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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
身に付けるモノ身に付ける時
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遺されたモノ

第22話 遺されたモノ その2


過去の時代に来て、初めての夜が訪れようとしていた。

ワイワイ賑やかにしている、子供達3人と両親の2人。

それとは別に、重い空気を纏い、一言も喋らなくなった聖司と夕香。

それもその筈、2人のキスシーンを皆んなに見られてしまったのだから、気恥ずかしさと、罰の一貫だとはいえ、子供達に2人がキスするかもと覗きを(そその)かした護都詞と、誰1人としてやめようと言わなかった弥夜と子供達の性格に、行き場のない思いが2人をそうさせていたのだ。

(外国なら当たり前だろうけど、俺達はそんな事人前で出来ないって!それも子供達に見られるなんて…最悪だーー!!)

聖司は心の中で叫んでいるつもりが、強く思い過ぎた為に、知らず知らずのうちに力を使っていた様で、家族全員の頭の中に直接声が届いてしまう。

それを分かっていない聖司。

「聖司お前、心の声がダダ漏れしてるぞ?」

護都詞が冷ややかな目をして忠告してくる。

「えっ?俺の声が?」

「聖司…多分皆んなに聞こえてるわよ…貴方の声。それを聞かされてるこっちも最悪な気持ちになるわ…」

弥夜も言う。

はいはいはい〜?何で!?となる聖司に

「父さん、今もはいはいはい〜?って、思ったでしょ?」

信康に当てられて

「なっ何で分かるんだ!?俺の考え?」

やれやれと顔を振りながら、阿沙華が

「お父さんって、思っていたより単純で、理解力に欠けてるのを自覚した方がいいと思うよ…」

阿沙華の辛辣な言葉にショックを受けながら

「あ、阿沙華…父さんそんなに単純で理解力無いのか…?…お前のその言葉に、かなりショックなんだが…」

今にも泣くんじゃないかと思う程の、情けない顔をして聞く聖司に、呆れた感じの顔をして阿沙華が

「お父さん、あぁ〜本当、ダメな時は残念な感じになるよね…あのねお父さん、お父さんは無意識に力を使ってるの!それが今、念話みたいになって、心の声がダダ漏れしてるのよ…ほらタイムトラベルの時の様な感じのヤツ」

それを説明されてマジか!?と思うが、それよりも娘からのダメ出しに、立ち直れそうにない聖司。

膝から崩れ落ちる姿に

「貴方、私も同じ気持ちでしたから、気にしないで下さいよね」

「お父さん、ちゃんと力と使えたの凄いね!」

優しい言葉を掛けてくれる夕香と権也。

「お前達…」

優しい言葉にウルっと来たのだが

「でも、外国に行ったからとしても、私はちょっと恥ずかしくて、人前で出来そうにないわね…」

「お父さんの最悪だーって叫んだの、メッチャクチャ大きい声だったけど、僕面白くて笑っちゃった~!へへヘ〜最悪ーぅ!アハハッ〜」

ちょっとズレてる天然のフォローに、そうじゃないからね?と思って誰かがツッコミを入れるが今回は無く、更に何時も必ず、無邪気にトドメを有難くさしてくれる権也に、死んだ目をしながらニコッと1度笑い、ギィィィー…パタン…。

聖司の心が、分厚い殻の中に閉じ籠ってしまった音だった。

表情は完全に無。

誰の言葉にも、無表情で“ですね…”とだけ返答する。

愛する夕香の言葉さへ、そんな感じだった。

「ありゃ…やり過ぎたか…」

護都詞がそんな聖司の様子を見て、かなり冷やかし過ぎたと、かなり後悔し焦り始める。

「あらまぁどうしましょう…こうなるとこの子は長いですからね…」

弥夜が、本気で困った顔をしながら考え込む。

「えっ?どういう事?お爺ちゃんお婆ちゃん、お父さんどうしたの?」

こんな風になる聖司を初めて見る子供達には、心を閉ざした事に気が付いていない、勿論夕香もだ。

「こいつはな今、心を閉ざしてしまっているんだ…」

護都詞にそう言われて、驚く夕香と子供達。

「エッウソ!?お父さん、さっきから変だとは思ってたけど、心を閉ざしちゃったの!?」

阿沙華が、信じれない顔付きで聞き返す。

「お父さん、どうなるの…?」

権也も、どうすればいいのか分からないと、聞く。

護都詞と弥夜は、どうするかと顔を見合わせ、夕香と子供達に、聖司の事について話す事にした。

「聖司の事なんだが実はな、今みたいに心を閉ざすのは、これで3度目なんだよ…」

過去にそんな事が有っただなんて、初めて聞き

「お爺ちゃん、それ本当!?お父さん、過去に2度も同じ事有ったなんて、嘘!信じらんない!」

阿沙華が信じられないと、動転していた。

弥夜が、阿沙華を落ち着かせる為に、そっと後ろから抱き寄せ

「残念ながら、本当の事なの…あの時は辛かったわ…聖司が心開くまで、特に2度目は永かったから…」

阿沙華を抱く手に少し力が入って、痛いと言いそうになるのだが、本当に有った事なのだと、弥夜達も辛い思いをしたのだと思えたから、そのまま黙る阿沙華。

「お母さん、手に力が入ってないかい?阿沙華が一瞬痛そうな顔をしたぞ?」

それを聞き、慌てた弥夜が

「ああ、ごめんなさい阿沙華!」

謝る弥夜に、首を振りながら

「大丈夫だよお婆ちゃん、お婆ちゃんの手、温かくて私好きだよ!」

弥夜も護都詞も、それを見ていた夕香も、阿沙華の慈悲と寛容を強く感じで、感激して泣きそうになる。

本当に、優しく良い子に育ったんだと。

「で、お婆ちゃん…お父さんどうして2度も有ったの?2つとも別の理由でなったの?それとも同じ理由?僕違う理由でなった気がするけど…」

何時もはこういった事を聞かない権也が、珍しく聞く。

やはり直感力が優れている上に、今は力も加わっているからだ。

権也の質問に、護都詞が言いにくいと思いながら

「2つは別々の理由だったよ、流石権也だね…その通りで、1度目は小学3年生の時だったかな?」

「いいえ、権也と同じ4年生の時ですよ」

「あぁそうだったなぁ…権也と同じ4年の時に、上級生に虐められていた子がいてな、ほらあいつ、聖司はどちらかと言うと、正義感が強く真っ直ぐで、1度思ったらとことん突き進み、曲げない性格してるだろぅ?」

護都詞のその言葉に、4人は頷き肯定する。

「それがあいつの良さなんだが、あの時は仇となってしまったんだ。…友達と帰宅中、たまたま友達の家に寄る為に近道した時に、その虐められてる子が狭い路地裏で、上級生に酷く殴られたりしてたんだ。それをみた聖司が助けに行くんだが、逆に1人ボコボコにやられてしまったんだ…」

「…父さん、それで心閉ざしたの?」

信康が顔を顰めながら聞くが

「いやそれくらいなら、後々やり返しすと燃えるやつだから、それが原因では無いよ…まだ続きがあってな、何故1人ボコボコなったかは、阿沙華と信康なら想像出来るだろう、一緒にいた友達は逃げ、虐められてた子も、聖司が殴られてる隙に逃げたんだ。そして助けに行ったのに、学校からは、聖司が上級生に単独喧嘩を吹きかけた事になっていてな、しかも友達どころか虐められてた子も、聖司が悪いと言い切ったんだよ。特にその虐められてる子が、お前のせいで今以上に虐められたらどうするんだと、要らない事するなと激しく言われたそうだよ…」

それを聞いた4人は皆、頭に血が昇り激怒する。

「それ本当なのお爺ちゃん…?ねえ本当なの!?」

「それって…ふざけ過ぎてる…何なの!?」

「お父さん…友達僕と同じ4年の時なんでしょ?酷いよそんなの…そんな友達要らないよ僕!」

「そうよ!特にその虐められてるってバカ!ふざけ過ぎてて頭に来ちゃう!呪って苦しめてやりたい!!」

「阿沙華!頭に来たからと言って、それ口にしちゃ駄目だぞ!今のお前には力が有るんだから、本当に呪いが発動しかねないから、もう少し冷静になって!頼むから!」

信康に言い止められて、ハッとしながらも、怒りが治まりそうにない。

それは4人共そうなのだが、夕香だけは先程迄の自分の反省から、子供達をなだめる事に徹する様に心掛けた。

「その子も友達も仕方がなかったんだ…何せ虐めてる奴は、実力のある国会議員の息子だった奴と、かなりの大手企業の会長の息子とかだったから、学校の先生や教育委員会の者も、口が出せない奴等だったからな…」

「そんな…それこそ本当ふざけてる!僕、ない知恵を絞ってでも、確実に全員をドン底に落としてやるのに!!」

信康がここ迄怒りを露わにするのは、とても珍しい。

だがその怒りは、直ぐに落ち着くのだ。

何故なら

「信康、その辺は大丈夫よ!私が居ますからね!」

4人はそうだったと弥夜を見る

「あの時は凄かったよ…普段のお怒りモードの弥夜みたいな感じでは無く、ただ静かに1つ1つ潰していったからなぁ〜、議員は汚職で逮捕される様にしむけ、企業の会長のは確か…」

「あら、覚えてませんの?破産する迄追い詰めましたよ♪でも流石に、関係ない社員が可哀想だから、私が会社を乗っ取…設立して、元の規模になってから、キチンと出来る人に譲りましたけどね!」

弥夜の本気の恐ろしさを実感し、乗っ取りしたんだと、そしてその社員全てに、弥夜という教育も施したのだろうと確信する。

護都詞が弥夜の続きを話す。

「その時は、何だかんだとまだ子供だった事と、親友と言える友が出来た事によって、閉ざした心が開けたのは、1年も掛からなかったんだ…だが2度目はその親友が、関わってくるのだがね…」

語るのも辛そうに、表情が変わってきていた。

「お爺ちゃん、話すの辛いならもういいよ…父さんも本当なら聞かせたくない話でもあるんでしょ?…だから無理して話さなくても…」

「いや、大丈夫。…それにこの話は、聖司自身が私達にお願いしていた事でもあるんだ。もし結婚して子供が出来た時に、同じ様に心を閉ざしたら、全てを包み隠さず話して欲しいと…多分2度も同じ事を味わって、同じ事をまた繰り返す事が分かっていたんだろうなぁ…だから、本当の自分はこうなんだと知ってもらう事が大切だと言う聖司に、覚悟きめたんだと思い約束したんだ…」

「お父さん…なんだか凄いね…私だったなら知られたくない事、黙ってて欲しいと思うのに…」

信康の護都詞への気遣いから、聖司がまだ10代そこそので、自分の辛い出来事を未来の家族(わたしたち)に聞いてもらわないといけないと、覚悟が出来ていた事知り、阿沙華はそれ以上の言葉が出て来なかった。

「それで2度目は?…お父さん…とても辛い思いしたのその時なんでしょ?…僕は聞いた方がいい?それとも聞かない方がいい?」

権也が意味ありげな聞き方をするのだった。

護都詞と弥夜は、流石直感力に長けた権也だと、素直に驚き、少し恐怖も感じとる。

しばし2人は熟考し、護都詞が権也に

「お前は本当に凄い子だね、驚く程の直感力だよ…そうだね、まだお前には早過ぎるか…聞かない方がいいと思う。どうしても聞かなくちゃって思うのなら、皆んなと一緒に聞いてもいいし、後でお前が聞く覚悟が出来た時に、聖司に直接聞けばいいさ。聖司には私から話しておくから、その時でもいいからな」

それを聞いた権也はコクンと頷き

「それじゃ僕は聞かない!…後で知りたいと思ったら、お父さんに聞くよ!」

と、姿は見えるけれど、話が聞こえない辺りまで遠ざかるのだった。

信康達は、権也の直感力の凄さに研きが掛かっていた事を理解していたので、2度目の話は更に酷く辛いものなんだと、聞く勇気が出てこない。

それでも、聖司が覚悟した事を聞かない訳にはいかないと、護都詞に話を続けてと頼むのだ。

「それじゃ話すよ…あれは16歳の時の事だ、高校に入って初めての夏休み、親友とその友達数人で、泊まりがけで海に行った時に起きた事件なんだ。聖司に友達はその親友1人だけだったから、1人浮いてしまっていたらしい。2日目の夜事件が起きたんだ。どうやら親友の友達の数人が悪い奴だったらしく、酒を飲むは、何処で手に入れたのか、ドラックを手に入れてた様で、1人浮いてしまっている聖司が気に食わなかったと、酒に混ぜたドラックを無理矢理聖司に飲ませたんだ…親友はその事を知っていたにもかかわらず、聖司に黙ったまま助けもせず、傍観していたんだ!…そして朦朧とした聖司は、ドラックで理性を持たない奴等にされるまま、朝まで()()()()()を受けたんだ…本当に全ての暴行を!」

ハッキリと罪名を言わないが、全ての暴行の意味する事は決まっている。

2人は怒りの余り激怒しながら涙を流し、怨嗟するのだ。

信康も阿沙華も何をされたのか、充分理解出来る知識と年齢なので、罪名を言われなくても理解するが、やはり権也には、聞かすには早く、理解すればトラウマになり、聖司を避けるようになるかもしれないと思った。

確かに聞かなくて良かったのだと思うと同時に、権也の直感力の冴えが恐ろしく思えた。

護都詞は涙を拭き、落ち着きを取り戻しながら

「その時に、聖司のその姿を写真に撮られ、ばら撒かれたくなければ、金をよこしパシリっていうのか?それになれと脅して来たんだ。だが聖司はそれに屈せずに立ち向かい、1人でその全ての者を殺しかけてしまったんだよ…」

その騒ぎで警察が駆けつけそこに居た全ての者が捕まり、殺されかけた奴等は病院に運ばれた後、少年院に連行されたのだが、暴行を受けた被害者である聖司からも、ドラックの反応が出た事と、相手を死なす寸前迄の暴力により、無罪とはならず、聖司も別の少年院に入る事になったのだ。

聖司の罪は酌量の余地が有るという事で、3ヶ月で出所できたが、その事によって高校は退学し、別の高校に編入するのだが、そこで出会ったのがあの親友だったのだ。

親友だと思っていた者が、聖司が受けた全ての暴行を助けもせずただ見ていて、しかも平然と笑っていたのだ。その顔を朦朧としながらも見たのを覚えていた聖司。

裏切られた思いで怒りが湧き上がる聖司に、その者は

「残念だったよ…本当はもっとお前を陥れたかったのに、あいつら全く役に立たないんだもの…ったく、その為にどれだけの金と時間を掛けたと思ってるのか…ハァ〜やってらんねー!本当なんなんだよお前は?あのままされっぱなしで、元に戻れなくなってくれてたら、マジ最高ーだったのによ!…ザケンナよ!…オメーキモいんだよ!何で俺の前から消えてくれねぇーんだよ!頼むから死んでく」

言い切らせず力の限り、ただ一発、聖司は何も考えずに、そいつを殴ったのだ。

殴ったその時に、2度目の聖司の心が閉ざされたのだ。

そして編入したばかりの学校も直ぐに辞め、また別の高校に入り直し休まずに通うが、心は閉じて壊れたまま、高校生活が終わるのだ。

卒業後、聖司は部屋に籠り1年何もせず、ただ無気力でする事が無い。

護都詞と弥夜は、そんな聖司をとても心配し、どうにか出来ないかと日夜奮闘していたのだが、もうどうする事も出来ずに、更に1年が経とうとしたある日、聖司宛に手紙が届くのだった。

その手紙の送り主は、あの親友からだった。

護都詞はふざけるなと、破り捨てようとしたのだが、弥夜がそれを引き止める。

手紙の名前に、もう1人の名前が書いてあり、その名に何かを感じられたからだった。

名前を読んでみると、母親の名前だと思えたのだ。

母親の名前を書かれている事に、重要な何かがこの手紙に書かれているのかもと、そう思う弥夜だった。


聖司の暗く辛い過去…。

その出来事が、あってはならないものだった。

聖司の閉ざした心はいつ、救われるのだろう…。


第22話 遺されたモノ その2 完

今回聖司の暗く辛い話になりました。

親友とかを出来ればもっと嫌な奴に、仕上げたかったのですが、ムカつく言葉って、何故か書いてる自分もこいつにムカついてしまいまして、これが今回の限界でした。

では次話をお待ち下さい。

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