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輪廻家族 〜五千年の怨恨呪詛 呪われた家族の輪廻の旅〜  作者: 喜遊元 我可那
終わりの始まり
13/84

行き先 その2

第13話 行き先 その2


護都詞により、権也から伝えられた1つの謎であった、分からない言葉について、家族会議が始まろうとしていた。

先ず、護都詞が体験した記憶の内容は、権也と同じものだった事を伝える。

そして、言葉に関しては、多分と前置きして

「あれは、五千年前の言葉だと思うんだよ。セルジの時代の映像を見た時に、最初聞いた言葉に似ている気がするんだ…」

それを聞いた信康が

「お爺ちゃんがそう思ったのなら、間違いないよね。そう考えると記憶の解説は、翻訳しなくちゃ分からないままって事だね?」

テキパキと、話の流れを分かり易く組み立てていく。

「で、翻訳さえ出来れば、記憶を読み返してヒントを探せる…」

と言う信康に

「記憶を読み返してとは言うが、あの量の記憶を何度も読み取るのは、とてもじゃ無いが、かなりキツイものだぞ?そうそう何度も出来る様なものでは無いよ…」

と、護都詞が言う。

それに対して

「やっぱり無理してたんだね、お爺ちゃん!思った通りだったよ」

と孫に、そう誘導された事に気付く護都詞だった。

「でも大丈夫!多分、翻訳出来さえすれば、1度で済む筈だから」

と、言い切るのだ。

「おいおい、それはどういう事だ?何故1度で済むって言い切れるんだ!?」

今度は聖司が思わず聞いてくる。

その問いに信康は

「光の主の事、良く考えてみてよ。あの人、五千年もの間、ずっと強い魂に出会う為に、転生の記録をして来てたんだと思うんだ…。因果に打ち勝つ為に、転生毎の記録と対処方法をね」

軽く家族を見渡して

「もしかしたら今回こそ、強い魂に出会えるかもって思いながら、強い魂に出会うまで、毎回転生後に対処法を上書きしていたと思うんだ。そうすれば、何かトラブルがあった時のバックアップとして、1番強い魂に伝えられるからね」

ただただ圧倒される家族、そのなかでも阿沙華は兄の凄さに驚く。

流石の阿沙華も、ここまで分析し解析できてはいなく、ただ兄の信康に圧倒されていた。

「憶測だけど、多分正解だと思うんだ。だから、先ず最初に知るのは僕達の時か、その前の僕達だけで良い筈だよ!」

ここまでスラスラと核心を言い述べると、思わず拍手喝采する聖司達だった。

だが、その拍手を素直に喜ばない信康。

少し重い表情に気付く夕香が

「どうしたの、信康?…何だか浮かない顔をしてるけど…あっもしかして、トイレに行きたいの我慢してたりする?漏れちゃいそう?」

「!!───か、母さん!ちょ、ちょっといい加減にしてよ!違うよ!」

顔を真っ赤にしながら、夕香の問いを否定する。

「あら?そうなの?…それならお腹でも空いたの?」

「あぁー、だからそれも違うからー!」

涙目になって、この天然さんを如何にかしてくれ!と、無言で聖司を見る。

だが夕香の天然は、誰にもどうにも出来ないのだ。

またまだ天然を炸裂しそうな夕香に、やれやれと夕香の肩を叩きながら

「母さん…違うから、そこまでにしとこうか…。信康には、何か別の思う所があるみたいだから、それを聞こうじゃないか…」

やんわりと、夕香の天然暴走を止める聖司だった。

「あらそうなのね〜、良かった!何処か悪いのかと心配しちゃったわ」

素の夕香が繰り出す天然は、ある意味、破壊力の強い脅威でしかない。

やっと普通に話せると信康がヘトヘトになりながら

「…ふぅ…問題がね…未だあるんだよね…」

あれだけ解析に長けた信康の言う事だから、かなり難問なのだろと誰もが思うのだ。

「その問題とは?」

聖司が聞くと、その天然さんを暴走させない様に、しっかり見張ってくれよ!と、目で合図しながら

「翻訳する為の手段が無い事!」

えっ?そんな事、誰もが分かっている事だろう?みたいな顔をするので、それも分かってますよと

「良く思い出して良く考えてよね!僕達、どうやってあの言葉を理解したんだっけ?」

その言葉に誰もがハッとするのだった。

「そうよそうだわ、あの時は光の主が、私達に翻訳機能を施してくれてましたね。それであの時代の会話が理解出来ましたからね…」

弥夜が手を叩きながら頷く。

「そうそれ!正にそれ!その翻訳機能が今の僕達には無いって事と、あの光の主の様な力が無いから、今のままじゃどうしようもないって事なんだよね…」

その言葉に一同、サーっと血の気が引いていく気がしていた。

「更に言うと、五千年前の言葉を自力で翻訳しようとしても、先ず出来ないと断言出来るよ…。何故なら、光の主が言ってた事を引用すると、今の時代と違うあの時代は、自然や霊的なんかの精神を共有して、言葉にしたものだって言ってたでしょ?共有出来ない僕達には、理解する事すら難しいって事なんだよね…」

ここで一呼吸を入れて

「もし翻訳出来たとしても、気の長い時間を費やさなくちゃ無理だそうから、そんな時間は、僕達には有るとは思えないのだけれどね…」

信康の説明を聞いて、1つずつ増えていく問題に、頭を悩ませるしか出来ないのだった…。

それぞれ思う事や考える事があり過ぎて、無言の時間が過ぎていく。

その中でもやはりブレない権也。

暇を持て余し、1人でウロウロしている。

それに苛立つ阿沙華が

「権也!じっとしてなよ!…本当もぅ、自由人なんだから!」

そう怒られながらも

「は〜い…あっでもさ!あの光の人の力凄かったよね!」

うん?何か話が違うところに飛んだぞ?と、阿沙華は思ったのだが、もしかしたら権也の直感か何かが働いたのかもと

「うんうん、そうだよね!あの人の力凄かったね!」

と、話を合わせる事にした。

すると

「僕も、あの人のあんな力が欲しいなぁ…、あっそれとね、僕思ってたんだけどさ、あの人王様のお父さんだって、ずっと思ってたんだよね!」

それを聞いた一同も

「本当それ!思った思った!」

と阿沙華

「でも違ってたんだよな…」

と護都詞

「最後の時、お前誰?ってなったもん」

と信康。

いつの間にか、光の主の話題で盛り上がる。

「だって始めの頃に、自分が因果の原因の1つみたいな事言ってたから、セルジ本人だろうって、普通思うよなぁ…」

と、聖司も述べた。

「本当誰だったんでしょうね…」

夕香も弥夜も、同時に呟く。

ただこの会話に、あれ?何か違う感じになって来ている、権也の直感がもたらし解決へ導く道筋な筈が、核心へと繋がらない状況に、間違ったのかもと焦る阿沙華。

だかそれも杞憂に終わる。

「光の人って、誰でもなれたのかなぁ?なれるのなら、僕なってみたいな!そしてあの力をつかってみたい!」

その言葉に反応したのは、やはり信康だった。

「…権也、お前凄いな!本当凄いよ!お前のその発想いけるかも!」

突然そう言い切る信康に、困惑しながら聖司が聞く。

「おいおい、どうした突然…凄いとか、いけるかもとか…何が凄くていけるんだ?」

聖司の問いかけは、ごく当たり前のものに過ぎない。

信康以外の誰もが、突然何を言い出したのか、理解できないからだ。

「あっごめん、つい興奮しちゃったから、騒いじゃった」

「で、どうしたの?凄く嬉しそうにして…あっもしかし…」

また天然暴走になる前に、聖司に口を塞がれた夕香。

話の腰を折られる前に

「解決策が分かった気がする!多分何とかなると思うよ」

そう言う信康から、頼れる逞しさが感じられるのだった。

その信康に、護都詞が

「で、その解決策とは一体どんなものなのだい?」

「それはね、この中の誰かが光の主になる事なんだ!」

突拍子もない事を言う信康に

「はぁっ?お前…突然一体何を言い出すんだ?意味が分からない…どうした?頭が変になったのか?」

と、心配になってくる聖司達。

それをちょっと不機嫌そうに

「失礼な…僕は至ってまともだよ!」

「だがなぁ、光の主になるなんて、そんな事出来るのか?そんな訳ないだろ?」

と、全く信用していない。

そんな聖司達に向かって

「はいはい、それも想定済み…そう言うと思ってたよ…」

ちょっと呆れた感じで返答すると

「このっおまっ…」

と、言葉に詰まる聖司。

「えっとね、結論から言うと、誰でも光の主になれるんだよ。その為に、一手間掛かるけれどね」

そう言い切る信康に、それ以上何も言えない一同。

「今度も良く思い出してみて、僕達が勘違いしてた光の主は、セルジ王じゃなく別人だったって事…」

それは先程、皆んなで話していた内容だ。

「それがどうした?別人ってだけの事だろう?」

聖司のその問いに

「チッチッチッ、そこが重要なんだよね!それこそ答えなんだよ!」

少し小馬鹿にされた感はあるが、理解が追い付かないので素直に聞いてみる。

「済まないが、もっと分かり易く教えてくれるかい?」

その言葉にニヤッとしながら

「光の主本人がセルジ王だったなら、父さんがセルジ王の力を身に付けるしか無かったと思うけど、光の主の正体は別人だった。その別人が光のローブを身に纏って、様々な力を使ってたんじゃないかな?と、考えたわけ。だってよくよく考えたらセルジ王の魂は、転生していて、この世には存在してない筈なんだよね。それなのに、光の主が五千年も存在している事自体、セルジ王本人だと、説明が付かない。だから別人だと確証が持てる訳。そうなると、その者が光のローブを身に纏って様々な力を使ってたと、推測できるんだよね」

信康の説明を聞くだけで、良くもここまで推測出来るものだと、ただ感心するしかなかった。

この説明を聞いて、反論する者などいなかった。

反論するどころか、納得してしまうのだ。

我が子ながら恐るべし!と、聖司は思うのだった。

「それでね、問題が1つまた出て来たんだけど、話しても大丈夫かな?」

また問題があるのかと、誰もが思うのだが、他に解決法が提示出来ないのだから、今は信康の話を聞くしかないのだ。

「その問題とは?」

聖司が聞くと

「えっとね、どうやって光の壁から、一部分だけでもローブ用に、取り出せるかって事なんだけど…触れたら記憶が流れてしまうでしょ?それを回避しながら一部分だけ、取り出せないかなぁと。後それに、光の壁全部身に纏ってしまうと、僕達のいるこの空間が消えちゃうしね…だから一部分だけをどう取り出すか、考えなくっちゃ…」

これはこれで、また難問だと思うのだった。

再度沈黙が家族を包む…

包む筈だったが、またもや権也により打破されてしまう。

ただひたすら、光の主の真似をしているのだ。

今年小学4年の権也。

ここ迄くると、3歳〜5歳児の様にも思える。

精神年齢5歳児の権也なのだが、何故か直感力が働く時は凄まじく、次々と問題解決に貢献するのだった。

今回もまた権也の直感力が発動したようだ。

「ねねっお父さん、あの光の壁、皆んなで触れたらどうなるのかな?やっぱり皆んな同じ記憶が流れてくるのかな?」

その問いに、信康だけでは無く、聖司も護都詞も、そして阿沙華まで反応するのだった。

顔を見合わせた4人は、コクっと頷き

「権也の意見、試す価値有りかも…」

と信康が言うと

「その為に、最初に誰かが触れて、記憶を読み取ってる間に、別の誰かが光の一部を抜き取るって事ね?」

阿沙華が確認する。

「それじゃ今回は、俺が最初に触れるよ!」

そう言う聖司に

「1度経験した私がやった方が良くないか?その方が多少要領も分かっているからな…」

と護都詞が言うのだが

「いや今回は、絶対俺がする!未だ回復しきってないだろう?そんな父さんにさせるなんて、出来やしないよ!」

「…聖司…」

「俺が失敗したら、その時は父さんに次任せるよ!それまで回復に専念しておいてくれ!」

「あぁ分かったよ聖司」

「そして俺が触れてる間に信康、お前が光のローブを取り出すんだぞ!いいな、お前なら出来るから!」

そう信康に、檄を飛ばすのだった。

それに応えるように

「うん!任せて父さん!」

力一杯の返事を返す。

「さぁ始めよう!信康、一発で決めるぞ!いいな!?」

「OK!」

「それじゃ行くぞ!!」

それを合図に、2人は壁に時間差で触れるのだった。

流れ込む記憶に、これ程までの苦痛がくるのかと実感する聖司は、良くぞ耐えてくれた父と、事故とはいえ、気を失う程度で済んだ権也に、感服するのだった。

「こんなもんに、負けてまたるかー!」

そう声を張り上げ、流れ込んでくる終わらない激流の記憶に、聖司は耐え続けるのだった。


ようやくヒントへの手掛かりを手探りではあるが、見付け出した聖司達。

何としても、ヒントを物にしなくてはいけない。

未だ旅のスタートラインにすら、立っていないのだから…


第13話 行き先 その2 完

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