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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
身に付けるモノ身に付ける時
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使者

第37話 使者


これから自分達を待ち続けてくれている、王族の宝を探そうとしていた矢先、突如現れた使者。

中での習練や、宝を探す為に創られた指輪の性能により、向上したとはいえ、力の差が開き過ぎている事は明確であり、とても太刀打ち出来るとは思えなかった。

力を身に付けた事で、自分達との力の差を理解してしまう聖司達。

為すすべがないのだが、何故か1人だけ立ち向かおうとする者がいた。

それは権也だった。

「何が忌々しいんだよ!お前の方がムカつくんだっての!」

と言いながら、凝縮した風の矢を放つ。

旋風矢槍(せんふうやそう)!」

権也の行動を見た阿沙華は、自分も!と続いて

「そうよ!あんたってしつこいのよ!キモイのよ!何時迄もネチネチしてんじゃないわよ!バッカじゃない!?五千年もよく続くわよね?そのネクラな粘っこい感じって、メチャクチャ気持ち悪いのよ!その性格治したら!?」

と罵るだけ罵って、“水華雨連(すいかうれん)”を使者に向かって放つ。

権也の旋風矢槍は、大気を圧縮し、ドリルの様な回転力を加えた風の矢を相手に放つ貫通の術であり、岩をも貫く威力があった。

阿沙華の術は、これも超圧縮した水滴を幾重にも作り、散弾銃の様に相手にぶつけて破壊するモノだった。

更に信康も

「阿沙華、その意見僕も賛同するよ!本当ムカつくヤツだよな!コイツってさ!…ねぇ使者さん、お前って嫌われてたんじゃない?そんなジメジメしてるんだから…。誰からも相手にされてなかったんじゃないの?爆轟炎覇(ばくごうえんは)!!」

阿沙華に負けず劣らず罵る信康の術は、炎覇の強力版であり、対象物を中心に、超高温の炎が圧縮されながら、対象物を焼き尽くすモノだった。

「お、お前達!…いきなりなんてモノ繰り出すんだよ!」

余りの威力に驚きながら、聖司が言うと

「だってムカつくんだもん!それに指輪がね、こんボケイテマエ!やったらえぇねん!って言うんだもん」

と権也。

「キモイからしょうがないじゃない!私も指輪からさ、ヤっちゃいなよキモイからって言われたわ」

と阿沙華。

「されてと〜ぜん!」

と信康が、当たり前の様に言うのだった。

「あっ僕は言われてないからね!」

と付け足す。

正直、これ程の威力のある術を喰らえば、人間処か、あらゆる物が原型を留めずにいられないだろうと思った。

だが!

「ほぅ…少しは力を身に付けた様だな…だがそんな微々たるモノなど我には効かぬぞ?フフフッ…何だその程度か…話にもならん…痛くも痒くもないぞ!」

と、全くダメージを受けてないのだった。

「えっ!効いてないの!?」

と阿沙華が驚く。

「そんなバカな…確かに力の差は有るのは分かるけどさ、ノーダメージだなんて有り得ないよ!」

信康が驚愕する。

「だが…お前達のその不快な発言…許さぬ!ただ殺すだけでは、私の怒りは収まらん!!ジワジワと、いたぶり殺してやる!」

信康達の発言に怒りを露わにした使者。

その怒りは収まる事は、無さそうだった。

「さて、どの様にいたぶってやろう…そうだな、私が使役したモノを怪物にして、そのモノで遊んでやろうか…」

そう言って、自分に取り込んで使役した魂を怪物に創り変える。

その数10体モノの怪物が、使者から産み出された。

その怪物達は、元は人間の魂だった筈なのに、人間だったとは思えない程に、悍ましく無惨な姿と変えられていた。

それを見たピカさん。

「何という事だ…お主、何処迄も卑劣極まり無いのだな…」

と、使者に弄ばれた魂の事を思い悲しみ、それを平気で行える使者に対し、心の奥底から怒りを感じずにはいられなかった。

「其方だけは許せぬ!許せぬぞ!!」

そう言うと、襲い来る怪物を蹴散らすのだった。

だが使者の創った怪物は直ぐ回復し、再度襲撃して来るのだった。

「俺達も戦う!だがトドメを刺す事は、今の俺達にはムリだと思うから、ピカさん、トドメだけ頼めるか!?」

そう言って、聖司がピカさんの加勢に入るのだ。

この時代の肉体に刻まれた記憶により、やった事の無い体術を普通にやってのける聖司。

それは、聖司以外の家族達もそうだった。

初めてこの時代に来た時に見た、この時代の自分達がやっていた、化け物退治の時の様な動きが出来、怪物達を翻弄していく。

翻弄しながらも、ピカさんに

「やはり俺達では、抵抗するだけで精一杯だ!なぁピカさん!トドメを刺せるか?」

と、聖司はピカさんに聞くと

「弱体化さへしてくれれば、消滅させる事は出来る!だから其方達には悪いが、出来るだけ弱体化させてくれぬか!?」

「トドメさせられるんだな?…分かった!弱体化は任せてくれ!皆んな!そう言う事だから、好きな様に暴れてくれ!」

それを聞いた一同は、待ってましたと言わんばかりに

「よっしゃー!僕暴れるね〜!」

と権也。

「私も!権也に負けないから!」

と阿沙華。

「僕も頑張るよ、ムカついているからね!」

そう言う信康。

「暴れるって、どうすれば良いのかしら?…こう?」

と言いながら、夕香は分からない様子だったが、そこに信康が

「母さん、1度女優ってのに戻ってみて!悪役で、メッタメタに相手を叩き付けるイメージで、コイツらを張り倒す感じにしてみてよ!」

と言うと

「…分かったわ……フフフッさあ!掛かって来なさい!叩きのめしてあげるわよ?」

と、久々に女優スイッチを入れた夕香。

流石元女優、その眼差しは悪その者の目になり、その場が凍りつき、一家全員が恐怖を覚える程だった。

そして、襲い来る怪物を次々と、薙ぎ払うのだった。

「…夕香さんに、こんな一面が有るなんて、流石元女優さんなのだなぁ…どれ、私も頑張るか…」

と護都詞が、軽いステップで怪物の攻撃を躱しなががら

「お前さん…なかなか魅力が有るじゃないか…私と踊ってくれないか?」

と、試しにタラシスキルを発動させてみる。

すると怪物は、頬?を赤らめ?て、護都詞と踊る様にステップを踏む。

(私の力は、なかなかなモノだなぁ〜。これは使えそうだ)

と思う護都詞。

それを見ていた家族達は、怪物をも手玉に取る護都詞のタラシスキルに驚愕していた。

「…父さん…あんたって人は…」

少し恥ずかしくなる聖司だった…。

それとは打って変わって、弥夜はというと

「ピカり、私はちょっとあの者を相手にしても良いかしら?」

と、使者を指差す。

「!!」

その言葉に驚くピカさんと家族達。

「か、母さん!?そんな、止めてくれよ!危ないよ!」

と聖司。

「そうだ、この怪物だけでも精一杯な其方達なのに、危険極まり無い!止めるのだ!」

と、ピカさんも止めるのだが

「あら大丈夫よ!別に戦うつもりは無いですし、ちょっとお話をするだけですからね〜、ホホホ…ウフフフ〜」

笑っているが、顔は笑って無い事で、弥夜の怒りの恐怖を感じてしまう一同だった。

「ど…どうぞ…」

と、つい言ってしまうピカさん。

「それじゃお言葉に甘えて〜」

と、使者に向かって行く弥夜。

「お、お前…何故しっかり止めてくれないんだよ!」

聖司がそう言うと

「ではお主、あの者を止められると申すのか?…わ我には出来ぬぞ…何せ、悲しいかな…順位が最下位なのだから…」

「た、確かに…それは俺もムリだ…済まない…」

と、情け無い事を言う2人だった。

弥夜が使者の前に着くと、使者は

「何だ?お前は自ら私に消されに来たのか?…それは良いここ…」

「オンドレー!今の今迄何晒してくれとんじゃい!ああぁ!コラッ!?こんボケが!!」

とても強い意志を乗せた弥夜の怒号。

それにより、使者どころか、使者が創り出した怪物も、更には聖司達もビビりまくってしまい、動けなくなる。

これは弥夜の権能によるモノなのだと、誰もが思ったのだ。

「我、今迄ホンマ何してくれとんじゃい!人の話聞くのに何偉そうに突っ立っとんじゃい!そこ座らんか!正座せんかい、こんボケナスが!」

それを聞いた使者と合わせ、()()の者が、正座するのだった。

勿論怪物も全て…。

ビクビク怯えながら、弥夜の言葉を待つ使者だったのだが、よくよく考えてみると、何故こんなにも怯えなくてはいけないのかと、そう思うのだった。

(あの者しかり、この者のこの力…私が付加したモノがそうさせているのか?…もしそうならば、破滅させる為に付けたとしても、私に迄被害を受けてしまう…それでは意味が無い!)

使者が思ったあの者とは護都詞の事で、この者とは、やはり弥夜の事だった。

(ええい、そんな不都合なモノなど付けねば良かった!…2人に付けたモノを消し去らねば!)

そう思い立った使者は

「クソがっ!お前達2人に付けたモノが、これ程私の邪魔となるとは思わなかった!その与えた力を消し去ってやる!」

その使者の言葉に

「?」

となる、護都詞と弥夜。

聖司と信康は、“あっ…マジで!?”と思った。

騙していた事が知られてしまう事と、どうやって消し去ろうか悩んでいた付加だったが、使者が勝手に消してくれる事に、2つの意味でマジ?と、そう思ったのだった。

「ハアアッ!」

そう言って、使者は2人に付けたモノを消去するのだった。

聖司と信康は、騙していた事を気付かれてません様にと思いながら、2人の様子を見る。

そして同時に、ピカさんが付けた権能迄消えて無いか確認する。

どうやら2人は、騙された事に気付いては無く、その上権能はそのままだった。

それを理解した信康が

「ねぇ使者さん、あんたがさぁ付けたモノ、僕達知ってるんだよね。2人だけじゃ無く、僕達のモノも消さないと、あんたが不利になるんじゃ無いの?正直僕達、その付加を使いこなしてんだけど?それってどうなのさ!?」

と、煽る様に言う。

するとそれを聞いた使者は

「何だと!?クソッ本当に忌々しい奴等だ!えええーい、お前達のモノも消し去ってやるわ!」

そう言うと直ぐ、残りの者の付加を消し去るのだが

「?…お前とセルジは、無いでは無いか!?どう言う事だ!?」

「や〜い、騙されてやんの〜!僕達2人だけ、お前の付けたモノは、既に消してあるんだよ!バ〜カ!」

「何だとー!」

そこに聖司が

「やるな信康!お前の頭のキレ最高だよ!…ってな事だ。まんまと騙されてくれて、とても嬉しいよ!ハハハハハッ!」

笑いが止まらない聖司。

信康のおかげで、悩んでいた消去法が、こんなにも簡単に消し去る事が出来て、更に使者に対して1枚喰わせてやった感が、とても愉快だった。

「労せず解決出来たな!皆んな、これで奴が付けた付加は無事無くなったぞ!だから安心して、そいつらをボコってやれよ!」

「何だかよく分からないが、聖司の言う通りにしようじゃないか!」

「えぇやってあげましょう!」

と、護都詞と弥夜。

「お父さん、僕ケチョンケチョンにしてやるね〜!」

と権也。

「信兄ちゃん、流石ね!これで心置きなく、私も楽しめるわ〜」

と阿沙華。

「私は今1度、悪役に徹してみますね〜。…貴方達、さぁタップリと弄んであげるわ〜覚悟しなさい!」

と夕香。

「父さん、それじゃ僕達も始めようか!」

「そうだな!よし、始めよう!」

そう言って、怪物達と戦闘を再開するのだった。

それを見ていた使者は、余りの怒りでワナワナと震え、こう思ったのだ。

(クッ!私とした事が、あの者の余りの力で焦ってしまった様だ…まさかこんな小僧に騙されるなんて…許せぬ…騙されてしまった私自身もだが、それ以上に此奴らだけは許さぬぞ…許してなるものか!!滑稽にされたままで良いわけなど、有りはしない!!必ず苦しめ痛め尽くして、殺してやるわ!!)

使者がそう思っている間に、ほぼ全ての怪物を退治し、ピカさんが消滅させていた。

それによって、少し安堵していたのに、使者から発せられる禍々しさが急激に増大し、身動きが取れなくなる聖司達。

「嫌っ!何この気持ち悪い感じ…」

阿沙華が青ざめながら言う。

「ここ迄の念が込められてるとは…力無き者なら、この意志だけで亡き者となろう…」

そうピカさんが、使者の力の凄さを語るのだ。

「其方達は今1度、別空間へと逃げよ!後は我が何とかする!」

そう聖司達に言うのだが、信康が

「何とかするって、どうするんだよ!?ピカさん、光のローブ羽織って無いから、あいつと渡り合える訳ないじゃない!それなのに、どうやって戦うつもり!?」

「心配してくれてありがとう…我にも力は有るのだよ。何故ならば、光の記憶と力を守り通さなくてはいけないからな…。光の力を使ったのは、この五千年の間、其方達を別空間に移動させた時と、この社を創った時だけだ。だから心配は無用だ…。それに、もし我が此処で朽ち果てたとしても、また必ず其方達の元へ戻るだろう…。何せ過去には我がいるのだからな!」

優しく笑いながらそう言って、使者に対峙するピカさんだった。

「ピカさん!」

聖司がそう叫ぶと

「何をしておる!早くせぬか!…では無事を祈るぞ…」

と、聖司達を強制的に、別空間に飛ばすのだった。

「「「ピカさーーーん!………」」」

聖司達のピカさんを呼ぶ声が、姿と共に消えて行く…。

「お主、許さないのはこちらの方だ!我の全てを持ってしてでも、其方の1部でも消し去ってやろうぞ!覚悟するがいい!!」

「フンぬかせ!お前などには、私をどうする事も出来はしないわ!」

その言葉が合図となり、2人は激闘を始めるのだった。

(クソッ…また逃してしまったか…。だがまぁいい…奴等の力、しかと記憶したぞ!今迄は、全員が揃わなければ分からなかったが、今度からは誰か1人でも、探し出すのは容易くなったわ…。今後は私が生み出した怪物共を差し向けてやろう…。待っているがいい…フハハハハハーッ…)

不適な笑いを浮かべて、ピカさんとの戦闘を遊戯の様に楽しむ使者だった。


ピカさんにより、強制的に飛ばされた聖司達。

正直ピカさんに飛ばされて無ければ、確実に殺され転生させられていただろう…。

だか使者によって、刺客が放たれた事を知らない聖司達の今後の行方は、どうなるのだろうか…。

今はただ、この場にピカさんと使者の戦う音がするだけなのだった。


第37話 使者 完

今話は如何でしたか?

使者との対峙でしたが、楽しんで頂けたでしょうか?

ピカさんはこの後、一体どうなったのでしょうね?

では次話をお待ち下さいね。

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