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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
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弥夜とシルバ編 3

先に言います。

今回なの話の流れ、何時もと違います。

では本編を如何ぞ〜。

第59話 愛しの使者


弥夜とシルバが、保護した魂達に有る意味優しく接していた頃、滑稽なセリフを残して逃亡したザネは、とても小さな異空間にて荒れていたのだった。

其の異空間は、ザネが自ら作った異空間で有り、異空間で在りながら城の形をしていた。

ザネは異空間に創ったこの城がとても気に入っていたのだが、弥夜から受けた屈辱により、暴れて破壊しそうになっていた。

「クソがぁーー!!何故俺様があんな小汚いババァなんかに、良い様に弄ばれなくてはならん!フザケルナー!!許さん!許さんぞ!許してなるものかあー!」

限界を超えた怒りにより爆破してしまい、折角気に入っていた城の形をした異空間を破壊してしまう。

其の時

「あああ…俺の…俺の自慢の城が…。コレも全てはあのババァのせいだ!クソがぁー!!」

と、自ら壊したのに、弥夜のせいにしてしまうのだった。

そうやって、全ての嫌な事を弥夜のせいにする事により、少しだけ冷静さを取り戻し、気持ちを落ち着かせる為、また1から異空間を城の形に創り直すのだった。

怒りの元の弥夜を葬り去りたいザネ。

何としてでも葬り去りたい理由が有ったのだ。

其れはザネが使者に褒めて貰いたいと言う事と、其れとは別にもう1つ…

「このままだとお叱りを受けるどころか、愛しいあの方に抱かれないでは無いか!…あの方の甘美な抱擁が欲しいのに…クソッ!…」

ザネが言った抱かれたいとは、文字通りのモノなのだ。

何故ザネが、キモネム星人や陰険と迄言われた使者を恋焦がれて抱かれたいと求めてしまったのかは、ちゃんとした理由が有ったのだ。

実は使者が使役している魂の中で、善なる魂達ばかりでは無く、平気で人やモノを傷付ける事に喜びを持つ魂達も多く存在している。

そう言った悪意に満ちた魂を(コア)として、思考する怪物を創り上げたのだった。

だが悪意に満ちて自ら自由に行動出来るモノに、自分の意のままに出来るとは思わない為、使者に対して敵意を持ったりした時には直ぐ消滅させる事は出来るのだが、其れをするとまた1から創り直さなくてはならい。

そんな手間を掛ける気は無く、其れならばと怪物を創り上げる時に、使者に抱かれる喜びを味合わせる特殊な種を植え付けていた。

其の種は使者に抱かれる度に芽を出し大きく成長して行く。

成長すればする程抱かれたい欲求が強くなり、更に力が増すのだった。

他にもやり方が有る筈なのだが、使者はこのやり方を選んだのだった。

何故其れを選んだかは使者本人にしか分からない筈なのだが、使者自身も今は分かっていない…。

そして()()に創られたザネは、既に何度も使者に抱かれていたのだ。

だからザネは、使者に抱かれたくて仕方がなかったのだ。

使者に抱かれた時の事を思い出し、恍惚としながら異空間に城を創っていた時

「何だい、未だ始末出来て無いのかい?」

ザネに声を掛けるモノが居た。

突然声を掛けられて驚くザネ。

「貴様、何故此処に居る!?」

「そんなの別に良いだろ?気にするなよ」

「気にするなと言われて、そうだなと言える訳が無いだろうが!」

「そうカリカリするなよザネ兄さんよ…。如何せあの方に抱かれた時の事を思い出してたんだろ?恍惚な顔をしていたからなぁ〜フハハハハッ」

「何だと貴様ー!俺とあの方の聖なる行為を愚弄するのか!許さんぞー!」

「ハッ!其れはコッチのセリフだ!あの方に抱かれて良いのは私だけ!ザネ、貴方には勿体無いわ!」

「何だとー!!貴様!今この場で殺してくれようか!」

「ハンッ!受けてたとうじゃないか!」

「後悔するなよ!死ねえ!」

ザネは渾身の力を込めて、罵ったもう1体の新たな怪物を攻撃する。

「ギャアアア!」

ザネの強力な打撃に、呆気なく半身を消滅される新たな怪物。

まかさこれ程も力の差が有るとは思ってはいなかった様だ。

其の為、意図も容易く半身を消滅された事に、一瞬で恐怖する。

「口程にも無い!さぁ約束通り、消し去ってくれるわ!」

「ヒィ!…」

其の時2人の間に稲妻が走り、ザネは攻撃する事が出来なかった。

「お止めなさい2人共…」

「何だ!?お前迄こんな所に来るとは!…まさかお前迄俺を愚弄しようと思って来たのか!」

「ふぅ…そんな事有る筈がないでしょう…。少しは冷静になりなさい…。バネ、貴方は1番最後に創られたのだから、力の差は歴然でしょう…。必要の無い事で折角あのお方が創ってくれたのに、其れを台無しにしては失礼でしょう…。ザネも其の直ぐカッとなるのを抑えなさい。こんな小物でもあの方の作品なのだから、勝手に壊してはお怒りになられるわよ?」

「「!!」」

2人は新たに現れた怪物の言った内容に言葉を失くすのだった。

ザネは使者の怒りを買う事に恐怖して、バネは小物と言われた事に悔しさと怒りで無言になる。

「確かにそうだな…。アネよ、其の助言に感謝する」

「そんな事は別に如何でも良いわ…。ただ助言をしに来たのでは無い事くらい分かっているわよね?」

「!?な、何だと!?では一体…」

「忠告よ…。いや違うわね、伝言だったわ…」

「伝言!?…其れは誰から…まっまさか!あのお方からなのか!?」

「そうよ…」

「其れは一体どんな内容なんだ!?あの方が俺を労ってくれているのか?」

「貴方何を聞いていたの?そんな嬉しそうな顔をして…。残念ながら違うわよ。先程忠告と言い間違えた事分からなかった?」

「!!」

アネの其の一言に、震えが止まらなくなるザネ。

其の姿を見て嬉しくなるバネ。

「ア…アネよ…あのお方は一体何と…」

震える声。

「ガッカリだと言ってたわ…其れに情け無いともね…」

「そ…そんな…そんなバカなあぁーー!!アアアーーーッ!嫌だ!嫌だあーー!クソッ!クソがぁーー!」

このままでは見捨てられてしまう。

ザネはそう思うと恐怖と焦りを感じ、青褪めながら泣いて気が狂いそうになってしまうのだった…。

其れ程に迄使者に陶酔し、恋焦がれてしまっていた。

其れも其の筈、1番多く使者に抱かれていたのだから…。

実の所、ザネは最初から抱かれる事が嫌では無かったのだ。

使者の中で使役されていた時、自分以上に執念を持って、始まりの聖司達から五千年もの永き時を掛けて弄ぶ使者の悪行に、何と素晴らしいのだと共鳴し、憧れていたからだった。

だから最初に使者に抱かれる時には、嬉しいとさえ思った程なのだ。

其の後抱かれる度に、憧れがいつしか敬愛に、敬愛から親愛に、そして使者の為だけに全てを捧げる純愛へと変わっていったのだ。

他人からすれば其れは、歪な愛情にしか思え無いのだか…。

ちなみにザネ達には性別は無い。

ただ(コア)となる元の魂によって、男性型か女性型に分かれるだけなのだ。

形を育生するにあたって、其の他の魂の配分によっても、若干の違いが出てくるだけなのだ。

なので基本性別が無い。

ザネは言わなくとも分かると思うが、(コア)は男性で、魂の配分も男性が多い。

バネは女性が(コア)なのだが、配分された魂が男性の比率が多い為、ガサツな口調や性格をしていた。

アネは完全に女性。

従順だとは言え、正直思慮が充分では無いザネを見て、しっかりと物事を考える事が出来る様にと、女性をメインに創られたのだった。

其れを知らないザネ。

この様な感じで、多くのタイプの怪物が誕生したのだった。

物事を冷静に見れるアネが

「ザネ…良い加減落ち着きなさい。あの方がまたガッカリされるわよ?…何せ私達の目を通して、全てを見られてるのだから…」

其の一言でハッとするザネ。

これ以上失態を見せる訳にはいかないと、やっと少し冷静さを取り戻すのだ。

叱咤されるのは良い…。

たが、抱かれなくなるのだけは回避したい其の1点だけで、ザネは気持ちを落ち着かせた。

「アネよ、今度こそ助言に感謝する…。あの方の為にも今は1人、策を練るとしよう…」

「そうね、其れが良いでしょう…。其れじゃ私は行くわね、貴方も何時迄不貞腐れていないで、与えられた仕事しなさい?行くわよバネ」

「チッ!分かったよ…。其れじゃなザネ!」

そう言い残して直ぐ去って行くバネ。

「ちょっと待てアネ、お前達の仕事とは何なのだ?」

「其れは別に聞かなくても良いじゃない。其れじゃ本当に行くわ…ではね…」

そう上手くザネの質問をはぐらかして去って行く。

アネが去った後完全に気配が無い事を確認し

「ふざけるな!俺様に指図しやがって!忠告は有難いが、いまいち信用がおけん!…まぁ今の所俺の付けた監視装置には気付かれては無い様だから、お前の仕事とやらをコッソリ見させて貰おう…」

実はアネがバネに話をしている隙に、コッソリと極小のカメラの様なモノを取り付けていたのだった。

其れを脳内で直接受信する事により、アネの仕事内容の把握や、アネが手柄を上げる前に妨害をしようと考えていたのだった。

ザネは監視をしながら、今は破壊してしまった城を創る事に専念する。

其の城は、使者との逢瀬の場として使用する為に、使者の好みに合わせて創られて行く。

恍惚と使者に抱かれるのを妄想し、其の為に弥夜をどの様にして葬るかを考える。

更にアネの妨害をして手柄を横取りし、誰よりもお前は優秀だと使者に褒めて貰い抱かれたいザネ。

如何にかして弥夜とアネに、其れとバネを纏めて葬れないかと画策するのだった。

何故アネとバネを葬りたいと思ったのかと言うと、他にも思考タイプの怪物はいるのだが、1番煩わしく思えるのがアネで有り、何かとちょっかいを出して来るバネには辟易していたからだ。

アネに言われた通り、ザネ自らバネを消滅させるのは簡単なのだが、其れをしてしまえば使者の怒りを買い、捨てられる恐れが有った。

だから尚更、弥夜と同時に葬る事が出来れば、使者の甘美な抱擁を独占出来ると思ったのだ。

何とも浅はかなザネ。

自分の欲望に素直な事は良いとしても、アネに指摘された様な思慮が全く足りない。

何でも思い通りに成るモノなのだと勝手に確信してしまっているから、弥夜を軽視し過ぎていて痛い目に有ったのだ。

其れなのに、其の事をすっかり忘れている残念なザネ…。

既にザネの頭の中では、弥夜とアネにバネを同時に葬り去る事が確定しているから、今はゆっくりと城を創る事に専念するのだった。

愛し恋焦がれる使者に絶頂を味わって貰い、自分も絶頂を味わう、ただ其の事が今のザネの全てなのだった。

其の全てを遠く離れた異次元に居城を構えて見ている使者。

「ほとほと情け無い奴だ…ザネは…。アレでは次も上手くいかぬな…。だが…アレだけ私の事を想い、求められるのは悪くは無い…。抜けてはいるが、何処か憎めぬ奴では有る…。私が創ったからとは言え、愛おしく思えてしまうのは、ザネの良さなのかも知れぬな…フフフ…」

そう呟いて居城の奥底に在る部屋へと向かうのだ。

其の部屋から、使者を求める多くのモノの声が聞こえてくるのだが、其の声は遠く隔てた異空間のザネに届く事は無かった。

使者との逢瀬を夢見ながらザネは、弥夜とアネにバネを葬る策を練る。

其の為にも先ずはアネの情報が欲しい…。

脳内に今現在のアネの様子を映し出す。

見えて来たのは、弥夜に気付かれない場所からアネが弥夜を観察していたのだ。

何をすることも無く、ただ弥夜をジッと観察して動こうともしない。

「何だ?アイツは一体何をしている…。コレがあの方から仰せつかった仕事なのか?…まぁ良い…あのババァの近くに居る事は分かった。後はバネを上手く誘導して、アネと2人をババァに嗾けさせれば、俺は労する事無く弱り切ったコイツ等を纏めて始末出来るかも知れんな…」

また安易な考えをするザネ。

本当に浅はかで思慮に欠ける…。

物事はそんな簡単に行く筈が無いのに、ザネの中では成功が確定されていた。

後は如何やってバネを上手く誘導するかを考えるだけだと、使者との逢瀬を心行く迄味わえる様に、居城創りに励むのだった。

其の様子を見ないでも分かっているアネ。

ザネに付けられた監視装置など、既に分かっていた。

其れを利用し、ワザとザネの思う様にさせるつもりでいたのだった。

何故ならアネの仕事とは、ザネとバネの監視で有り、教育だったのだ。

使者に

「ザネは1度本気で痛い目に遭わなければ、物事をしっかり考える事など出来はしないだろう…。バネは活気盛ん過ぎるのが良く無い…。アレではザネ同様、奴等の良い様に利用されて消されるのがオチだ…。アネよ、此奴等2人の教育をするのだ…」

と言われたのだ。

其の時に、何故この2人だけを特別視されてるのか気に食わなく、怒りに触れるかも知れないと思いながら、そう聞いてみたら

「可愛い我が子だからだ…」

と、其れだけの答えが返って来た。

我が子…。

確かに自分達は、使者によって創られた子供の様なモノ。

バネには其れが当てはまる気がするのだが、何故かザネだけは違う気もしていた。

其れは多分、ザネが最初に創られたから、思い入れが有るのかも知れないと、アネはそう思う事にした。

使者に言われた仕事をする為、今はそう言い聞かせるアネだった。

そして今、其の仕事をどの様にするか考えを巡らせていて、取り敢えずザネの思った事をさせるのが手っ取り早いと判断したのだ。

目障りな弥夜を消す事が出来、其の上ザネとバネの教育も出来るのなら、アネとしても楽なのだから…。

そう思ってワザとザネに今の状況を見せた所、しっかりと其の策にハマるザネに

「本当残念ね…こんなにも簡単に策にハマってくれるなんてね…。まぁ私は楽で良かったけれどね〜…。ザネ、本当頭が残念な奴だわ…」

と、薄ら笑みをしながら呟くのだった。

其の呟きに、気付かない程に使者との逢瀬を妄想しているザネだった。

「後はバネを如何するかよね…。確かあの子の仕事は娘か下の息子の監査役だったわよね?…ハァ…上手く監視出来てれば良いのだけれど、先ず有りえないわね…。少しだけ気が重いわ…」

ザネの事よりも、バネの事を考えると憂鬱になるアネだった…。

「仕方が無いわね…。分身体を創って、軽く様子を見て来ましょう…」

またそう呟き、ザネに気付かれない様分身体を創って、バネの元に向かわせるのだった。

其の行為はまるで、面倒見の良い姉の様で有った。

怪物達にも相手を思って行動出来る事に、不思議な面白さを感じてしまう。

だがアネは、ザネが妄想で絶頂を迎えていた事に対して怒りを感じてしまい

「ふざけないでー!!」

と、声を張り上げるのだった。


使者に創られた幾体モノ怪物達。

其々が豊かな個性を持ち、相手を思い自分の欲望に正直なのだった。

其れはまるで人間と同じ様にも思える。

其れなのにやはり人とは違うのは、怨念が染み付いた生き物だと言う事…。

其の怨念の染み付いた怪物達の魔の手が、もう直ぐ弥夜を襲おうとしているのだった。

其れを知らない弥夜達は一体、如何なるのだろうか…。


第59話 愛しの使者 完

如何でしたか?

何時もの感じで、弥夜とシルバの話では無く、ザネ達怪物の話になりました。

や〜っと色んなタイプの敵を出す事が出来ました。

此処に来る迄長かったです。

一応取って付けた設定では無く、考えて作った設定です。

では次話での弥夜達とのやり取りをお待ち下さい。

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