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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
終わりの始まり
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夢ならば

第2話 夢ならば…


 閑静な住宅街に、突如鳴響くサイレンの音。

 普段はこんな事が全く無いこの街の住人達は、一斉に何事かとサイレンの向かう場所を探す。

 サイレンの向かった先は、つい先程まで迄幸せな時間を過ごしていた、家族の家だった。

 近所の人達もわらわらと出て来ては、その異常さに誰もが恐怖と驚きを隠せなかった…。

 何故なら、原型を留める事の無い程の、燃え滓となった家の残骸が有るのに対し、隣接している家には、何一つとして焼け跡等が無かったからだ。

 其の中の1人が

龍乃瀬(たつのせ)さんの家だけ…こんな…こんな有様になってるなんて…」

 其の言葉を切っ掛けに、親しい近所の者達が、其々から色々な言葉が出て来るのだが、誰が何を言っているのか分からない程騒がしくなり、ただ龍乃瀬家の有様を見続けるだけだった。

 そして其の野次馬の中を

「危ないですから道を開けて下さい!お下がり下さい!」

 と、消防と警察がやって来た。

 だが、消防がやって来ても既に火の手は無く、消化活動する事は出来そうに無かった。

 1人の消防士が警察官に、如何処理をするかを相談しようとした時、野次馬の中にいた1人の女性が

「あっ…あっ…あれ…あれって、もしかして…」

 ガタガタと震えながら指を刺す。

「もしかして…あそこに7つの…黒い…人型って…た…龍乃…瀬…さん…達…?」

 其の言葉に、其処に居た人達が一斉に、人の形をした黒く焼け焦げた物体を見てしまう。

 するともう其処からは大パニックに成り、男女問わず処かしこから悲鳴が湧き上がり、更には恐怖の連鎖が治らなく為って行くのだった。

 収集のつかない人々の大混乱は、まだまだ収まりそうにも無く、更に加速度を上げてヒートアップするのだ。

 其の様子を上空から眺め見下ろす1人の男性が居た。

 其の男性は、今し方巨大な稲妻に打たれ、焼け炭になって絶命した筈の聖司だった。

 あの稲妻により、一家の誰1人として生きてはいない筈なのに、確かに其処には、聖司が上空に浮かんでいるのであった。

 聖司の様子はと言うと、何処か朧げであり、虚ろう感じでもあり、意識も朦朧としていて、考えが纏まらない感じの様子だ。

 其れでも少しの時間が経つにつれ、真下に見える惨劇の跡を眺めながら、次第に意識がハッキリしてくるのだった。

「俺はどうしたんだ…?一体何が起こったんだ…」

 自分が空に浮いている事になど、未だ気付かず理解が追い付かない程の聖司が、必死に自分に起きた出来事を、今日帰宅してからの記憶の順序を並べながら思い出していく。

「皆んなで、父さん母さんの誕生日を祝ってて…」

 其処まで思い出すと

「…其うだ、あの時…眩しい光で目が眩んで… そして激しい激痛がきて…其れから…」

 其処迄の記憶は蘇るのだが、其の後の記憶が全く無く、少し焦る気持ちで真下を見下ろしながら、自分が宙に浮いているよなとも思いながら

「…あそこには俺達の家が有った場所だよな…」

 上空からでも其処に、自分達の住む家があった場所だと理解出来るくらいに、意識がハッキリしつつある聖司。

 家の残骸を只見つめるしか出来ない聖司は、真下で騒ぐ人達の叫びに似た自分達への呼び掛けてるある言葉にハッとする。

 其の言葉は、焼け炭と為っている人型に向かって、自分達の名前を叫んでいる事に…。

「まっまさか…あの黒い物体は、俺達!?」

 驚愕しながらも物体の数と、それぞれの体格の特長を照らし合わせ

「あれは俺達なんだ…」

 と、聖司は信じられない気持ちと、目の前の現実に、気が狂いそうになるのだった。

 信じたくは無いが、現実が其う物語っているのだから、自分達は生きてはいないと、自分に言い聞かせるしかなかった。

「其れじゃ今のこの俺は…この身体は…幽霊なのか?…」

 聖司は未だ少し、まともに働かない頭で、必死になって考えを巡らす。

 これが本当に現実なのか…?

 実は夢を見てるって事は…考えられないか…?

 俺が空中に浮いている事が、先ず有り得ない!

 其れに、この高さに居るのに、風の刺激や立ち昇って来るはずの、焼け焦げた匂いもしない…。

 更に言えば、この状態が余りにも異常で不可思議過ぎる…。

 俺自身も、普通ならこの現状を目の当たりにしたら、真下の人達の様に、泣き叫んでるはずなのに、涙どころか汗すらかかないなんて、先ず有り得ない…。

 これは夢なんだ!其うだ…夢なんだよ、夢で有ってくれよ、頼むから…。

 其う思わないと、現実を受け入れなくてはいけない事が、聖司には身を裂かれるくらいの出来事なのだった。

「夢であって欲しい…。でもこれが夢だとしても、何て笑えない冗談なんだ…」

 其う呟いて仕舞ったら

「やっぱりこれは現実なのか…覆らない現実なのか?」

 自分自身の置かれている、今の現状を次第に認め始める様になって来るのだった。

 其う認め始めると、今度は別の事が気になり始める聖司。

「…皆んなは?…皆んなは如何なってしまったんだ?…」

 其の事に意識が向いて、辺りをキョロキョロ見渡す。

 もし自分が幽霊だったなら、他の皆んなは、自分と同じ幽霊になっているんじゃないのかと、聖司は其う思ったのだ。

「皆んなは何処だ?…父さん母さん!夕香!…信康!何処だ!?阿沙華ー!権也ー!」

 今迄出した事のない、これ以上ない程の声で叫びながら、聖司は辺りを見渡す。

 だが返事は返って来ず、上も下も、左も右も、前も後も、其々の名前を呼びながら、見渡せる所全て探してみるが、残りの家族の姿は見当たらなかった。

 唯1人、取り残された聖司…。

何度も家族の名前を呼び続ける聖司の姿が、只其処に…虚しく在るだけだった…。


第2話 夢ならば 完

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