語られる者、語る者
第5話 語られる者、語る者
未だ不思議な空間に、留められている聖司達。
不安や、幾度も味わう精神的ストレスで疲れ果てているのに、光の主は
「一同無事で何よりだ」
だなんて言うものだから、正直何処が無事なんだ!と、ぶち撒けたい気持ちでいっぱいになる。
家族一同誰もが
“ふざけるなよコノヤロォー!”
と、其う思って光の主を眼光鋭く睨み付けるのだった。
其の中でも末っ子の権也は、光の主に向かって突進するのだった。
だが悲しいかな、異空間に飛ばされる迄は、 一歩も動けなかったのに対し、この異空間では自由に動けるのだが、何せ歪んだ異空間の為か、光の主に辿り着く所か、進みたい方向へとは別の方へと進んで仕舞うのだった。
「────っん!何でだよー!もぉー!!」
憤りを隠さないでいる。
其の姿に聖司達は何故か、遂可笑しくなり笑って仕舞うのだ。
「なぁにしてんだよ権也!遊んでるのか?」
と、笑いながら信康が言う。
「遊んで無いよ!チョー真面目なんだけど!」
膨れっ面で
“こっちは真剣なんだ!失礼な!”
等と答えるものだから、更に笑いが湧き上がる。
「…クククッアーッハハッ…ヒーッヒッヒィ…こ、こんな状況でも…フフッ笑えるんだな、俺達…フハハッ…」
如何にか笑いを堪えながら、聖司達は権也に感謝するのだった。
兄弟1無鉄砲な末っ子権也の存在に、心を救われた一同。
其のおかげでまた1つ、この空間の在り方を知る事が出来た。
動く事は出来る、移動も可能。
だが、空間が歪んでいる為か、真っ直ぐ進む事が出来ない事と、移動する際に移動している者が、僅かながら歪んで見えるのだ…。
其の現象に、権也以外がハッキリ見て取れたのだった。
其の現象を見て、下手に動き回ったりしてはダメだと、歪んだ状態で移動し続けたとしたら、自分達の身体に何か起きるのか分かったもんじゃ無いと
「皆んな!今は下手に動き回らない方が良い…また何か異変が起きるかも知れないからな…」
聖司が、皆んなに向けて注意喚起する。
「其うだな…聖司の言う通り、皆んな、今は大人しくしていよう…」
と護都詞も言うと、誰もが其うだと頷くのだった。
そんな一連の遣り取りをずっと見ていた光の主が沈黙を破り、聖司一家に語りかけるのだった。
「フフフッハハハハハッ、良い良い!ここ迄力強い者達に会えたのは、誠素晴らしい事だ…ハハハハハッ」
とても上機嫌の光の主。
其れに対して聖司達はと言うと
“何が可笑しいんだ?バカにしてるのか?何が素晴らしいんだ!?”
と、苛立ちを隠せないでいた。
「本当に素晴らしい!…嬉しく思うぞ!お前達…」
等と、上から目線で続けて語るものだから、遂キレて仕舞った聖司が文句の1つでも言おうと口を開くが、その前に
「じゃぁかしぃや!このボケェッ!我何様じゃい!オウッ!?何高らかに笑っとんじゃいクソボケェ!アアッ!?」
何処のヤ◯ザかと思える様な、罵る罵倒を上げたのは、何時も穏やかで優しい弥夜だった。
弥夜の激しい罵りに、家族皆んなはビクビクしながら、弥夜の怒りが落ち着くまで、只見守るしか無いのだ。
何故なら、龍乃瀬一家の真の主人でボスなのは、何を隠そう弥夜なのだ。
普段は穏やかで、どんな事でも優しく慈しみの心で接し、とても慈悲深いのだが、理不尽な事や大切な者に危害を加えられた時は、手の付けようが無い程の鬼と化し、理不尽な者、危害を加える者を徹底的に攻め上げて、2度と逆う事も出来ない、生きた屍と化す程のトラウマを植え付けられるのだ。
其れは肉親でも有る家族でも例外では無い。
そんな訳で怒りが冷める迄、只ひたすら怯え縮こまり、弥夜と言う名の嵐が過ぎ去るのを待つ一同なのだ。
其の弥夜の激しい怒りに、光の主も身の危険を感じ、後退りして仕舞う。
光の主はこれはいけないと、この者を怒らせてはダメだと悟り
「すす、済まん…」
と許しを乞うのだが
「何やとぉー!?…我このボケが…口の聞き方も知らんのかい!おぁ!?ちょっくらイテまうぞ!こんボケナスがー!!」
完全関西のヤ◯ザ張に、ヒートアップしている弥夜を見て、聖司達の誰もが
ー あっこれ死んだな…南無さん… ー
等と、そっと目を閉じ心の中で念仏を唱えるのだった。
光の主は、聖司達の其の様子を見て
“ちょっ…ちょっと待ってくれ!これ本気でヤバいやつじゃない?わし、まだ死ねないんっすよ!死にたく無いんすよ!ってか、わしが死んだら、全てが水の泡になっちゃうじゃない…?だが其れより…本気で怖いよ〜凄く怖いよ〜超怖いよ────っ!”
とマジビビり。
で出た言葉が
「何から何までスイマセンしたー!本当スイマセンしたー!如何か其のお怒りを治めて頂けないでしょうか!」
言葉のチョイスは、何故か今風な言い方で、許しを乞う謝り方も、社長を怒らせたちょっとチャラい平社員の様な、ひたすら首を垂れての平謝り方だった。
だが其の必死さは本物で、聖司達にも伝わり、弥夜も其の必死さにこれ以上は酷かと
「分かれば良いのよ…でもちゃんと私達に起きた出来事を説明するのですよ!?…じゃ無いと…」
「はっはい!全てお話しします!分かり易くお話しします!…ですから許して頂きたく…」
この時点で、何方がボスなのかが決まった瞬間だった。
「分かれば宜しい…」
吐き捨てる様に、其う答える弥夜。
(確かにアレに打ち勝つ為の強い魂が必要なのだが、此奴…強過ぎなんじゃないのか?…本気で怖い…。もしかしたら此奴1人でもいけそうなんじゃね?)
と、口には出さずに思っただけだったのが
「何やと?…我…しばくぞ!?…」
と、かなり低いドスの効いた声で脅す弥夜。
「いえ!な、何も…思って無いっスよ!本当っスよ!本当本当!」
トドメの弥夜節が炸裂する事が、既に分かり切っていた一同は、これで一通りの鬼弥夜儀式が一段落着いたのだと、胸を撫で下ろす。
打って変わって光の主は
“なんて感の良いバB…淑女”
何だと気を引き締めるどころか
“メチャ怖ぇーバB…淑女”
に怯え切ってしまって、其処に有るはずもない遠い地平線を見つめるかの様な眼差しで、無言で立ち尽くしていた…。
(我悲しい…)
自分の立場を決定付けられて、これから幾つもの苦難と、試練を受けなければいけない家族達に
“同情など要らねーよな!?”
と、光の主は思うのだ。
何せ、立場は1番下に位置付けられて仕舞ったから、心の底から拗ねて仕舞っていた。
其れに、これから語る内容が確実に光の主にとっては、とても身の危険を覚える内容なので、語ったら最後…この家族に消滅されかねないのだ。
特に弥夜に…。
心底ビビりながら、覚悟を決め語り始める光の主。
何故なら、先程から弥夜の
“己…サッサと早よ話さんかい!こんボケナスが!”
的なオーラが、ビシビシ伝わるからだ。
そして光の主の語る内容に、一同は自分の宿命を知る事となる…。
第5話 語られる者、語る者 完