不思議な猫と逢魔が時の世界。
「お前はいつもうるさい、だまってついてきて手伝え、手伝いたいと言ったのはお前だろう」
こんな文句を言ってくるのは、一匹の猫だ、黒い毛並みに紫色のような光沢がある毛並みで思わず触りたくなるが、黒いこいつの時には、口が悪い事が多い。
そんな、こいつだが、名前がない、黒い猫だから単純に「クロ」や「ノワール」とつけてみようとしたが、こいつには当てはまらない。
そうこうしていると、太陽が昇り、明るくなると、こいつの体は純白の白い姿に変わった。
陽の光に浴びている時、こいつは白い猫の姿に変わり、神様の使いになる、
神社の本殿にはいり、神様から使いを頼まれると、街にでて、人間を観察して、神様に報告をするのだ。
こいつの姿を初めて目にした時、俺は不思議な体験をして夢だと錯覚したが、どうやら夢では無かったようだ、
今日は、この不思議な猫と生活をすることになった、俺という男の話を記録に残したいと思う。
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今日は、慌ただしかったな、近くのコンビニに行くだけだったのに、突然雨が降ってくるかと思ったら、
時間に間に合わないって、見ず知らずのおばあちゃんを電車に送ることになったし、
早く帰らないとでも、こんなに濡れたら走っても走らなくても一緒か(汗)
そう思い、コンビニからの帰り道を歩いていると、頭上にまるで龍の姿じゃないかという稲妻が雲の中を走り、その直後、自分の目の前の地面に稲妻が走った。そのあまりの光に目が眩しくなるのと、すこし体がしびれたような感覚が起き、一瞬気を失ったようだった、すぐに目を覚ましはしたが、危ないとい感覚は、ありつつも怖いという恐怖の感覚はなかったのが不思議だ。
そんな時、近所の公園に一匹の白い猫を見かけた、ふと声をかけ、お前こんな雨の中いたら濡れるぞ、雨宿りする場所ないなら家を使うかと声をかけ触ろうとすると、くるっと別の方向に歩いていく。
嫌われたかと思いつつ、さっきの雷のことが気になった俺は、とりあえずその野良猫を捕まえて雨宿りさせようと思った。そんなときだ。
「まったく、逢魔が時だというのに」そんな言葉が聞こえると、その白い姿だった猫の姿が、
ゆっくりと日没にあわせて黒い体に染まっていく。
驚いた俺は、その猫の後を追いかけてしまった、さっきまでいたコンビニの方に歩いていく猫の後を追いかけると、
霧がでてきた、ここは霧が出るような場所ではない、不安な気持ちになった俺は、一人で帰るよりも不安を消すために走って猫を追いかけ抱きしめていた。
「はぁ、せっかく現世にいたはずなのに、こっちの世界に入ってきて仕方のないやつだ。」
「元の世界に返してやるが私にも用事がある、その用事が終わったら家に返してやるから、とりあえずついてこい。」
猫が喋っていることに困惑しながらも、腕の中から飛び出したそいつを追いかけることしかできなかった。
平屋建ての家に、まるで幽霊のように、壁をすり抜けて入っていく猫。
ついていけないだろう!って思いながら、猫が通った壁を触ると、自分の体も、その壁をすり抜けた。
俺は幽霊、いやさっきの雷で実は死んだのか・・・そんなことが頭をよぎると、
何人かの泣き声がその家の中から聴こえてきた。
懸命な処置をされている老人と、その家族と思われる泣いている人達。
その中に老人に近づいていく猫。
「この者は病気で、今日で天寿を全うする定めでな、魂だけになったら私が輪廻の輪に連れて行かねばならぬのだ」
家族の泣き声を聴いて助けたいと思った俺は、助ける方法は無いのかと、その猫に尋ねたが答えはない。
意味はないのかもしれないと思いながら、俺はその老人の上にのり心臓マッサージをはじめた。
「無駄だ、お前は魂の姿で行動をしている、いわば幽霊と一緒だ、その者の肉体に干渉することはできないぞ。」
それでも、俺は止まらなかった、なんとかして助けたいと思った、その時ふと気づいたのは、老人の体にある白い光がすこし動いていることだ。俺は身体ではなく、その光を動かそうと思いながら心臓マッサージをつづけた。
「それは、魂魄だ、肉体に宿り身体を動かす魂。ただ、その魂魄を動かしても蘇生はしないぞ。」
その時だ、その魂魄が動き、血管の中を動くように身体にめぐりはじめた、もしかしたらと思い続けると、
諦めていた家族たちが何か慌てたようにしている、でもやめるわけには行かないと続ける。
そしたら、その光が引っかかっている場所を見つけた。その時だ、老人の目がギョロッと動き俺をみる。
家族の一人であろう男性が驚き、目に映らないはずの俺と目があった。
学校の先生のような印象を受ける男性は、驚いているが、家族が気づかないことから気づいていないふりをして、
心臓マッサージと人工呼吸をはじめた。
魂魄の光がつよくなり、助けられると思いながらも、引っかかった魂魄の部分だけは流れが悪い。
そんなときだ、処置をしていた医者が、亡くなって長時間たったことで、脳が膨らんでいるかもしれません。
助かる見込みはありませんが、蘇生しそうな状態です、助かっても障害がでるかもしれません。
医療行為をしますかと、家族に問いかけたのだ、医者は家族の返事をきき、注射器で脳髄液をすこし抜き、脳を減圧させる。
そうすると、魂魄の流れが一気に改善した、もう少しでもなにか足りないそんな時だった。
「まったく、お主ら人間というものは、不思議なものを見せてくれる。」
「このお福の面をつけて、人工呼吸をするがいい」そういって、黒猫が能面の1つを渡してきた。
その面をつけて男性に人工呼吸をしたら、すっかり息を吹き返したのだ、家族は慌て、医者は病院に男性を救急車で運ぶことにした、家族であろう目があった男性はこちらに頭をさげたあと、慌てて病院に向かった。
「まったく、私の仕事を奪った挙げ句、死神の仕事を増やしおって」
あとから聞いた話だが、寿命でなくなる予定の命は、神や眷属は助けては、いけないらしい。
神ですら驚くような奇跡で助かったら、死神が次の寿命を設定するために書類を作成したり、
神様の世界も色々大変らしい。
でも、助けてくれたじゃないかというと、俺が心臓マッサージで魂魄をうごかした時点で、亡くなる予定の時間が過ぎて寿命が伸びたらしい、驚かされたことに対しての褒美という理由で、後遺症が残らないようにだけ手伝ったとんだとか。
なんだかんだ優しいんだなと言うと、
「そもそも、死神や我らは命を奪うわけではない、天寿を全うした者の魂を運ぶ案内人にしか過ぎないんだ。」
「それを不幸を運んでくると勝手に誤解しているのは、お前ら人間だ。」
「まぁ、お前の記憶は曖昧になり、寝て起きたら、きっと忘れている出来事だ。気にするな。」
そう言われて気がつくと、俺は自分の部屋で寝ていた。
あの出来事は夢なのか、でもはっきりと記憶が残っていて、猫と会話した内容も覚えていた。
家の庭を、あの白猫が俺を観察するように歩いていたから、声をかけた。
おい、記憶が曖昧にならないしはっきりと覚えているんだがというと、その猫は驚きこちらをみて溜息をつく。
「まったく、きさまは人間でありながら、人外のものと同じになったということだ。」
「昔なら一部の神職について、さらに高位の存在に慣れば、人神見習いになったかもしれんが」
「いまの世にはあわんから、何事も無いように見て見ぬ振りをして、普通に過ごせそれがお前のためだ。」
そう言われたが、そうすることができなかった、その猫と話、神の社に行き、
人として過ごしながら、その猫の手伝いをたまにする形になった。
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「自分から頭を突っ込んで、手伝っているんだから文句を言うな修行と思え」
その後、現世の世界と夢現の世界を行ったりきたりして、色々な出来事を経験するのだが、
他に経験した不思議な話や夢については、また話そうと思う。
ただ、これが不思議な猫と知り合ったきっかけというのは、先に伝えて小説にして残しておく
初小説になりますが、題材は自分がみた夢の内容が不思議だったので、その夢の内容がベースになっています。
猫との会話は多少追加してありますが、あくまでもすこしだけの追記で描写に関しては、内容を追加していません。
不思議な夢を見ることが多いので、今後他の夢に関してもこうやって文字に起こすかはわかりませんが、
伝えても良さそうな内容の夢の時には、こうやって書いてみるのも、ありかなと思っています。