信康とロマン編 3
結構間を開けての最新話です。
サブタイトルを見て?と成ると思いますが、内容を読めば成程と思って頂けると思います。
では如何ぞ、最新話スタートです。
第66話 天竺
風と一体化して、ロマンによって分割された本体の1つを探しに、最初に降り立った地ギリシャから、中国へと向かう信康。
歩いての移動よりは断然早くて楽なのだが、距離が長過ぎるのと、幾つもの山や山脈を越えなければいけない。
途中には砂漠も有り、吹き荒れる砂嵐には、風と一体化していても砂の粒がヤスリの様に信康の魂を削り、かなりのダメージを負ってしまう。
防御膜を張って仕舞えば、其の分コントロールや使用エネルギーが増えてしまい、目的地に着くのが難しくなってしまうから、使用するのを控えていた。
ロマンに移動を頼めば良いと思うのだが、何せ面倒臭がりなので、何度も頼んでしまうと此処ぞって時に臍を曲げてしまい、役に立たないと思い躊躇ってしまう信康なのだ。
其れにロマンには、この旅を少しでも楽しいと思って欲しいとも思う信康。
何故ならば、永い年月を孤独に耐えて来たのに、やっと現れた念願の主人と共に使命を全うするだけでは、耐えて来た永い年月の報いが、其れでは報われないと思ったからだ。
手の負えない駄々っ子のロマンだが、兄?として接すると決めたからには、しっかり弟?として守ってやらなければという思いから、目的の地へと歩を進めて行く。
風と一体化を解除してから、ただひたすら目的地に向かい歩く信康。
魂の状態だから疲れは感じないが、権也の時と同じこの世に干渉力を持つ魂の魂力は、砂嵐に削られる事で其の魂力の疲弊により、息を切らしながら何度も砂山に倒れてしまう。
「グッ…クフゥ〜……。はあ〜砂山登りも…魂の状態でも疲れるなぁ〜…」
(…………)
「ふぅ〜…一息付いたから、先に進みますか…よいしょっと…」
(…………)
ロマンは黙ったまま、信康の行動を見ていた。
自分だったなら、面倒だからと使えるモノは全て使って、楽をしようと思うのに、何故信チョは其れをしないのだろうと…。
自分が信チョだったなら、確実自分を使って空間移動をするのに、其の方が楽だし安全なのに何故其れをしないのだろう…。
其れがとても不思議に思えていた。
ロマンが不思議に思えていた時、信康がやっとの思いで砂山を登り切った瞬間
ゴオォォォォーーー
背後からの強烈な砂嵐が信康を襲う。
「ガアァッ!ウアッ!」
今迄より強烈なヤスリで魂力を削られる信康。
「アアァァァーーーッ!!」
堪らず叫び声を上げながら、砂嵐の突風に飛ばされてしまう。
肉体の無い魂だった為、かなり飛ばされる信康。
砂山に何度かバウンドしながら転がり落ち、止まった先でピクリとも動かなくなる。
(信チョー!!)
流石に生きた心地がしなくなり、信康に声を掛けるロマン。
(信チョ!信チョ!信チョ!)
「…………」
(信チョ!!信チョ!!信チョーー!!)
「………あぁロマン…如何したんだい…そんな大きな声を出してさ……」
(如何したんだいって何言ってるの!如何してそんな無理するの!?)
「……無理…してないよ…へへっ…大丈夫…コレくらい…」
(何言っとるんよ!このバカチョ!全然大丈夫じゃ無いじゃ無いの!)
「ハハ…まさかロマンが僕の心配してくれるなんてね…」
(失礼な!当たり前でしょーが!幾ら面倒臭がりでも大切な主人何だから心配するっての!)
「フフッ…ありがとう…。でも本当大丈夫…だから…さ…」
(何強がり言ってんの!このバカチョ!信チョに何か有ったら、後々ワシが面倒でしょーが!)
「……コイツ…ブレないなぁ…。フフッ…ハハッ…でも其れでこそロマンだよね…」
(〜〜〜!…ふぅ…取り敢えず今日は此処で休も?ワシがこの砂山を改良して、休憩出来る様にするからさ、魂の回復しないと…)
「……うん分かった…其うさせて貰うよ…。悪いけれどお願いするね…」
(其れくらい任せてちょ〜!だからしっかり休んでおきなされ〜)
「うん…ありがとうロマン…」
(面倒臭いがエ〜ンやコ〜リャ〜♪)
「ブフッ何だよ其の歌…」
(あれ?日本人って、エ〜ンやコ〜リャって付けて歌うんでしょ?違った?)
「其れ何時の時代のデータだよ!…其れに毎回面倒臭がってさぁ…。マジブレないロマンだよなぁ〜…」
(フヘヘェ〜!我が道一直線だからねぇ〜♪あらヨッと〜)
「…………」
(さぁ出来た出来た〜♪信チョ、パパッと休んじゃえ〜!)
「フフッ…まさかロマンにこんな一面が有るんだとは思わなかったよ…」
(あらまた失礼な!ワシにだって主人を思う気持ちは……有る?…ん?…あれ?…有ったのかな?…まぁ面倒だから良いかなぁ〜…)
「コイツ…ったくブレないよな…。まぁ照れ隠しって思っておくよ…。ありがとうロマン…」
信康に照れ隠しだと見抜かれたロマン。
前回の一件により、少しだけ、信康を見る目が変わったロマン。
更に、自分を気遣っての行動だと、流石のロマンも理解していた。
だから、面倒だと言いながらも信康の為に、少しでも気を使う事にしたのだった。
(このワシが?照れ隠し〜?フキャキャ!何面倒い事言ってるの〜?正に其の通り!ありがたく思ってちょ!)
コイツは…と思いながらも、信康は余計な一言を言わずにはいられないのだなぁ〜とも思ったのだ。
其の一言が無ければ、もっと上手く世渡りも出来るのに、何故か其の余計な一言が無いと、ロマンらしさが感じられないとも思えて複雑ながらも、段々とロマンの性格にハマって行く。
ほぼロマンの性格を把握した信康は、今後、ロマンを如何扱えば良いのかも理解し始めていた。
試しに
「ねぇロマン…」
(何じゃらほい?)
「今造ってくれた砂の休憩所なんだけれどさ」
(ん?)
「少しだけ、遊び場の有るカマクラみたいなのに出来る?」
(!!遊び場!?)
「うん其う遊び場。後出来たら、回復しつつ何か楽しめたらって思ってさ、其うすればロマンも僕が回復してる間、暇をもて遊ばないだろ?」
(!!うんうん!!其れ良い〜!ワシ其れ大賛成!張り切って造るから〜!任せてチョ〜!)
チョロい…。
其れが信康の正直な感想。
手に負えない駄々っ子ロマンだと思っていたが、遊びを付け足せば何とかコントロール出来る事が判明。
後は面倒臭いと思わせない様に、気を付ければ良いのだとも思うのだった。
(あっそび場あっそび場♪……ん?どんな感じの遊び場造ろう……)
ん?何だかヤバい雰囲気に成りつつ有るぞ…。
(チッ…アレやコレを考えるの…)
「なぁロマン!ロマンの好きな遊びって何?」
面倒いが発動しそうになった為、慌てて其う聞き出す信康。
(ワシの好きな遊び?…う〜んドンブラこっこ?)
「ん?何其れ…」
素で分からない信康。
(えっとね、足場の悪い船に乗ってさ、落ちそうで落ちないのをヒヤヒヤしながらドボーンってヤツ)
「はっ?」
(アレ面白いんだよねぇ〜!よくカンちゃんと巫阿燐でやってたのよ〜)
「ん?巫阿燐?」
(あっ阿沙ッパの宝具の名前〜!)
「ブフッ…阿沙ッパ……ブァハハハハハッ!アッハハハハハハハハハハハッ!阿沙…阿沙ッパ…アッハハハハハハハハハハハハハハハハッ!其れ…其れ良い!」
(はて?そんなに面白かった?)
「ハヒィ〜ハヒィ〜…う、うん…マジ僕のツボだったよ…」
(其うなの?まぁ面白かったなら良いかぁ〜)
「あっでもさ、其れ阿沙華には直接言ったら面倒臭い事に成るから、絶対本人には言うなよ?」
(エッ?其うなの?…面倒いならOK〜!言わない)
「其うしてくれよ〜!…ブフッ…でも阿沙ッパ…ブハハハハハッ!阿沙ッパ〜!ナイスネーミング!アッハハハハハ!」
(何かよく分からないけど、面白いなら良かった〜!取り敢えず一緒に笑っとこ〜!アキャキャキャキャ〜)
変な笑い方をするロマンに、本当変なヤツだと思うが、ほぼ把握したロマンの性格は、猫の様に思えて来ていた。
其れでいて気を許した者に対して、とても人懐っこいのだとも思えて、あれ程面倒臭いヤツが自分の守りしモノで残念な気持ちに成っていたのに、今はロマンが自分の守りしモノで良かったと思えて来ていた。
更に兄?として、しっかり弟?ロマンを守らなければとも思う信康。
そんな事を思っている間に、ロマン特製遊び場の在る休憩所が完成する。
(信チョ〜!出〜来た〜よ〜ん!如何?)
嬉しそうに、そしてドヤ感満載で聞くロマン。
完成した休憩所を見た信康は
「……へっ?」
(ん?如何したのよ信チョ?)
「なぁロマン、この遊び場…って…如何やって遊ぶんだ?」
(えっコレ?)
「うん其う…」
(コレねぇ〜、昔カンちゃんと巫阿燐とさぁ〜、よく封印解いて抜け出した時に遊んでたヤツでさぁ〜、タララッタラァ〜ン冒険ゴッコ〜!)
「おいちょっと!其の言い方止めろ!何か色々と触れそうだからさ!」
(?)
「?じゃ無いよ!せめて伏せ文字風に言うか、ピー入れろよな!」
(信チョが何言ってるか分かんない…。でもまぁ良いじゃない、面倒だから…)
ハァ〜…と思う信康。
「で、其の冒険ゴッコってのは、どんな風にしたんだ?」
(え〜っとね、ワシ達が至所に出向いてさ、宝探しの冒険とか、悪モノ退治する遊び)
「へぇ〜其れ面白そうじゃん!」
(でがしょ〜?結構面白いんだよね〜!)
「悪いけど、未だちゃんと回復してないからさ、教えるつもりで、どんな風に遊んでたかを実際にやってみてくれないかな?」
(良いよ〜!)
嬉しそうに応えながら分身体を3体出し
(こんな感じでやってた〜!)
と、分身体を操作する。
(此処の砂漠でやってたの、凄く懐かしい〜)
其処で“?”と成る信康。
「この砂漠で?」
(其う!)
何故信康が“?”と成ったのかというと、操作された分身体が演じてたのは、如何見ても西遊記の悟空、沙悟浄、八戒だったのだ。
其処に更に分身体を1体出し、其れも操作する。
其の1体が、悟空、沙悟浄、八戒だと思われる分身体を叱り付け、砂漠を其の3体を引き連れて行進するのだった。
「完全西遊記じゃん!」
信康のツッコミ。
(?)
「?じゃ無いよ!コレ、僕達の良く知っている西遊記って話何だけど、まさか其の話知って真似したのかよ!?」
信康の疑問はもっともだった。
(ん?言ってる意味分かんないんだけど?)
「ハア?だから西遊記ゴッコ何だろ?」
(何其れ?)
「…エッ?…知らないのかよ…」
(信チョが何言ってるのか本当分からないんだけれど、この冒険ゴッコは八千年近く前の事だよ?)
「八千年!?……確かに何時頃作られた話なのかは分からないけど…エッ?もしかして…コレが本当なら…西遊記の原型ってのは…」
(マジ何言ってるの?)
「ちょっと確認したいんだけれどさ、途中怪物とか退治したり、巻物貰ったりした?…」
(エッ?何で分かったの?)
「!!…マジかー!!」
(今もだけれどさぁ、あの時代にはメッチャ強い化け物とか怪物多くてさぁ〜、冒険ゴッコしながら退治してたんだよねぇ〜。其うしたらさ、神音が“何勝手に封印解いて遊んでるんだ”って言ってさ、連れ戻されてたんだよね〜。で、創造主に反省文を書く為の巻物貰いに、他国の王族に会いに行ってたりしてたんだよね〜)
「マジか……」
思いもよらない所であの有名な話の元は、ロマン達が行なっていた遊びだった事を知る。
(あの当時ってさぁ〜、紙を使えるのは王族だけだったんだよね〜)
「エッ…何でさ?…」
(自然と共同体が当たり前の時代だったからね、色んなモノに記憶が残るから、文字を書く事とか必要無かったのさね。紙に文字を書いて記録するのは、王族の決めた法とか異国との条約を残す為だけだったから、王族のみが使用してたのですわ。で、創造主にちゃんとした反省文を残す為に貰いに行ってたって感じ?)
あぁ懐かしいなぁ〜みたいな感じで説明するロマン。
「ハ…ハハッ…」
呆れて渇いた笑いしか出て来ない信康。
(う〜〜ん飽きた!メッチャ飽きた!…ねぇ信チョ、ワシも疲れたからちょっと寝ても宜しい?)
自由過ぎるロマン。
「…あぁ良いよ…」
何だかドッと疲れてしまい、相手をするのが面倒になった信康。
自身も未だ回復しきれて無い事も有り、2人で眠る事にするのだった。
[良かった…ちゃんと眠ってくれてる〜。多分信チョって、ワシの事が気になってしまって、ちゃんと寝たりしないだろうもんね〜…。今はグッスリ寝てちょ〜…]
自由気ままで末っ子の面倒臭がりのロマンだが、信康の事を自分の大事な主人だと思っているのだ。
自分でも分かっている、末っ子根性で面倒臭がりで有り、我儘ばかりを言っているのに、其の性格を文句を言いながらもしっかり受け止めてくれる信康に、今迄感じたことの無い安らぎを味わい、とても嬉しく思っていた。
同じ宝具達も、此処迄受け止めてくれた事が無かった。
自分を創った創造主にも呆れられたのに、信康だけは違ったのだ。
其れも含め、ロマンにとって信康は、掛け替えの無い存在に成りつつ有ったのだ。
スヤスヤ眠る信康を分身体から見ていた時に、ロマンのセンサーが反応するのだった。
[このバカタレ共!信チョがやっと眠ったのに、何しに来てんじゃい!面倒臭い事しよってからに〜!!ブチのめしたる!!]
ロマンは信康に気付かれぬ様に、ほぼ完璧な防御結界を休憩所に張り、分身体を出して乗り移り、未だ遠くに居る怪物達の元へと向かうのだった。
(このボケッチ!人様の寝込みを襲おうだなんて怪物のする事か!!恥を知れ!!)
いやいや相手は怪物なのだから、恥なんて有る筈が無いと思うのだが…。
(こんボケッチ共!クタばりやんせ!そりゃ〜〜!!)
面倒臭がりだとは思えない程の集中力で、威力を高めた火炎流星群を放つ。
しかも其れを連発するのだった。
全ての火焔流星群がヒットし、空を真っ赤に染める。
轟音の中から怪物の悲鳴が聞こえるのだが、煙幕が晴れた時に中にはほぼ無傷な怪物達が居たのだった。
(!!)
本体を未だ得て無いが、かなり力を込めた火焔流星群だったのだが、ほぼ無傷なのはおかしいと、ロマンは驚いてしまうのだった。
怪物を倒せないとは思ってはいたが、何故ほぼ無傷なのだ?と考えていたら、怪物の足元に1体の瀕死状態に成っている怪物が居た。
如何やら知恵が有るみたいで、1体の怪物を犠牲にして、残りはロマンの攻撃を避けた様だった。
(マジ面倒!何なのよ!よくお仲間ッチを犠牲に出来るもんだよね!考えられないっての!大人しく仲良くワシの攻撃喰らってなさいな!このバカッチ達がぁ!ああ〜面倒だよ〜!マジ面倒〜〜!!)
再度、更に威力を増した火焔流星群を撃ち放つが
(!!ウソ…そんなの有り?…)
ロマンがウソだろ?と思ってしまう行動をとる怪物達。
其の行動とは、瀕死の怪物をまた犠牲にし、残りの怪物達が合体し始めたのだ。
犠牲になった怪物は、キラキラと昇天しようとしてたのをすかさず取り込むロマン。
(アンタ等には悪いけど、勝手に昇天させんよ?ワシにした事の報いはちゃ〜んと受けて貰わな納得出来ね〜モン!アンタ等の力使わせて貰うかんね!)
今のロマンだけでは、合体して更に強力に成った怪物を相手にするのが厳しいと、其う判断したのだ。
だから有無を言わさずに、強制的に解放された魂達の力を躊躇無く使うのだ。
(そりゃぁ〜〜!コレでも喰らえ〜えぇ炎!)
超高温の針を数千と作り、怪物に四方八方から浴びせるのだった。
超高温の針が撃ち抜いた場所から昇天して行く魂達。
其れをすかさず、更に取り込むロマン。
同じ事を繰り返して行くが、合体した怪物には然程ダメージを与えられない。
其れでもやっと休んで魂の回復をしている信康の為に、頑張るロマンだったのだが、遂に怪物の口から放たれる咆哮のエネルギー弾を喰らい、大ダメージを受けてしまうのだ。
(痛いよ!何してくれてんのよ!アンポンタン!このバカチョンチョン!…はぅ…グテ………)
力尽きそうに成りながらも、言い返す力は残っていたみたいだ…。
ロマンは分身体にほぼ全ての思念体を移していた為、此処で怪物に消されて仕舞えば宝具本体の力も失われ、信康を守る事が出来無くなる。
其れは後々不味い事だし、面倒だと思うロマン。
だがこれ以上如何する事も出来そうに無い。
[信チョ〜ゴメンよ〜…ワシ…此処迄かも知れんですわ〜…ゴメンチョ〜…]
何時ものブレないロマンらしかぬ事を思っていた時
「このバカ!何1人でピンチに成ってるんだよ!僕の為だとしても勝手な事するな!」
ロマンを叱り付ける信康が現れた。
其れと同時に
「爆轟炎覇!」
を怪物に放つ。
爆轟炎覇を放って直ぐ
「炎填火舞!」
の技を仕掛ける。
この技は、演舞を舞う様に炎の種を打ち付け、体内から着火させる技なのだ。
爆轟炎覇では倒せないと分かり切っていた信康。
何故ならば、ロマンの攻撃が効かなかったのを見ていたからだ。
爆轟炎覇に勝るとも劣らないロマンの攻撃だったのに、余りダメージを与える事が出来て無いので、より確実にダメージを負わせる炎填火舞を選んだのだ。
其れでも効果は無いだろうと思い、念の為に更に強力な術
「竜炎翔!」
を放つ。
この術は、炎の竜が敵を絡め舞い昇るモノで、敵を締め付けながら焼き尽くす術なのだ。
「このバカロマン!お前にもしもの事が有ったら僕が如何思うか分かってんのか!」
(あぅ…ゴ、ゴメンなさい…)
「ゴメンじゃ無いよ!本気で僕怒ってるんだからね!」
(……はい…)
「本気で心配したんだぞ…?あぁ…でも助かってくれて良かった…。マジ…心配したんだから…」
信康の目から、涙が溢れていた…。
「怖かった…怖かったよ…。ロマンが消えて仕舞うと思うとさ…。マジで…嗚呼ぁ…怖かった…嗚呼あぁ…」
本気で心配していた信康が、安堵して泣く姿を見たロマンは
(ゴメン…ゴメンチョ…本当にゴメンなさい…)
心から反省して謝るのだった。
「こんな事…もう2度とするなよ!?」
(うん…分かった…信チョ…)
「ふぅ…其れならもぅ良いよ…。でも次は本当に無いから!同じ事したら、面倒い事させ続けるからな!良いか!?」
(……其れは勘弁〜!ゴメンなさ〜い!面倒は嫌〜!マジマジマジ許してチョ〜よ〜)
許しをこうロマンの言葉のチョイス。
本当に反省してるのか?と思う、相変わらずなブレないロマンに信康は
「ったく…何処迄もブレないヤツめ…。まぁ取り敢えず無事で良かったよ。後は僕が対応するから、お前は指輪で休んでな?」
(えっ…でも未だあのバカチョンチョン倒せて無いよ?信チョ1人じゃ…)
「大丈夫!今の攻撃で半分以上はダメージ与えたし、其れに救援も来るからさ!」
(救援?)
「ロマンには悪いけど、神音との通信のやり方見て覚えたから、攻撃してる時に父さんに助けを求めたんだ〜」
(はぇ?…ウソ…マジ…?)
「マジマジ!」
(信チョアンタ、何サラッと凄い事してんの!)
「ヘヘヘッ。だから後は安心して休みな?良い?」
(……分かった!信チョの言う通りに休ませて貰うちょ〜)
「ハハハッ其うしな〜。其れじゃ父さんが来る迄アイツの相手してるから、ゆっくりしててくれよ?)
(ほいほ〜いさ〜!お言葉に甘えて〜んお休み〜♪)
「ハハハッ」
ロマンの分身体から分離し、指輪の中に戻って眠るのを確認した信康。
「ヘヘヘッグッスリ寝たよ…お休みロマン…。さてと、悪い事しちゃったかな…ウソ付いたの…」
実は信康は聖司に救援を頼んではいなかった。
神音との通信何て、出来る筈が無かった。
だって見てないのだもの…。
記憶が無くなる時でも、洞察力の良い阿沙華を騙し続けた信康だからこそ、単純なロマンを騙せていたのだ。
「ロマンの攻撃が有ったから、何とか半分以上はダメージ与えられたから、後は工夫次第だね…。まぁ何とか成るでしょ…」
楽天的な性格の持ち主でも有る信康。
其れは全て洞察力と解析力がズバ抜けているからでも有るのだ。
物事を先読みし、幾パターンものシュミレーションをして、其の上予測通りに事を進める事が当たり前に成っているから、楽天的の一面をも持っている。
今回も先読みして、信康の中では既に勝利が確定しているのだった。
今の怪物では脱出不可能な結界で動きを止め、砂漠の砂を超高温の炎で溶かし、結界内に注ぎ込んで行く。
マグマの簡易版を意図も簡単に作り出す、信康の戦闘センス。
臨機応変に、其の場で対応して行けるのが信康の強みなのだ。
結界内に満たされた簡易マグマを冷却の術で冷やして固め、其の後金剛撃を繰り出し、冷え固まったマグマを破壊する。
破壊されたマグマから、キラキラとした光の粒が舞い上がる。
何だコレ?と思う信康だったが
(バカッチ共!なぁ〜に勝手に昇天しようとしてんのよ!)
と、ロマンが昇天をさせずに留まらせる。
「うわぁ!ビックリした!…ロ、ロマン…お前何時起きたんだよ…」
(エヘヘェ〜、初めから寝て無い休んで無い遊んで無いのさね〜)
「えっ…」
(オヒョヒョ〜♪まんまと騙されたね?信チョ〜ん?)
「騙された!?エッ…ウソ…マジかよ…」
(ウッヒャッハッハッヒャ〜!信チョがワシを騙したの分かってたからね〜、騙し返しなのよ〜ん!ウヒョヒョヒョ〜ン)
「マジかぁ…」
(如何?ワシの演技もなかなかじゃろ?)
「……あぁ…其うだね…この僕が騙されるだなんてね…。でも何で僕が嘘付いた事分かったのさ…」
(そりゃ分かるわな、神音との回線は宝具達だけの特殊回線何だもの。創造主とワシ等以外でコノ回線使える存在は、余程力の有るモノじゃ無きゃ先ずムリ!幾ら解析力の有る信チョでもね〜。其れ程複雑なモノ何だから〜。其れに信チョが勝手に回線繋げられたとしても、神音がワシに何も言わない筈が無いもの)
其の説明に納得して仕舞う信康。
ロマンを心配する余り、神音の性格を忘れていたのだ。
「騙してゴメン…謝るよ…」
(なぁ〜に言ってるのよ信チョ〜?ワシも騙したんだから、お互いお互いよ?様さまよ?)
「…アハハッ確かに其うだよね。でもやっぱりゴメン…其れにありがとうロマン…」
(恥ず!改まられると恥ず!メッチャ恥ず!…でもワシもゴメンチョ…そんでありがサンキューなのですわ〜)
「ブッ…ロマンお前…少しはまともな話し方出来無いのかよ?其のブレない所、呆れるよ…アハハッ」
(唯我独走だからね〜!)
「其れを言うなら唯我独尊だろ!何1人で走ってんだよ!」
(シャッシャッシャッだね〜。あっ所でバカッチ共!面倒いけど保護しちゃるから大人しくワシの中に居なさいな!其んでもって各自、信チョの魂が何なのかをしっかり理解しなさいよ!分かった!?)
有無を言わさず、強制的に回収するロマンに
「なぁロマン、其の昇天とかキラキラしたのは何なんだよ?」
(エッ?分からないの?…)
「分からないから聞いてるんじゃ無いかよ!」
(えぇ〜〜…面倒臭〜い…)
「!!このっ!…まぁいっか…僕も聞くの面倒臭く成ってきたよ…」
(あっ!何其れ!寝て無い休んで無い遊んで無いワシに、労いも無しでそんな事言う!?……あれっ?其う言えば遊んで無いなぁ〜…)
あっコレはとても面倒臭い事に成り其うだと思う信康。
案の定
(ああー!!遊びたい遊びたい遊びたーーーい!!)
と騒ぎ始めるロマン。
やっぱり思った通りに成ったぞとため息を吐く。
(あっそぼ〜!あっそぼ〜!今直ぐあっそぼ〜!)
「おいおいおいロマン、今は2人共休まないと…」
(えぇ〜!!)
「えぇ〜じゃ無くて、マジで休まないとダメだろ?何せ2人共ダメージ残ってるんだからさ…。其れに万全じゃ無いと、遊んでても面白く無いだろ?」
(……確かに…)
「其れじゃしっかり休もうか?遊びは回復してから遊ぼうなぁ〜。先ずは砂のカマクラに戻ろう…行くよロマン」
(ホイホ〜イ!!)
駄々っ子ロマンを何とか丸め込む事に成功する信康は、クタクタだよと小さくボヤクのだった。
駄々っ子ロマンの相手をするのは疲れると思いながらも、お互いの事を思い遣る事が嬉しい信康。
ロマンも上辺では無く、自分の事を本気で思ってくれる信康の本心を知り、永い時の中で初めて安らぎを感じたのだ。
そして絆も揺るぎないモノなのだとも感じるのだった…。
第66話 天竺 完
如何でしたか?
ロマンとの絆が段々と強く築かれて来てる話に成りました。
では次話をお待ち下さい。