阿沙華と巫阿燐編 7
第49話 阿沙華と巫阿燐
「いらっしゃ〜い、良くこんな遠く迄来てくれたわね〜…何て言うと思う!?何無断で来てるのよ!気持ち悪いわよアンタ!ただのストーカーじゃない!今から行きますと言われても、絶っっっっっ対許可しないし、したくない気持ち悪さがアンタから感じるよの!邪魔だし気持ち悪いから今直ぐ消えてよね!バーーカ!」
罵る阿沙華。
「生意気な…」
「ちょっと!未だ私が話してんのよ!黙りなさいよ!アンタ人が話し終わる迄聞くって教えられなかったの!?それに突然やって来て、お土産の1つや2つはちゃんと用意して来たんでしょうね!?人を訪ねる時は、お茶菓子くらい用意するものよ!」
捲し立てる阿沙華に、怯んでしまう使者。
何故か以前に自分が付けた付加によって、あの者に脅され従ってしまった力をこの者からも感じられたからだった。
阿沙華はそれを見逃さず、更に口撃を続けるのだった。
そうでもしなければ、とても太刀打ち出来ない恐怖で体が震えてしまうからだった。
それを悟られてしまえば巫阿燐を見付ける前に、使者によって簡単に殺され転生させられてしまう恐れが有ったからだ。
今は少しずつでも良いから使者の気を逸らしつつ、巫阿燐本体に近付かなくてはいけないと阿沙華はそう考えていた。
だが言葉選びが不味かった…。
「クソ生意気な小娘め!……だがお前の言う事も一理あるな…。そうか土産を欲しいと言うのだな?菓子では無いがくれてやろう…陰惨なる“死”をな!!」
使者が放つ禍々しさが増大していき、阿沙華は身動きが出来なくなって来ていた。
「冗談じゃ無いわよ!!誰がそんなくだらないモノ欲しがるって言うのよ!!まさかアンタ、“死”が欲しくてしょうがない訳!?私はそんなモノ要らないから!!頭悪いんじゃ無いの!?」
出来るだけ罵声を浴びせる事で、何とか使者から放たれるプレッシャーに耐え、持ち堪えていた。
「今といい前といい…口の減らぬ奴だな…。私を此処迄コケにしおって…許さぬ許さぬぞ!!」
阿沙華へと向ける怒りと憎しみが増して行けば行く程、耐え切れなくなる阿沙華。
それでも何とかこの場を切り抜けて、何としてでも巫阿燐の本体を見付けなければという想いで
「超水星花廉!」
あの超水星爆花(仮)に改良を施した、正式な術を繰り出したのだ。
危険なモノだけを取り除き、爆発の威力はそれ以上の代物であり、この術を受けたモノは骨迄焼き尽くされるモノだった。
その威力を目にした阿沙華は、少しだけ落ち着きを取り戻し
(これ程の威力なのだから、ちゃんとクタばっててよね…お願いだから…)
と、祈る様に願うのだった。
爆発による煙幕が霧散しようとしてた時、煙幕の中から感じるプレッシャー
「ウソでしょ…そんな…そんなバカな事有り得るの!?」
煙幕が晴れ、ほぼ無傷の使者がいたのだった。
「チッ!なかなかの力を身に付けたみたいだな…。だがその程度では、私は倒せんぞ!!」
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉」
ドドドドドーーーン!
倒せなかったと分かったが、無傷では無かった事で阿沙華は、連発して超水星花廉を放つ。
「無駄だ!何…」
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
更に連発。
「…クソが…ふざ…」
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
「超水星花廉!」
ドドドドドーーーン!
使者の話を遮って繰り出す事で、少し楽しくなって来ていた阿沙華。
(一体何発放ったのか分からないけど、これだけ喰らえば、かなりのダメージを受けてる筈よね…)
そう思いながら
「舞零刃!×2」
念の為に、トドメの舞零刃も2発繰り出す。
容赦無い阿沙華の攻撃。
「如何しよう…一応念の為に、もう数発超水星花廉を使った方が良いかしら?…」
超水星花廉を放つかと考えてた時に
プゥーーーーン…………
と、虫の羽が鳴る様な音がしたと思った瞬間
「えっ…………」
右脚が切断されていた。
余りにも突然だったからか、切断された事にも気付かずに、ただ何が起こったのか理解出来ずにいた。
だが徐々に理解していくにつれ
「キャアァァァァァーーーーー!!!!」
切断された右脚の激痛に、悲鳴を上げる阿沙華だった。
(阿沙華ーー!!)
巫阿燐も突然の事過ぎて、対応が出来なかった。
本体から来る共鳴が、巫阿燐の邪魔となってしまったのだった。
(阿沙華ごめん!私が不甲斐無いばかりに!直ぐ傷を治すから!)
「イヤアァーーー!!アアアアアアアーーー!!痛ーーーイーー!!痛い痛い痛いー!!」
(阿沙華ー!!)
鮮血が大量に飛び散り、余りの激痛でのたうち回る阿沙華に
「フハハハハハハハ…良いぞ…良いぞ!もっとだ…もっと叫べ!痛み苦しんでもっと叫ぶがいい!!私を楽しませるのだ!アッハハハハハハハハ…」
阿沙華の悲鳴に歓喜の声を上げる使者。
巫阿燐により切断された右脚は治されたのだが、激しい痛みにあらゆるモノが顔から噴き出し、グシャグシャになっていた。
正直心は折れている。
何度も掛け続け今持ち得る最強の術を連発したのに、使者のダメージは思った程では無かったからだ。
阿沙華に宿る魂の力を借りての連発だったのだが、これ以上術を使い続ければ、安らかになって欲しいと思っているのに使役してしまう事や、仮に力を借りたとして使者を倒すに至らなくても、ダメージを与えて退ける迄、同じ術を掛け続ければ、魂が力尽きて消滅してしまう事を恐れる阿沙華だった。
如何足掻いても、今の阿沙華1人では太刀打ち出来ないと理解してしまう。
洞察力と観察力に長けてるが故、あっさりと心が折れてしまったのだった。
それでも
(阿沙華大丈夫?…ごめん…私が不甲斐無いばかりに、貴方をこんな目に合わせてしまって…)
「何言ってんのよ!?しょうがないじゃない…貴方のせいじゃ無いわよ…。悪いのは全てあの使者のせいなんだから…だから気にしなくて良いから…」
(本当使者のせいよね!タイミング悪すぎるのよね!…でも如何する?今のままじゃジリ貧で打つ手無しって感じなんだけど…)
「そうよね…何か他の対策考えるか、あいつに弱点らしいモノ無いか調べないとダメそうよね…」
何とか折れた心を立て直そうと奮闘するのだった。
巫阿燐のせいでは無いのに、自分のせいだと思って欲しくは無かったからだ。
巫阿燐と話す事によって、幾分気持ちが持ち直して来たのだったが、それも直ぐに消えてしまうのだ…。
何とか付け入る隙や、弱点は無いかと観察力と洞察力を最大限にして使者を調べるのだが、見付ける所か逆に強さだけが際立って分かってしまう。
焦る阿沙華に
「ほう…切断した右脚を治す事が出来るみたいだな…。良い…実に良い…ゥワハハハハハハッ!我がお前をどれだけ傷付けようとも直ぐに回復出来るのなら、何度でも甚振れると言う事だな!アッハハハハハハー!!」
嫌らしい程に、最低最悪な発想をする使者が嬉しそうに笑う。
その発言に阿沙華は完全に心が折れてしまい、何も考える事が出来なくなってしまった。
「ジワジワと切り刻んでやる…直ぐに死ぬなよ?死ぬのは、しっかり私を楽しませてからにしてくれよ?…」
そう告げ終えた途端
「キャアァーーー!!」
今度は左腕を切断されて、悲鳴を上げる阿沙華。
(阿沙華ー!!)
巫阿燐は先程の失態から、幾重にも防御膜を張っていたのに、それをモノともしない使者の攻撃の威力に驚愕しながらも、阿沙華の切断された腕を元に戻すのだった。
阿沙華の悲鳴、巫阿燐の嘆き、使者の高笑いが、ただひたすら続くのだった。
どれくらい続いたのだろう…。
阿沙華は精神を崩壊し始めて
(もう嫌…何も考えたく無い…何故こんな目に遭わなくちゃいけないの…もぅ如何でもいい…早く楽になりたい…)
と思った時、何処からか声が聞こえてくる。
ー姫…姫様!…どうか、どうか我等とお代わり下さい!我等が姫様の身代わりとなりましょう!ですからどうか、どうかご自身の身の安全を考えて下さい!ー
その声は、阿沙華の中に宿る魂達の声だった。
魂達の声だと気付いた阿沙華は
(私…何てバカな事思ったの!?思ってしまったの!?…私よりも何倍、何十倍何百倍も辛い思いをして来た彼等を見捨て様としてたなんて…。ダメ…ダメよそんなの!私の中に宿る魂達の為にも、そしてあの使者の中に居る魂達も救わなきゃ!その為にも絶対あんな使者何かに屈してやるもんですか!)
そう強く決意してから、何度も受け続ける攻撃にも怯まず、阿沙華は突破口が無いか考える。
その間も
ー姫!姫!どうか、どうか我等にお代わり下さい!貴方の為となるのなら、既に死した我が魂など惜しくも有りません!ですから今直ぐ我等を身代わりにお使い下さい!ー
宿る魂達が、阿沙華を説得してくる。
「何をバカな事言ってるのよ!そんな事言わないで!この危機は何とかしてみせるから、ほんの少しだけ助けてくれたら良いから!私は絶対貴方達を見捨てないから!だから私を信じてくれないかしら?…それに何か思い付きそうなのよ…」
ー姫様…ー
(阿沙華…)
巫阿燐と宿る魂達も、阿沙華の心の強さと慈愛に触れ、何が有ろうとも阿沙華に従い、盾となる事を強く決意する。
「何をごちゃごちゃ独り言を話している!…でもまぁそれだけの元気が有るのなら、まだまだ楽しませてくれそうだな…。小娘よ!なるべく耐えてみせろよ!私は未だ満足してはおらぬからなあ!」
そう言って、阿沙華の両腕を爆破する。
「キャアァーーー!!イヤアァーーー!!」
悲鳴を上げる阿沙華だったが、悲鳴を上げながらもある事に気付く。
(あの使者、今独り言って言ってたわよね…。もしかしたら…巫阿燐だけじゃなく、魂達の声も聞こえて無いって事よね?…そうだとしたら何とか出来るかも知れない)
使者の攻撃を受け続けながらも、阿沙華は小声で
「ねぇ皆んな、試したい事有るんだけど聞いてくれるかしら…?」
(試したい事って阿沙華!何を言ってるの!?この状況で一体何をするつもりなのよ!?)
ー姫様…我等も同意見です…何をされたいか分かりませんが、それは今じゃ無ければいけないのでしょうか?ー
「今でしか出来ないのよ…。お願い、ダメだったら別のを考えるから…1度だけ試させて…」
(…分かったわ…)
ー…分かりました姫様…ー
(それで一体何をすれば良いの?)
「それはね…」
ーーーーーーー
(そんなムチャな!)
ーそうです姫様!もし彼奴に気付かれでもしたら!ー
「だから試してみたいって思ったのよ…。でも今の所、これ以上のアイデアは無いし、もし上手く行けばあの使者を撃退くらいは出来ると思ったのだけど…。ムリ?巫阿燐…」
(それが上手く行ったのなら、阿沙華の思惑通りに撃退くらいは軽いモノよ?)
ーでもしかし…ー
「チャンスは1度だとは思うけれど、何とかしてみせるから、お願い私を信じて!」
ーそこ迄仰るのなら…承知しました、ではサポートに尽力致します。ですからどうか無茶だけはしないで下さい。…ご武運を…ー
「ありがとう皆んな…巫阿燐もありがとうね…」
(何て事無いわよ!私は貴方の為に在るのだから…)
「本当にありがとう!それじゃ作戦開始!」
(オラァー!コイー!いっちょヤッたるわー!てね♪)
「貴方のそのノリ、結構好きよ〜!」
(ウフフフゥ〜〜…)
この会話の最中も、ずっと使者の攻撃を喰らっていた。
それなのに何処か余裕が有りそうでいて、薄っすら笑みを浮かべ楽しそうにする阿沙華を見て苛つく使者…。
「貴様!悲鳴は如何した!!私を楽しませる事がお前の役目だろうがあ!!何を笑っている!?もっと私を楽しませぬか!!もっと悲鳴を上げ続けろーーー!!!」
怒り心頭の使者の攻撃が、更に激しさを増すのだが
「誰がアンタ何かの言いなりになるもんですか!ふざけてんじゃないわよ!バーーカ!私はこれ以上アンタの為に悲鳴1つも上げてやる気も無いからね!このキモネク星人!」
「何だと!…貴様…何処迄侮辱しよって…。その意味が分からぬキモネク星人も罵倒なのだろう!?違うか!?」
「あらバカなのに良く分かったわね…そうよ?アンタって何処かの宇宙人っぽいし、気持ち悪いし、ネクラだからよ!そうだから気持ち悪いネクラ星人で、キモネク星人って名前を付けてあげたのよ!ありがとうくらい言ったら!?」
「貴様〜〜〜…!」
阿沙華の罵りに完全にキレてしまい、怒りで我を忘れてしまう使者。
「ーーーー!ーーーー!!」
最早何を言っているのかも分からない叫びを上げ、その叫びで周辺の氷山が破壊される。
そこに
「神柱刺針!舞零刃!雹風月!」
そして
「超水星花廉!!」
阿沙華の連続攻撃は全てヒットし、超水星花廉の爆発の煙幕が使者を覆う。
だがやはり、使者にはさほどダメージを与えられず、煙幕が晴れた時
「貴様程度の力では、私は倒せぬは!如何やら最後の悪足掻きだった様だな…。フハハハハハッ!…だがもう良い…飽きた…。こんな小娘では遊びにもならぬわ…」
そう言い捨てる使者に
「失礼ね!元々アンタの相手するつもりは無かったわよ!飽きたならとっとと帰ったら!?それか成仏しなさいよ!未練がましいのよ!」
煽る阿沙華。
「小癪な事を…良いだろう、今少し甚振り遊んでやる!」
今直ぐ殺すつもりだったが、阿沙華の罵りにより、甚振る事にした使者。
今迄使者の攻撃を全て受けていた阿沙華だったが、巫阿燐と宿る魂達の助けもあって、今回は攻撃を躱しながら舞零刃などを仕掛けるのだった。
「エエイ!本当に苛つく奴だ!」
そう言って、阿沙華目掛けて暗い光の円刀を放つ。
それと同時に、阿沙華も超水星花廉を使者に向けて放つのだった。
超水星花廉を受けた使者は、煙幕で阿沙華を確認出来なかったのだが
「キャアァーーー!!」
その阿沙華の悲鳴を聞き、しっかりと命中したのだと確信するのだった。
「フアハハハハハハッ!目眩しのつもりで仕掛け逃げる算段だったのだろうが、私から逃げられると思うなよ!」
煙幕が晴れて、傷付く阿沙華を嬉しそうに見る使者。
其処には左腕を切断されても、傷を治さず無言で蹲る阿沙華の姿が在った。
「何だ?傷も治さぬとは遂に力尽きてしまったのか?…まぁ小娘程度が此処迄良くやったと褒めてやろう…。ではトドメを刺してやると…」
そこ迄言って、何か違和感を感じる使者。
「何だ!?この違和感は…。おい小娘!貴様何をした!?」
使者の問いに答えない阿沙華。
「此奴!…ん?何だ…?此奴の肉体から魂の残骸しか感じぬぞ!?まさか転生したのか!?…いやそれは無い!この場から小娘の存在を感じるのは確かだ!何処だ何処に隠れた!出て来い小娘ーー!!」
雲隠れしたと思った使者は、必死に阿沙華を探すが、阿沙華の肉体周辺からしか存在を確認出来ず、焦り始める。
だが、阿沙華の存在が猛スピードで離れて行く事を知り、阿沙華の直ぐ横に1m程の穴が空いている事に気付いた。
「まさか!その穴に肉体を捨てて迄逃げ込んだのか!?」
使者の思った通りに、阿沙華は魂の残骸だけを肉体に残し、巫阿燐と宿る魂を含めた、自分の魂を左腕に移して南極の大地へと落ちて行く。
「ヤバイ!気付かれた!このままじゃ巫阿燐を見付ける前に消されちゃう!如何しよう…って、それにしてもどれだけ深いのよー!未だ全然着かないじゃない!」
(ごめん阿沙華…私これ以上助けになりそうにも無い…余りにも共鳴が強くて…)
「そんなの良いわよ!何とか策を考えるから!今は自分の事だけ考えて!」
ー我等も助けになりたいのですが、巫阿燐様から伝わる力が強く上手く力を使えませぬ…ー
「貴方達も気にしないで!後は何とかするから!」
そう言った阿沙華だったが
(見栄を張ったけど、何も思い付かない…如何しよう…)
そう思っていたら、やはり使者が阿沙華目掛けて力の限りの攻撃を仕掛け様としていたのが分かった。
(あっ…もうダメかも…)
諦めかけたその時
「グワアアアアアアーーッ!!」
突然使者の叫び声がした。
如何やら何者かに攻撃を受けた様だった。
「えっ?何!?何が起きたの!?…でも助かったわ!無事大地にも到着したし、後は巫阿燐の本体を見付けるだけね!」
そして更に小規模の水連流星槍を繰り出す。
大地に穴が空き、あるエネルギー体で水蓮流星槍が掻き消された。
「あそこに巫阿燐の本体が居るのね!巫阿燐!今直ぐ手にするからね!」
穴に飛び込み、巫阿燐の本体を手にした阿沙華。
ドオォォォーーーン
激しい音と光を発し、巫阿燐が目覚める。
目覚めた巫阿燐は阿沙華を連れて使者の元に向かい、使者と対峙するなり
「消えろ使者!このキモネク星人!」
開口一番に強力な光弾を使者にブチ込み、使者を消滅させたのだった。
「巫阿燐…?ねぇ、貴方が巫阿燐なの…?」
「そうよん!私私!巫阿燐〜!」
「貴方…宝石とかじゃ…。今の姿、如何見ても人間何だけど…」
「そうよ?言ったじゃない、姿形を変えられるって!今はアイツを倒すのに、この姿になってるけどねん!」
「ハハ…そうなんだ…。それにしても、良く倒せたわね…」
「ノンノン!アレは本体じゃ無いから、分身体を消滅させただけよ?」
「えっ!!それマジ!?」
「マジね〜、対峙した時ハッキリと分かったわ…。残念だけど、本体の100分の1程にも満たない分身体だと思うわよ…」
「そうなんだ…」
「でも貴方のおかげで、私が元に戻れたからそれで良いじゃない!ありがとう阿沙華!」
「フフフ、そうね。本当良かった!貴方をちゃんと見付けられて!」
「本当にありがとう、これから宜しくね!我が主人の阿沙華様♡」
「様は止めて!でもこれでずっと一緒なのね!嬉しい!」
「私も!それと戻ったら、聖司様にありがとう言わないとね〜」
「えっ何故?」
「さっきの使者を攻撃してくれたの、聖司様の助けなのよ」
「そうなの!?…うん分かった、ちゃんとお礼するわね」
「そうしてね〜!そして、神音に怒らないでってお願いしてくれたら助かる〜」
「あっ私もお父さんに怒られるかも知れないんだった…」
「フフフッ」
「ウフフッ」
2人の笑い声が、静寂になった南極に小さく響くのだった。
巫阿燐の本体を遂に手に入れた阿沙華。
本体では無いとはいえ、巫阿燐によって使者の分身体を消滅させた事に、喜び安堵するのだった。
だがそれ以上に、巫阿燐を見付け出せた事が、何よりも嬉しい阿沙華だった。
これから共に歩んで行けるのだと、希望を携えて…。
第49話 阿沙華と巫阿燐 完
阿沙華と使者の対決。
如何でしたか?
本当は、巫阿燐が本体と一体化した場面をもっと書き綴りたかったのですが、それでは余りにも話が長くなり、次話に持ち越ししてしまうので、なくなく削りました。
取り敢えずは、無事巫阿燐を手に入れたので、安心しています。
では次話をお待ち下さいね!




