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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
終わりの始まり
17/84

スタートライン その3

第17話 スタートライン その3


未だ鳴り止まない轟音。

その轟音と共に、突如降り注ぐ稲妻が信康を襲ったのだ。

襲われた信康は、稲妻により消滅させられたのか、そこに居る筈の場所から消えて居なくなった。

突然の出来事に、悲観して泣き狼狽える家族の姿がある。

誰も、どうする事も出来ないまま、ただ信康の名を呼びながら、悲しむ事しか出来ないのだった。

悲しんでいるうちに、いつしか轟音が鳴り止み、この異空間に響くのは、信康と呼ぶ声だけだった。

「…信康…お前は死んで消えてしまったのか…?」

そう聖司が、力の無い声で呟く。

「僕死んでないよ?消えてもないし…」

信康の声が聞こえるなんて、あぁ遂に幻聴まで聞こえてくる様になったか…と思ったら

「おーい!僕はここに居るよ〜!」

あっ、また上の方から信康の声が…と思う聖司達。

「っておい!皆んな!上、上を見て!僕はここに居るって言ってるだろ!」

その声に、聖司達は

「あれっ?しっかりと信康の声が聞こえるぞ?上?」

と、何だどうしたのだと、上を見上げる。

そこには、消えたと思った信康が居た。

「ぅえぇっ?信康!?」

驚く聖司に、阿沙華と権也も

「信兄ちゃん?…えっあれ?どうして…?」

弥夜が

「貴方、信康があそこに!」

「ああそうだな!あそこに信康が居る!」

驚きながら、嬉しそうにする護都詞。

そして夕香は

「あぁ…生きていたのね…良かった…うぅっ…本当に…良かった…」

涙でぐしゃぐしゃになりながらも、浮かべる笑みは、とても綺麗だった。

生きてた事に感謝し喜ぶのだが、何故無事だったのだろうか?

そんな疑問がうまれるのだった。

家族の元に降りてくる信康。

皆んなの所に着くなり、全員が駆け寄り抱きしめるのだった。

「ちょっちょっと、そんなに一度に来ないでよ!苦しいよ!」

そう言いながら、照れ笑いする信康なのだ。

一通り、喜びを満喫した聖司達は、あの稲妻からどうやって生き延びたのかと不思議に思い、信康に尋ねるのだった。

「なぁ信康、どうやって生き延びたんだ?あの稲妻から…」

と聖司が聞くや、すかさず阿沙華が、

「あの稲妻と轟音ってなんだったの?信兄ちゃんならねぇ知ってるんじゃない?」

と聞くのだった。

その問いに信康は

「あぁ知ってたよ、それも絶対危機的状況があるとも思ってたから、色々下準備してたからね…」

と答えた。

それを聞いた一同は、“はあぁ?どういう事だ?”と、目を丸くしていた。

「実は光の記憶でのヒントに、こうなるかもって助言があったんだよね、だから一応下準備して、対策してたんだ」

そんな事初耳ですが?と、阿沙華が

「何でその事、教えといてくれなかったの?」

と、問い詰める。

「いや言えなかったんだ、言ってしまうと直ぐ奴に気付かれてしまって、力の分配をする前に消されてた可能性があったんだ!これも助言から聞かされた事なんだけどさ」

と答えた信康にまた阿沙華が

「奴?奴って誰の事?」

「お前なら言わなくても分かるだろ?決まってるじゃないか、奴だよ…」

「えっ、まさか、もしかして使者…?」

「そう!だからしつこい奴だって言っただろ?」

ここにきて、使者の魔の手が直ぐそこにあったとは、予想もしていなかった。

言い当てた阿沙華が

「えっ何で…?あの人、私達に呪いをかけて終わりなんじゃないの?」

少し引き気味で言うのだ。

他の家族も、阿沙華と同じ考えのようだ。

それを信康が否定する。

「まさかそんな訳ないよ!だってあいつ言ってたじゃないか、未来永劫にってさ!」

それを聞いた護都詞が

「確かに言ってたな…永遠に苦しめとか…」

「呪いをかけた本人(あいつ)が、1番嬉しい事と心配事って何だと思う?」

信康が皆んなに問う。

聖司が

「嬉しい事…そうだな、俺達の苦しむ姿を見る事だろうな…」

と、苦い顔で言う。

「そうそれ!五千年もの間、毎回苦しむ姿を見てた筈なんだ、多分嬉しそうに」

それを聞いた一同は、使者の笑う顔が容易に想像出来

「ムカつく!」

「腹だたしい!」

等と、口にして腹を立ててるのだ。

一通り不満を口にした後、更に信康が言う。

「それとまだ付き纏う理由があるんだ…これ聞くと、あいつの執念が凄い事も分かると思うよ…」

今まで大人しく聞くだけの弥夜だったが、理不尽や脅威が許せなくて

「まだ何かあるのね!ちょっと信康!どんな事なのか早く教えなさい!」

あっ、ヤバい…鬼モードのスイッチ入っちゃったと思う信康と、既に鬼弥夜対策にと、姿勢を正して無言を貫く家族達。

怖いよと思いつつ

「…ほらあいつの喜ぶ事って、僕達の苦しむ姿を見る事でしょう?でももし、あいつにとっての不測な事がある場合、今回の僕達みたいに、魂が転生しない場合、確実に転生させる為にその時代の魂を消滅させて、次の転生へと送る為に攻撃して来る訳。それが確認出来るまで、何度も仕掛けてくるみたい」

それを聞いた阿沙華は

「…うっわキモッ!…キモ過ぎて引くわー…マジキモいよね…シツコキモ!」

自分の両手で自分を抱きしめ毒を吐きつつ、まるでカサカサ動く黒テカGを見た時の様に、本気で気持ち悪そうな顔をする。

「だろう?本当そう思うよ…だから色々下準備して、転生したと思わせる様に、カモフラージュしたって訳なんだ…」

「えっ?カモフラージュって、どんな事をしてたの?」

阿沙華が、どんな事かと聞くと

「先ず皆んなに渡し与えた力に、転生したって思わせる様に、存在を分からなくする効果を付けてたんだ。なるべく誰にも気付かれ無い様にね。で、あいつに僕だけ転生せずに残ってると存在を感知させ、僕の存在を知ったあいつからの攻撃をワザと受けたんだ。攻撃受けた時に、光のローブの一部を犠牲にして、一度別空間…でなく現世に回避してから、光の力を僕の分と、もう一つに分けてから、こっちに戻ってきたんだ」

正直、余りよく分からない、理解が追い付かないと、頭の中がグルグルし始める聖司達。

護都詞が

「何となくは理解したが、要は信康が、あやつの存在に気付いてたんだな?それはいつ頃からなんだ?」

「それはね、実は結構前から知ってたんだ。」

「何?結構前からとは…」

「ヒントを読み解いた辺りから…」

「そんなに前からか!?」

護都詞と信康のやり取りに、またも阿沙華が

「そんな前に知ってたのに、本当に教えられなかったの?信兄ちゃんなら、どうにか出来たんじゃないの?」

と、問い詰めてくる。

信康は、その問い詰めに

「僕もそう思って色々考えたけど、無理だったんだ…権也がいるから…」

突然自分の名前が出て、しかも自分のせいと言われ

「えっ僕ぅ!?えっなんで?」

「それはね、あいつに気付かれる要素の1つに、魂になった家族全員があいつの存在と、脅威を理解する事なんだ。理解した途端に消されてしまうからね。だから誤魔化したりあやふやに話しても、お前の直感力が今回は悪い方に働きそうだったから、言えなかったんだよ…だからローブの力で、光の球の外を観察しながら、色々下準備してたんだ」

そこまで説明されて、やっと全てを理解する。

そして、それをたった1人でやってのけた信康の働きに、全員が頭が上がらない思いになる。

「あいつ、多分そろそろ異変に気付いてるだろうから、僕達もそろそろ急いで力を身に付ける旅に出ないと!」

急かすように信康が言う。

「力を付けるのは分かるが、旅に出るとは…何処に行くと言うのだい?」

護都詞がそう聞くと

「1つ前の僕達に会う為、時間を遡る時の旅だよ」

「ほぅそうなのか、なる程〜過去の自分に会いに行くの…えっ?…遡る旅?」

その突拍子もない言葉に、フリーズする聖司達だった。

「ねぇちょっと皆んな聞いてる?冗談抜きで早くしないと!」

信康の声で、我に帰る一同。

「冗談抜きでって、時間を遡るなんて、お前の方が冗談言ってるようにしか思えないが、本気で言ってるのか?」

不思議がる聖司の問いに信康は

「それが出来るんだよ本当に!僕達の魂に刻まれた記憶があるから、魂の今の状態ならそれを辿って行けるんだよ!あぁもう!本当に時間が無いんだって!」

かなり焦っているようで、強めな言い方になる信康に、一同は本当に時間が無い事と、荒唐無稽な時間トラベルが可能なんだと理解した。

理解しながら聖司が聞く

「その魂のタイムトラベルは、どうやれば良いんだ?やり方を教えてくれ!」

やっと理解してくれたんだと信康が

「それじゃ、パッと説明するか…」


ドォオ────ン!


信康の話を遮る様に、強烈な音と共に稲妻が幾つも降り注ぐ。

「あぁ…気付かれたよ…だから早くって言ったのに…取り敢えず皆んな!今直ぐこの光の球に手を触れて!」

轟音を響かせながら降り注ぐ稲妻を避けながら、言われた通りにする一同。

「それじゃ…」

ドォオ────ン!

「やり…」

ドォオ────ン…ドォーン!

「説め…」

ドォオ────ン!ドォオ────ン!

「じゃっかしいんじゃー!こらボケェ!己、ドンドンドンドンうるさいんじゃい!人が話してる時に、何してくれとんじゃい、こんボケナスがぁ!静かに出来んのか己は!?今直ぐイテまうぞ!?」

ブチ切れ弥夜の怒声に、ピタッと鳴り止む轟音。

あの使者をもビビらせた様だ。

それを見た聖司達は、鬼弥夜は最恐なのだと再認識するのだった。

それを機に、信康が

「有難うお婆ちゃん!助かったよ!」

「あらそんな、大した事無いわよ♪」

嬉しそうに答える弥夜の“大した事無い”と言う言葉に、全員が違うと思うが、言わないのが吉とスルーする。

「この光の球に触れている間に、皆んなと意思を共有するから、説明しながらトラベルするよ!」

そう言うと、触れてる光の球から信康の意思が伝わってくる。

「この共有するやり方、本当はやりたく無かったんだよね、力を結構消費するから…でも今はそうも言ってられないから、このまま行くね。皆んな、自分の魂に刻まれた1番近い記憶にアクセスして。アクセス出来たらトラベル開始するから!」

信康に言われた通りに、刻まれた記憶にアクセスする。

全員がアクセス出来たのを確認した信康が

「それじゃ行こうか!僕達の魂の旅へ!」

「頼むぞ信康!行こう過去へ!」

と聖司が発し、一同がコクンと頷く。

それを合図に、一家は魂のタイムトラベルへと旅立つ。

今までこの異空間に存在していた、龍乃瀬一家の姿は無く、逃してしまった事に憤り、八つ当たりするかの様に使者の怒りの稲妻が、唯ひたすら降り続けるのだった。


何とかスタートラインから、一歩前に進む事が出来た家族達。

果たして無事に、タイムトラベルは出来るのだろうか。

今は信康の言葉を信じれば全て上手く行くと、身を委ねる聖司達だった。


第17話 スタートライン その3 完

第一章、次で終わる予定です。

ちゃんと終われば良いのですが…

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