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サバタイトル
プロローグ
――リビングに太陽の光が強く差し込む。細かい光の線の束に、全身貫かれるような不快感を覚えた。ゆっくりと浅く息をする。深呼吸する力が残っていないのだ。光にも押し負ける程に。
こう体がなっているときは動くべきじゃないというのが俺の心情だ。俺はココロは脳にあると思っているタチだ。と言うのも、知覚も動作も無意識も、全て脳みその取捨選択に決められていると信じている。つまりは「熱い。」も「貧乏揺すり」も「心が痛い。」もそこには全て理由があるはずなんだ。脳がそれを選んだ理由がね。必ず。
だが社会というのはなかなかに不寛容なものだ。不寛容というのは余裕がないと云う事だ。常にぎりぎりで成り立っている。当然俺のそういう意思を汲み取る余裕は持ち合わせていない。俺以外の人間もおんなじ。意思を殺すことが社会になると云う事だ。
そういうわけで俺はいま、ワイシャツに袖を通す。ココロの痛いところを、自分の腕でもって貫く感覚と似ていた。