信康とロマン編 7
第70話 拝啓ロキ様…
気苦労が絶え無い信康の旅。
1つ、面倒臭がりの自由人なロマン。
2つ、神音から頼まれた、追加の宝探し。
3つ、其の宝とは、伝説に語られるロキの遺産。
4つ、其の遺産がクソ仕様のクソアイテムが多い事。
5つ、だが稀に、想像を超える力を秘めた武器や宝具が在るかも知れない。
6つ、知れない=無い可能性が高い事。
7つ、既にロマンが飽きて、面倒だと騒ぐ事。
8つ、思念体とは違い、今は本体が在る為、行動の制御が難しく成って来て、宥めあやすのが面倒な事。
9つ、神音が、ちゃんと探しているかを確認してくる頻度の多さ。
10、神音の確認の時に、聖セイから聞かされる、作詞作曲 龍乃瀬 聖セイ(聖司)“我が息子信康応援歌”。
………………。
チッ!コイツ等全員始末してやろうか!
誰にも気付かれずに消してやろうか!
一々、一々五月蝿いんだよ!面倒なんだよ!
このボ
「爆轟炎覇!」
「ギァアァーー!熱っ!熱っ!熱っ!何してくれてんの!このバカチョ!誰に対して危険な攻撃咬ましてくれてんのよ!」
「お前こそ、何勝手に架空の僕の心の声をナレーションしてんだよ!確かに中には其う思うモノも有ったけれどさ!始末とか消してやろうとか、まっっっったく思って無いからな!このバカロマン!!」
声を真似て、勝手に信康の心の声を捏造して語るロマン。
しかも其の語りは、誰に向けて語ったのか分からない程小さな声で語ったモノだから、初めは何をしているんだと不思議に思った信康。
まぁ〜たコイツは、ロキの遺産を探す道中に飽きて、1人遊びをし始めたんだなぁと思っていた。
実際に、正に其の通りなのだが、ブツブツ語り出してる内に段々と楽しく成り、声が大きく成って来ていたのだった。
チッ!コイツ等全員始末してやろうか!辺りには、心の声としてはダダ漏れの大音量で言ってるのに、ロマン自身、ヒートアップして全く気付いていないのだ。
今迄なら、ロマンは思念体だったので、指輪を指弾きすれば良かったのだが、今は本体に戻り、自由自在に姿を変えられるのだ。
ちなみに今の姿はと言うと、翼を生やした人参だった。
今迄の指弾きのツッコミでは効果が無いと思ったのと、このロマンを一層の事燃やし尽くして仕舞え!と、ヒョコッと出て来たサイコさんが本気を出したのだった。
其れが今の現状…。
「別に良いじゃ無いのよ!唯の1人遊び何だから!誰も傷付かないし損もしないでしょうよ!」
「このヤロ〜!僕が傷付くし、損してんだろが!お前ちゃんと考えてんのか!?神音がしょっ中確認連絡して来てるだろうが!其れと同時に父さんもきっと聞いてるんだぞ!!」
「あっ…其うだったね…。如何しよ…信チョ、如何しよ?」
「知るかよ!文句言われ叱られるのお前だけ何だからな!僕は知らないから!」
「えぇ〜そ〜んなぁ〜…の〜ぶチョ〜…」
「知らん!其れに其のフザケタ姿は何なんだよ!?」
「ふに?この姿が?」
「其うだよ!何で翼の生えた人参なんだよ!最初は面白いから良いかとも思ったけれど、今みたいな状況じゃ、ムカ付くだけなんだけれど!!ったく、如何言うチョイスしてんだよ…」
「なぁ〜にぃ〜おぉ〜ぅ!言わせて置けば〜〜!!失礼にも程が有るってぇ門番じゃい!」
「失礼なのはお前だろ!何が門番じゃいだよ!バカ丸出ししやがって!あぁも〜付き合ってらんない!コレ以上付き合ってらんない!無理!!」
「其れはコッチのセリフだわさ!このボケチョのアホチョ!バーカバーカ!」
「〜〜〜〜アアアアッ!我慢の限界!僕、お前との主従関係を止める!絆も要らない!」
「言ったね!?フッOK OK〜…。コッチから願い下げ下げ下落だわ!破棄の権限はワシが持ってるから、今直ぐブッち切ってやりますよ!後から泣いて縋っても遅いからね!後悔するなよ!歯ぁ食い縛れよ!」
「誰が後悔するかよ!歯食い縛るかよ!早く其の権限を使いなよ!ほら早く!さあ早く!」
「言われ無くてもしちゃるって〜のよ!ほらハイッ!」
「……………」
「ハイッ!」
「……………」
「ハイッ!…あれ?…ハイッ!…ん?…ホイッ!トリャッ!ソイッ!…えっ…?」
「如何したんだよ、さっさと破棄しろよ!」
「してるっチュ〜の!何度もしてるっチュ〜のよ!」
「本当かよ!?全然切れて無いぞ?ロマン、お前本当に出来るのか?…」
「失礼な!出来る筈何だけれど!?…でも何で権限が無効に成ってるのよ?えぇっ?ほぇっ?」
其の様子から、本当に主従関係と絆を解除出来無いみたいだ。
「なっ…お、おい、其れってマジなの?如何して出来無いんだよ!?」
「そんなの分かる訳無いでしょ〜が!分かってたら、こぅ何度も面倒な事する訳無いっしょ!?ワシだって分からなくて戸惑ってんのに…」
「マジか…」
かなり焦り出したのか、フザケタ姿でアタフタと、宙をウロウロと舞っているロマン。
焦るとこんな行動を取るのかと、唯見ているだけの信康。
其処に
(信康様、今通信会話をしても大丈夫でしょうか?)
確認連絡をする為に、神音が連絡して来たのだ。
「あっ神音。あ〜大丈夫そうで、大丈夫じゃ無いかなぁ〜?」
(ちょっと理解し難いのですが、要は何かのトラブルが発生した…と、思えば宜しいのですね?では、また後程に)
「待って!待って神音ノン!ちょっと待って!」
(貴方って方はまた名前を…まぁ相手にするだけ損ですよね…。で、何でしょうか…ロマン…)
「えっとね、あのね、う〜〜とね…」
(私も暇じゃ無いのです。何も無いのでしたら、これ以上は無駄なので切りますよ)
「あっあっあっ!待って!本当待って!ちょっとかなりパニックボンしてて、上手く言えないのよ〜!」
(パニック?珍しいですね。通常がパニック製造機の貴方が、本当のパニックに成るだなんて…。で、少しは落ち着きましたか?落ち着いたなら、簡潔に言って下さい)
「主従関係と絆の破棄のやり方が分かん無いのよ〜。何度やっても破棄出来無いの!やり方合ってる筈なのに、間違ってるのかな!?ねぇ教えてチョ!お願いだから教えて〜」
(何をしようってですって!?)
「あっ…いや…えっと…」
宝具達の中でも、1番主人に仕える事を誇りに思っている神音にしてみれば、ロマンが今言った“破棄”は、とても許されるモノでは無かった。
神音がキレる。
(今の今迄は、同じ宝具仲間だと大目に見て来ました…。ですが其れも此処迄の様ですね…。私はロマン、貴方を決して許しません!今迄の愚行も同じ仲間で有り、同志だと思って目を瞑っていたと言うのに、最早貴方に掛ける情けなど一切有りません…。今この時点を持って、貴方を主人に仇なす敵と見做します)
「そ…そんなぁ…ウソだよね?敵だなんて…」
(気安く話し掛けるな!この下郎が!お前は何様なのだ!!)
本気で激怒し、完全にロマンを敵と見做した神音。
(おい神音!突然如何したんだ!?何時ものお前じゃ無いみたいに其処迄怒るとは、一体何が合ったんだ!?神のウアアァッ!)
神音の異変に気付いた聖司が、荒れ狂う神音を鎮めようとしたのだが、キレた神音は聖司に気付かず、発した怒りのエネルギーで、聖司を傷付けてしまう。
(アアァッ!!せ、聖司様!!私は何ていう事を…。申し訳有りません……。弁明の余地も有りません…。其れよりも無事ですか!?大丈夫ですか!?何処かお怪我されてませんか?…あぁ…私は何て事をして仕舞ったのでしょう…。大切な主人を傷付けるだなんて……)
本体も未だ手に入れてはいないのに、宝具で1番強い筈のロマンが怯える程の怒りを露わにした神音。
先程の、魂底から竦む様な怒気で驚愕したのに今は、今にも命が消えて仕舞いそうな程か細く、狼狽えながら聖司に謝罪するのだ。
(あ痛つつつ……。いや俺は大丈夫だよ神音…。何とも無いから、お前が気に病む事は無いぞ?其れよりお前の方が心配だよ…。如何した?突然あれ程強く怒って…。お前に何か有ったのかと思うと、とても心配だよ…)
(そんな、私の事などお気を遣わずに…。コレではロマンの事を敵やバカだとかは言えません…。叱った本人が、其の愚行を犯して仕舞いましたから…)
(ん?何?………もしかして、神音の暴走の原因ってのは…。まさか信康、お前かロマンの何方かが、其れとも2人一緒に何かしでかしたのか!?)
聖司の問いに、直ぐに答えられ無い2人。
(何だ〜!?返事が返って来ないって事は、如何やら本当に何かしたらしいな…。オイ信康!ロマン!お前達、一体何をしでかしたんだ!黙っていないで答えなさい!)
聖司の怒鳴り声に、ビクッと成る。
(早く答えないか!!)
かなり怒っている様に聞こえるロマンに対し、信康は
(やっぱり未だ僕に対して、気を遣ってるみたいだね…。何時もなら答えろ!って、命令形で強く言うもんね…)
信康が思った事は正解で、今迄負担を掛け、何度も傷付けて仕舞っていた信康に、これ以上信康を傷付けたく無いからと、無意識に怒りをセーブしていた。
「父さん、神音にゴメンと先に言わせて…」
(あぁ良いが…)
「ありがとう。神音、本当にゴメンなさい…。神音の狼狽えてるのが痛い程伝わったよ…。本当に主人思いで、父さんを思ってくれてるんだね…ありがとう、嬉しいよ…。だから尚更僕は、神音に謝らなきゃいけないよ…ゴメン…」
(信康様が、謝る必要など)
「有るんだ…」
(エッ?)
「主従関係と絆を断ち切るって言ったの、僕から何だよ…」
(エエッ!?)
(なな、何ぃ!?おい信康、何故そんな事言ったんだ!?お前、其れが如何言う意味を持つのか、其れを分かって言ったのか!?)
「勢いとは言え、勿論分かって言ったよ…」
(!!)
(バ、バカ野郎!!お互い、やっと巡り会えて結んだ絆なんだぞ!!其れを勢いが有ったとしても、絶対言ってはいけない言葉だと、賢いお前なら分かってただろうが!!お前何してんだ!!)
本気で怒る聖司の声に、ビク付く信康とロマン。
(俺に対してなら未だ良い!お前にして来た仕打ちを考えれば、親子の縁を切ると言われてもしょうがないが、お前とロマンは主従関係以上の絆を築かなきゃいけないだろ!!お前は其れを如何思っているんだ!?…まぁ親子の縁を切るって言われたら、必死で許しを懇願するけどな…)
「……だよね…」
(信康様、お聞きしても宜しいでしょうか…?)
「うん、良いよ…。本当にゴメン、神音…」
(謝罪は必要有りませんよ…信康様。唯、何故其の様な事に成ったのか、経緯をお聞かせ願えませんか?)
「うん分かった…。でも口で説明しても、ちゃんと伝わら無いと思うから、ロマンに事の発端迄の記憶を2人に映像として送るよ。お前なら其れくらい出来るよな?ロマン」
「うん…出来無くは無いけど…」
「覚悟を決めろよ!叱られるなら、僕も一緒何だからさ…」
「ホイ…」
「って事だけど…」
(了承しました)
(俺も其の方が助かる)
「だって、後は宜しく」
「…アイチ」
渋々ながらも聖司と神音に、ロマンがナレーションし始めた辺りからの映像を送る。
(ロマン、コレは一切加工などはしてませんよね?)
「したくても、面倒だからして無いよね…」
(なら信用出来ますね、貴方が面倒臭がる事をするなど有り得ませんから)
ディスりながら、信用する神音。
「ありサンです」
まぁ〜た変な略し方をするなぁと思った信康は、この時
(あっコイツの変な言い回しって、普通に話すのが面倒だから、其の時の気分で略してたりしてんだな…)
と、何気に気付くのだった。
今回の騒動の発端に成った映像を観た聖司と神音。
((……………))
2人無言のまま、リアクションが無い。
内心ドキドキの2人。
特にロマンは、面倒なお叱りが待ち受けていると思うと、全く生きた心地がしなく、ウロウロと飛び回っている。
(信康、俺と神音は呆れて言葉に成ら無かったよ…。まさかお前の相棒が、此処迄好き勝手で自由と来たモンだ…。其れに付いては同情するよ…)
(分かっていたとは言え、私も同じ気持ちです…)
「分かってくれる?…ありがとう、其れだけでも救われるから…」
(でもな、お前から主従関係と絆を取り消すって言ったのはダメだ…。どんなに同等だと思っていても、やはり俺達と、神音達には超えられ無い変えられ無い壁が有るんだ。其れなのに、お前から破棄すると言われたら、ロマンは其れに従うしか無いだろう!?何時ものお前なら、其う成る事くらい分かってた筈なのに、本当如何した?お前らしく無いぞ?)
「あっ…うん…」
(聖司様、如何か信康様を責めないで下さい。其れはきっと、ロマンとの絆が更に強まったからなのでしょう…)
「(エッ!?)」
(前にも申しましたが、絆が強まればロマンの性格が感染ると…。ですから、本体を得たロマンとの絆が強固と成り、悪い部分だけ感染した様なのです)
「(マジか…)」
(ロマンの苛付きが、信康様に感染った可能性が高いです。ですから、ロマン病が発症したかと思った時は、如何かお気を強く持って対応して下さい)
「其れしか対処法は無いの!?他のやり方とか無い訳!?」
(今の所御座いません…)
「マジかぁ〜……」
(唯頑張れとしか申せなくて…済みません…)
「……いや良いよ…。其れしか方法が無いのなら、覚悟を決めて頑張るしか無いもんね…。ありがとう、神音」
(いえ、大した事はしていませんので、感謝する必要は御座いません…。逆に私が、これ以上の手助けが出来無いのが、申し訳無く思います…)
「其れこそ謝る必要は無いから」
(其うですか、ではお言葉に甘えて…。所で信康様、1つ確かめたい事が…)
「ん?何を?」
(今でもロマンとの主従関係と絆を破棄したいと、其う思いになられてますか?)
チラッとウロウロ飛行してるロマン見て
「正直苛付くしムカ付くけど、いや、今はそんな事思って無いよ…。父さんと神音のおかげで、冷静にも成れたしね…」
(其うですか、其れなら良かったです)
「心配掛けてゴメンよ…」
(いえ、本当に何でも有りませんから…。で、ロマン貴方は如何何です?)
「う〜〜ん?……出来れば破棄したく無いよ?…あの時は売買で買っちゃっただけで、信チョの事…ちょっと認めてるからね…」
気恥ずかしそうに言うロマンだが、翼の生えた人参だからか、お前は一体何に恥ずかしがってるのだと思う信康。
勿論、聖司と神音も映像を映し出して見ていたから、信康と同じ事を思っていた。
(なぁ信康…。コイツは本体取り戻してから、ずっとこの姿なのか?…)
「其れ聞く〜?まさか、そんな訳無いじゃ無い。初めは人型だったけどさ、其れからは直ぐ飽きてさ、コロコロ姿を変えてるよ…」
(何だ其れ!?姿を何度も変えてるのか?…其の方が面倒だと思うんだが…)
「だよね…。僕も其う言ったんだけどさ、其うやってテンション上げないと、宝探しの旅が続きそうも無いって…。でも毎回フザケタ姿に変わるんだよ…」
(信康様、其れはどんな感じなのでしたか?)
「スプリングのバネに足が生えたのとか、メッチャ伸びた鼻毛を三つ編みにした鶏に、短足の麒麟とか、色々な姿に成ってたよ…。其の中でも1番嫌だったのがさ、仏教で顔が幾つも在る観音様って居るでしょ?そんな感じで、僕達家族全員の顔を貼り付けてさ、声迄同じにして話してんの…。其れ見たらさ、まるで僕達の生首が話してる感じにみえてさ、流石に気持ち悪くて蹴り飛ばしちゃったけどね…」
(………エゲツな…。確かに其れは気持ち悪いし、引くよな……)
(私も、流石に其れは耐えられ無いと思われます…)
「エ〜〜ッお2人さんも、そんな事言う〜?せっ〜〜かくワシが気を遣って、家族と離ればなれで寂しいかもってやって上げたのに〜」
「この〜!其れじゃお前は、宝具達が1つに纏まった生き物が、同じ声で自分に話しかけられても平気なのかよ!?其の中に、自分も居るんだぞ?」
「ウェッ!気持ち悪!そんなの見たら、トラバカに成っちゃう」
((……………))
「〜〜〜本っっっ当にお前ってヤツは〜〜!!其れをお前が僕に見せ付けたんだぞ!!正直、お前の其う言う無神経な所が辟易してるんだよ!先ずは其れをしたら、周りのモノとか相手が如何思うか考えろよ!頼むからさ!」
(信康、ヒートアップしてるぞ!もう少し落ち着け)
「フーッフーッ……分かった…。ありがとう父さん…」
(いや何、神音がもしロマンと同じなら、俺も同じ事してたと思うからさ…。気苦労が絶えないと思うが、何とか堪えてくれないか?本気で無理だと感じたのなら、其の時は俺に言ってくれ。キチンと説教してやるからさ)
「……うん、分かった…」
(ロマン、聖司様からのお叱り受けない様、くれぐれも励む事です。其の方が、貴方にとって面倒では無い筈なのですから)
「アイシ…気を付けませる…」
(其れと大切な事を話しておきます、しっかり聞く様に…)
「大切な話?エッ?どんな話じゃろ?」
(全く…。貴方から聞いて来た事では有りませんか…。主従関係と絆の破棄に付いて…)
「其うだった!わ〜すれてたぁ〜!で、如何すれば良いのよ?」
(ん?まさか貴方…破棄するつもり…)
「無い無い今は無いから!」
(今は!?…本当に呆れて仕舞います…。先ず絆は別として、1度主従関係の契約をして仕舞えば、2度と破棄出来ません)
「「(エエェーーーッ!!)」」
(ヒャッ!…皆さん、そんなに驚かれても…。思わず驚いて仕舞いました…)
「ねぇねぇ其れ!本当なの!?神音!?」
「マジ増しなの!?ワシそんなの知らないのよ!?聞かされてイナイナイバー何だけど!?」
(当たり前じゃ無いですか。そもそも貴方、ご自分の性格分かってるでしょう?)
「?」
(?じゃ有りません!自分でも認めてる面倒臭がりで、飽き性の我儘でしょ!しかも天然の自由人で、面白い事が大好きな遊び人の変人でしょう!)
「だよね…」
(2人程の付き合いは無いが、そんな俺でも分かる)
「えぇ〜ハア〜〜?そんなぁ〜褒められても〜ねぇ〜ん♪)
「((褒めて無い!!))」
「アッキャキャキャキャ〜♪」
「((……………))」
「で、其れが本当ならさ、何でワシだけ村八百されてんの?」
(……本当に…分から無いのですか?先程も言いましたが、面倒臭がりの飽き性の貴方が、其の事を知っていれば、絶対に主従関係を結びたがら無いでしょう?違いますか?)
「何とまあ〜失礼な!幾らワシでも其れは有る!確実有るますよ!当たり前っスけど?其れの何処がいけ無いの?」
(コレですもの…。ですから、創造主が貴方にだけ教えて無かったのです。何せ主人の魂が消滅する迄、何度転生しても、新たな王族の後継者に引き継がれる時迄、ずっと共に生きて行かなければいけ無いのですから…)
「エッ!?其れマジなの!?」
「ウッソ〜ぉん!冗談サビ抜きで〜!?」
(其れ、本当なのか?なぁ神音…)
(冗談でも嘘でも有りません。更に言うと、王族としては、聖司様の元であったセルジ様が最後でしたから、私達が仕える最後の方達と成ります)
「ヒャヒャァ!?其れも本当なの?」
(本当ですよ、ロマン)
「じゃさ、もし破棄したく成ったらさ、ワシが信チョの魂を消滅させれば良い訳っスか?」
「このボケ!お前ってヤツは…」
(コイツ…マジ思考能力がヤバイな…)
(貴方って人は…冗談でも許しませんよ…)
「ウヒィッ!」
冗談では無かったので、心底神音に恐怖するロマン。
(一応お答えしておきます。其の方が、貴方にとっては良いでしょうから…。信康様の魂を消滅した時は、貴方も一緒に消滅する時なのです。其れは私達、宝具全てが其うなのです。何故なら、主人以外にはお仕え出来ませんから…)
神音の説明に、納得する信康と聖司。
其れに対して、ロマンはと言うと
「ウギョ〜〜〜!マジ〜〜!?其れ知ってたら、絆だけにしておけば良かったーー!!」
「アアアアァン!?お前…僕と主従関係に成りたく無い程、僕が嫌なのかよ!?」
(ロマン、今直ぐ消滅させて上げましょうか?貴方が消滅しても信康様には影響は無いので、お望みなら喜んでして上げますよ?)
(信康、同情するよ…。神音、構わん!大切な信康に、こんな自己中は必要無い!答え次第では、直ぐ向かうぞ!)
(了承しました)
「ちょっ!ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと〜〜〜!待って待ってぇ〜〜!!違うよ!違うのよぉ〜〜!!」
怒りに満ちる3人に、慌てて待ったを言うロマン。
(待つ必要は有りません)
(だよな!)
「聖セイさんも神音ノンも待って〜〜!信チョも違うからね!本当違うから!!」
本当に違うと押し通そうとするロマン。
「何が違うんだよ…」
「……言い訳じゃ無いけど、其う思われそうで…」
「そんなの良いから言いなよ!」
「ウヒィッ!……あのね、ワシの性格にさ、信チョが何時迄、何処迄我慢出来るのかって…。其れ…思うとさね、申し訳無くてだね…其れなら絆だけでも良かったのにって…。力が増す事は必要な事だけんチョさね、其れだけの為に、魂の消滅する迄永劫に付き合う信チョに、凄く申し訳無いなぁ〜って…」
シュンとしたロマンが答えた思いもよら無い内容に、あのロマンがそんな事を考えていたのかと知る信康達は、胸の奥底から込み上げて来る熱い感情に包まれるのだった。
感動して何も言えない聖司と神音。
「ロマン…うぅぅ…ロマン…あぁぁ……わぁぁぁ…」
今迄のロマンを見て来ただけに、内容によっては、本気で破棄してやるつもりでいた。
其れなのにロマンが、信康のこの先の事迄を思ってくれていた事が嬉しく、そして破棄してやるつもりでいた事に、何てバカな事を思っていたんだと、恥と罪悪感で泣いていた信康。
なのに…
「其れとさ〜、信チョのイビキ聞き続けなきゃいけないって思うとさ、そいつはヤベェ〜な、ワシの精神保たねぇ〜なぁ〜って思ったのよさねぇ〜。…ん?あれ?どしたの信チョ?何か泣いてるけど…?」
ロマンが破棄したい1番の理由を聞き、ガチンと音を立てて固まる3人…。
「ほぇ?あぇ?…皆んなど〜したのよ?固まっちゃってさ…。アッ!もしかしてさね、ワシの話に感動して固まっちゃった〜?アキャッ♪」
このボケェ〜〜〜ッ!!
感動と罪悪感で流したあの涙を返せ!!
本気で破棄してやろうか!
と、激しく思う信康。
此処最近、チラチラと顔を出す頻度が増した、信康の中のサイコさん。
其のサイコさんに支配されないかと心配な聖司は、ロマンが放つ余計な一言の威力に、恐れを感じて仕舞うのだ。
神音は神音で、聖司からロマンを消滅させて来いと指令が出たなら、今直ぐにでも、消滅しに行きたいと考えていた。
早く指令を出せ!早く!と、神音からの圧が半端無く
(よ、よしっ神音、信康の居る場所は分かるか?)
取り繕う様に聞くと
(寸分違わぬと思います。で、如何されますか?)
(そそそ、そりゃぁ決まってるだろう、信康の元に行って、相棒のロマンを躾ないとな!…だろぅ?…)
(躾ですか…消滅…では無く…。大変残念ですが、聖司様の言葉に従い、躾をしに行きましょう…)
(あぁ其うしてくれ…)
[頼むよ…これ以上神音を怒らせないでくれよ…。怒った時のコイツの圧、メッチャキツいんだけど…]
心の中で嘆く聖司なのでした…。
(では参りましょう)
(あぁ宜しく…。信康、其う言う訳だから、今直ぐ其方に向かうからな!其の場から動かないでくれよ〜)
其う言って、聖司達との通信が切れた。
呑気にパタパタと、飛び回ってるロマンを見ながら
(ロキに会いに行く前に、先ずは創造主に会いに行きたいよ…。そして絶対シバキ倒して問い詰めてやるんだ!!コイツを創った事を後悔させてやるんだ!!待ってろよロキと創造主め!!)
激しく憤る心の奥底で、信康のサイコさんがロキと創造主宛に、手紙を書いていた。
ー 拝啓 ロキと名も知らない創造主へ
僕はサイコの信康です。
名も知らぬ創造主、貴方のおかげで僕は、とても苦労をしてます。
其れとロキ、貴方が意味も無く多くの無駄でクソなアイテムを創って残した事で、更にしなくて良い苦労が増えました。
其の御礼に、お2人にタップリと恐怖と言う仕返しをさせて貰いますね!
必ず会いに行きますから!
そして必ず後悔させますから!
今から会いに行くのが凄く楽しみです♪
お2人も、僕が会いに来るのを楽しみに待ってて下さい。
では其の時が来るのをお待ち下さいね…。
サイコの龍野瀬 信康より ー
サイコさんが書いた手紙とは、信康の復讐リストなのでした。
果たして、サイコ信康の復讐は成就出来るのでしょうか…?
第70話 拝啓ロキ様… 完
羽の生えた人参、バネに足が生えてて、ナッガイ鼻毛を3つ編みした鶏、短足の麒麟、強いて言えば、七面観音とでも言っておきましょうか…。
ロマンの変化の基準は、一体如何成っているのでしょうかね…。
僕は、こう言うの好きです。
では次話を…。




