった…。

 識の近く迄来た護都詞を傷付け、遠くに吹き飛ばそうと考え放った怨念の風。

 吹き飛ばされた護都詞が、もう少しで手に出来た筈の石が、手に出来なく成ったと悔しがる姿が見られると悦楽し、薄汚い笑い方をしていた。

 妄想で興奮した使者の下半身の一部が大きく突起し、今にも弾けそうに成っている姿に

「其の薄気味悪い話し方、笑い方に其の姿…聞くに耐えん、見るに耐えん…」

 ブワァアッ……

 護都詞の体から立ち昇り、全身を覆い尽くしていた黒煙が、怨念の風を掻き消していく。

「!!」

 威力を弱めたのは分かっていたが、まさか今の護都詞が怨念の風を打ち消す力を持っているとは、露にも思っていなかった使者。

「な、ば…馬鹿な…!?」

 思わず少し後退りをしながら、使者が言うと

「貴様には、ナンパなど出来はしないだろうな…。そんな下心剥き出しでは、誰も見向き所か、近寄りもしまい…。哀れな奴め…」

 護都詞を覆っていた黒煙が、怨念の風を防いでいた為、今ハッキリと、護都詞の表情が見て取れる。

 其の顔は、冷たく冷え切り、軽蔑と汚物を見る様な目をし、冷酷な表情をしていた。

 思わず“ゾッ”とする使者。

「き、貴様〜!そ、其のナンパとやらは何かは知らぬが、私を侮辱したのだけは分かるわ!この老耄があ!舐めた事を言いやがって〜!!許せん!」

 一瞬でも恐怖した事を悟られぬ様、声を上げる使者。

 だがナンパ師の護都詞にすれば、モノの感情や思いを読み取る事など容易い事で有り、其れに長けて無ければ、脅威のナンパ成功率99%など出来はしない。

 今の僅かな声の震えや仕草で使者が、一瞬恐怖を抱いたと理解する護都詞。

「フッ…そんな事では誰も靡かぬぞ…。まぁ貴様では、生涯を掛けても会得出来はしないだろうが、今回は特別だ…。私が直々にナンパの極意を教えてやる。お前仕様の特別製だ、ありがたく受け取るが良い…」

 其う言って、黒煙で堰き止めてる怨念の風を浄化し

「おやおや可哀想に…ずっと辛い思いをして来たんだね…。其の辛さ…私で良ければ癒して上げよう…。さぁおいで、私が優しく抱いて上げよう…。そして其のまま、私の中で眠り休むと良い…。さぁ…おいで…」

 と、怨念の風全てを光に変え、護都詞の中に取り込んだのだ。

 浄化された風は、其のまま護都詞の力と成る。

「な、何い!?」

 目の前で繰り広げられる光景に、驚きを隠せない使者。

 其処に

「何を驚いてる。この程度じゃ、未だナンパにすら為らないのだぞ?只の語り掛けだ…。入門編にすら入ってないのに、驚くには早過ぎる。お前に、お前専用のナンパの極意を教えてやると言っただろう…忘れたのか?忘れたとすれば、何て残念な(おつむ)をしてるんだい。まぁ〜常日頃から、嫌らしく卑猥で下卑た考えをしてるからだろうなぁ…」

 罵り煽る護都詞。

「き、き、き…貴様〜〜!!何処迄も私を侮辱し」

「黙らぬか!おいお前!未だ私の話が終わって無いだろうが!!折角ナンパを伝授してやるって言っているのに、何だ其の態度は!?貴様は学ぼうとする姿勢が成っとらん!黙って大人しく教授されていろ!この馬鹿が!」

 怒りの頂点に達した護都詞の目の色は反転し、白目が黒く、瞳が白い眼球に変わっていた。

 更に肌は浅黒く変色し、全身が徐々に漆黒に染まって行く…。

 瞳以外が漆黒に染まった護都詞は、光さへ呑み込む、人の形をした完全なる闇だった。

 其の闇が

「其れではレッスンを始めようか…。()()()()()()()()()()()()()()は、()()()()()()()()()()()が、ちゃんと付いて来れるか?付いて来れなくても、レッスンは止めぬから其のつもりで…。何せお前には、()()()()()()を知らしめなくてはいかんからな…」

 使者に脅しを掛ける護都詞。

「では始めようか…レッスン、スタートだ…」

 こうして護都詞のナンパレッスンが、開始されるのだった。

「グッ…」

 ジリジリと詰め寄る護都詞から、先程迄感じなかったプレッシャーの圧が凄く、其の圧に押されて後退りする使者。

 何故これ程に、護都詞からのプレッシャーを感じるのか、全く理解出来ない使者は、只焦るしか出来なかった…。

 プレッシャーの謎を理解出来ないのは、しょうがない…。

 何故なら、護都詞の纏っていた黒煙は、全てを吸収するモノだったからだ。

 所謂、ブラックホールと同じ現象を引き起こしているのだ。

 只違うのは、重力を持たないと言う事と、吸収する対象にだけしか、有効しないと言う事。

 今の護都詞に少しでも触れたのなら、確実に浄化吸収されて仕舞うのだ。

 先程の怨念の風も、其の能力で浄化吸収したのだ。

 其の上、吸収されたモノ全て、護都詞の力と成る。

 反則級の能力を護都詞は持ち、其の能力を発動した今、ほぼ無敵と言っても良いのだ。

 使者は、そんな護都詞の隠された能力だと知らないのに、未知なる力を感じ、其れから伝わるプレッシャーを危険信号として感じ取り、後退りして仕舞ったのだった。

 当の護都詞本人も、先程のブチ切れした時に、権能の隠された能力を知ったのだった。

 自分自身の権能から“声”が聞こえ、其の“声”が言うには

ー 我に其れを喰わせろ ー

 と言うのだ。

 怒り爆発していた護都詞だったのだが、其の“声”と“言葉”に驚き

(だ、誰だ!?其れを喰わせろとは一体!?)

 と、“声”に対して反応して仕舞う。

 其の反応に

ー 早く我を使いこなせ主君よ ー

 とまた、“声”が聞こえて来るのだった。

(使いこなせ!?お前は一体誰なんだ!?一体何処から話し掛けている!?)

ー 我は主君の権能…。彼の者(かのもの)に付加されしモノ ー

(権能!?…彼の者に付加されし…アッ!ピカさんに付けられた権能!?…)

ー 其うだ主君よ ー

(け、権能に、この様な機能迄有るのか!?)

ー そんな事は今は如何でも良い、其れよりも先に主君にはするべき事が有るのだろう?ならば、今は我の言葉に従い我を使いこなし、大切なモノを助けよ ー

 この時護都詞は

“主君と言いながら、何故上からの物言いなんだ?…でも言われた通りだ…。早く識を助けなければ…”

 と思ったのだ…。

(分かった。だから其の遣り方を教えてくれないか?私の権能よ…)

ー 決断が遅い!…でも了承したぞ主君よ…。では教えよう… ー

 何処迄上から何だ?と思いながらも、権能の言葉に従う事にした護都詞。

 使者が罵っていた間、無言を通していたのは、実は権能と遣り取りをしていたからだったのだ。

 其れを知らない使者が、好き放題、言いたい放題にするものだから、使者に対しての殺意が上乗せされていた。

 只でさへ護都詞の権能の新たな力に、護都詞自身が抱く殺意迄もがプラスされたのだから、相当なプレッシャーを与えられてもしょうがなかったのだ。

 哀れな使者…。

 言わなくてもいい言葉を何度も言った所為で、今の護都詞に太刀打ち出来ない状況を作って仕舞った。

 唯、無敵と言える護都詞のこの権能。

 実は、思っている程無敵では無いのだ。

 其れに気付かれて仕舞えば、()()()使()()ならば、此処迄焦る事も、太刀打ち出来なくも無かった。

 だが()()使()()にはそんな余裕は無く、只プレッシャーを感じ、焦るしか出来ない…。

 其の使者に

「さぁ派手に行こうじゃないか。準備は良いか?出来て無くても待ては無しだ…さぁ始めよう…」

 護都詞の反撃が開始された。

「よ、寄るな!わ、私に近付くんじゃ無い!」

 初めて見せる、使者の怖気る姿…。

「い、意味の分からんナンパとやらの教えなど要らぬ!其の前に、お前を消し去ってやるわ!喰らえジジィーー!!」

 ジジィ呼ばりをして、破壊の光や黒球を繰り出す使者。

 だが其のどれもが、護都詞の黒煙によって吸収され、護都詞の力と為るのだ。

「!!!」

 右上半身が消滅し、力が落ちたとしても、決っして先程迄の破壊の光や、黒球の威力に劣らないモノを繰り出したのに、何一つとして効果は無く、危機的状況が反転して仕舞ったと、使者は思った。

「く、来るなあー!私に近寄るなあーー!!この老耄があーー!!」

 ジリジリ後退りをしながら黒雷や、黒炎に黒雹と、有りと凡ゆる力を放つのだが、全て掻き消され、浄化吸収されて仕舞う。

 次第に焦りから、恐怖が生まれて来る。

 使者に成ってから、初めて恐怖を抱く使者は、恐怖の余り

「グガアァァーーッ!…嗚呼ぁーーーッ!」

 と雄叫びを上げ、無心で()()()()()()()()を放った。

「!!」

 今迄とは違う攻撃に気付く護都詞。

黒羅舞反鏡(くらぶはんきょう)!」

 使者の放ったエネルギー弾が届く前に、黒い楕円の分厚い膜を張る。

 其の膜が、エネルギー弾をグッと包み、弾く様に跳ね返す。

 ドオォォーーーンッ!

「グアァァーーーー!!」

 跳ね返されたエネルギー弾をまともに喰らう使者。

 更に左下半身が吹き飛び、悲惨な姿をしている…。

 見るからに、瀕死状態の使者からは、今直ぐ反撃して来る様子は無さそうだと思う護都詞は

「待たせて仕舞ったね…識」

 其う言って、識本体の前に辿り着き、識本体を手にする為に、ゆっくりとしゃがむ。

 そして…

「今、やっとお前さんを私の手にする事が出来るよ…。良いよね?識…。本当に私が、識の主人として、認めてくれるかい?そして、この先を共に歩んでくれるかい?」

 一切口説き落とす為の言葉では無く、心から本心として語り掛ける護都詞の言葉に、偽りは無いと結んだ絆により、しっかりと伝わって来て…

(何を仰っているのですか…護都詞様。貴方以外に誰が私の主人と為るのでしょうか?貴方以外に、私の主人は居ません。如何か私の主人として、この先も共に歩ませて頂きたいと、私の方が思っています。ですから如何か私を…私と主従を結ばせて頂けませんか?お願いします、護都詞様…)

 護都詞も識から伝わる本心を聞き、お互いの気持ちが通じ合う事が、こんなにも胸が熱く高鳴る事を知るのだ。

 其れが、魂の絆を結んだからこそ余計に、今其う思えた…。

「其う言ってくれて嬉しいよ、識…。私のプロポーズをも、受け取ってくれて…」

(其れは拒否します)

 ガーーーン!

「ブフゥー!そそそ、そんな…。わ、私の愛を受け止めては…」

(止めません)

「Yes即答ー!…ぅ…うぅ…何故…何故…なんだい…識よ…」

(主従関係は受け入れますが、護都詞様の愛など必要有りません)

 ズガガガーーーン…

「し、識〜…」

(これはまた失礼を致しました…。言葉が足りなかったみたいですね…。護都詞様には既に、最愛の弥夜様がいらっしゃるでは有りませんか。ご婦人の弥夜様がいらっしゃるのに、其れでは弥夜様に失礼ですし、不倫と為りませんか?私の見た所弥夜様は、ナンパでの語らいは、護都詞様の遊びや生き甲斐として認めて居られる様に思われます。其処に私が、本気の相手だと思われたなら、幾ら私が主人に従う宝具でも、いい気はしないでしょうし、最悪、私と護都詞様の存在も危ぶまれると思いますが?そんなリスクを抱えてでも、私を弥夜様と同じ扱いをされるお覚悟はお有りでしょうか?)

 グサッ!

 識が話す内容を聞き、ダラダラ冷や汗を流す護都詞。

 やはり本能で生きる護都詞は、シンプルにバカだと言える。

 無言で冷や汗をかき続ける護都詞に

(護都詞様?如何なさいますか?)

 最終的には、護都詞の思う様にしたいと、覚悟を決めた識が問う。

「わわわ、分かったよ。識の忠告をしっかり胸に刻んでおこう…。んんっ!んっ!気を取り直して、再度問おう…。識よ、私と更なる絆を結んでくれるかい?」

(…はい、了承致しました…。フフッ…今迄で1番の口説き文句でした。流石、私の主人です)

「おやおやコレは…凄く照れるね…。ありがとう識、こんな気持ちにさせてくれて…」

(いえ、私こそ…永き時の中で、これ程幸福感で満たされるのは初めてです。ありがとうございます、護都詞様)

 2人、フフフッと笑い合い

「では識、これからも宜しく」

(はい護都詞様、如何ぞ宜しくお願いします)

 其の言葉を言うと同時に、護都詞が識本体に触れる。

 識本体に触れ、祭壇から持ち上げた時

 カッ!

 目を閉じて仕舞う程に眩く光り輝き、地下深くのこの場所を明るく照らし出す識本体。

 識自身が本体に掛けた呪も解け、本来の姿と力を得た識。

 眩い光を放ちながら、人型に変形する識。

 其の識に

「おぉ…これが本来の姿何だね…実に美しい。流石、私の識だ…」

「まぁまたそんな事を…。でも主人の護都詞様に其う言われると、くすぐったい様な、其れでいて嬉しくも思えますね」

「アハハッ大分識も、喜びを表現出来る様に成った様だね。感謝と喜びを本音で言うのは、簡単な様で難しいモノだ…。でも今の識は、本音での感謝や喜びを伝える事が、しっかりと出来るみたいでとても嬉しいよ」

「…其うですね…護都詞様の其の言葉、とても心に響きました…」

 強まった絆により、お互いが本音で話をしていると分かる、護都詞と識。

 其の護都詞が

「…識よ、お前さんなら既に気付いているとは思うが、あの使者(クソやろう)はごく一部の分身体で、消滅させても本体が居るのだな?」

「えぇ其うです。更に言えば、分身体を創り上げてる核が何処かに在る筈です。其れを同時に破壊しなければ」

「私達の情報が本体に伝えられるんだろ?違うかい?」

「はい正に其の通りです。ですので、反撃出来ない程のダメージを負っている今、この分身体を完全に消滅させましょう…」

「だな…。ヨシッやるかぁ〜!今の私と識となら、其れくらい容易い事だろうからね」

「えぇ」

「では始めよう識」

「はい、護都詞様」

 こうして初の共同作業が始まった。

 黒煙で浄化吸収する護都詞に対して、漆黒の鎌で無へと返す識。

 しっかりと護都詞の恐怖を其の身に刻まれた使者は、声を発する事も無く、2人の攻撃を受け、核となる種も破壊されて消滅したのだ。

 消滅させた後、護都詞が

「其う言えば、あの使者(クソやろう)にナンパの極意をキチンと伝授させて無かったな…。仕舞ったなぁ〜、もう少し手加減しても良かったかもな…」

 そんな事を呟く護都詞に

「あのままゆっくりと彼奴を甚振っていたら、護都詞様の方が大変な目に遭われてたのでは?」

 識が其う尋ねると

「ハハッ如何やら識には見抜かれていたみたいだね…」

「やはり其うでしたか…」

 呆れながらも心配そうに言う識。

「正直に言うとだね、実の所、私の浄化吸収にもキャパが有って、今限界ギリギリ何だよ…。其れとだね、黒羅舞反鏡も、純粋なエネルギーが巨大過ぎると、受け返せ無いんだ…。どんなに力を増しても、多分あれが精一杯だったと思うよ…」

「やはり其うだったのですね…」

 少し情けなさそうに言う護都詞に

「護都詞様、今吸収された魂は、私が保護します。私が保護すれば、二度と彼奴に取り込まれる事はごさいません。ですから必要な分だけ残し、私に譲渡して下さい」

「其れは良いのだが、吸収した善なる魂達を使役したくは無いんだ…。唯少しだけ、手助けしてくれたなら助かるけどね…」

「護都詞様が助けた魂達も、其れを充分に理解している様です。ですので安心して下さい」

「其うなのかい?其れなら其うさせて貰うよ」

「はい…。では護都詞様の望み通りに、私がサポートさせて頂きます」

「あぁ宜しく頼むよ識…。そして解放されし魂達よ…」

 こうして護都詞の中から、識へと魂が移されて行く…。

 魂が移された後、護都詞が識に

「識、ちょっと尋ねたいのだが、聞いても良いかな?」

「何でしょう?」

「いやね、識を護りしモノ達を蘇生する事は出来ないモノかとね…。其れが無理ならせめて、この手で弔ってやりたいんだ…」

「…護都詞様…」

「如何だろう…難しいかな?…」

 護都詞のモノへの慈しみに識は

「残念ながら、魂が別のモノに変わって仕舞いましたから、蘇生は先ず無理です…」

「其うなのかい…其れは残念だ…」

「でも弔いなら、この寺院を墓標として創り変える事は、其う難しい事では有りません」

「其うなのかい!?其れなら其うしよう!私も手伝うから、早速始めようじゃないか!」

「はい護都詞様」

「其の後は、私から離れないでおくれよ?識」

「えぇお約束します、我が主人の護都詞様」

 和やかに、護りしモノ達の墓標を創り上げて行く識と護都詞。

 時間を掛け感謝の気持ちを込めて、寺院を墓標へと少しずつ創り変えて行く。

 共に歩む為にも…。


第77話 我が愛しの識 完

 如何でしたか?

 正直な話、今話は僕の中でかなり好きな内容なのです。

 綺麗に纏まった感や、新たな発見も盛り沢山みたいな感じに仕上がったと、勝手に思ってます。

 今話で護都詞と識編は完了です。

 次話から天然さんのエピソードに突入します。

 では次話をお待ち下さい。

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