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シトワイヤン  作者: かめ屋吉兵衛
一 はじまり
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 俺が恐れているのは、小さくても政党が変に盛り上がってしまう可能性だ。

 人数が増えてしまったら大学生のお遊びでは済まされないのだが、お遊びにすれば盛り上がる可能性が有る。

 でもまあそれは先の話、俺達には考えるべき事が沢山有るのだ。


「社会問題を考えてると日本人って嫌、いえ、人間が嫌になるのよね。」

「どんな時?」

「例えば外国人技能実習制度、日本人の都合で始まって、法整備の段階から実習生に大きな制限を持たせたのでしょ、始めてみたら技能実習なんてまともに考えてもいない受け入れ先が、安価な労働力ぐらいにしか思っていなかった、なんて例が有るそうで、実習生がひどい目に遭っても何の対策も取られて来なかったじゃないの。」

「うん、親父に教えて貰ったんだけど、この問題は以前からしばしば報道されていたんだ、でも、政治家たちは何もしなかった、与党が更なる外国人労働者の受け入れを考え始めて、ようやく野党が動いたということかな。

 色々な問題を孕んでいるのだけど、親父は今まで野党が見向きもしなかった点を指摘してくれたよ。」

「和馬、ちょっと考える時間を下さらないかしら。」

「ああ。」

「与党を追及するネタが色々有ったのかな?」

「あっ、票には繋がらないか。」

「そうね、得票に繋がらないだけでなく、受け入れ側の票を失いかねないです。」

「親父もそう言ってた、日本人の多くは彼らに興味が無さそうだろ、そんな事に労力を費やす気はなかったのさ、党利を考えたらね、知らなかったと言うのなら問題外だけど。

 だが、労働力不足になるとして、また与党が動いた、外国人労働者の問題は技能実習生だけでは無くてさすがに影響が大きい、だから野党も動いたのさ。」

「日本側、企業側の受け入れ態勢がいい加減な状態だから、親と一緒に来日した子どもたちの中には、まとまな教育を受けていない子がいると聞いたことが有ります。」

「まあ、日本人ですら大切にされていない世の中だからな、愛華のいう通り嫌になるよ。」

「企業は自分達の利益が何よりも優先、そんな企業には就職したくないわ。

 大きな利益を誇る企業が、自社の社員には多額のボーナスを支払いながら、下請けを平気でいじめたりしてるでしょ。

 たまに日本人を礼賛する様な記事を目にする事が有っても、日本人なんて自己中の集まりじゃない、嫌な気分にしかならないわ。」

「結局、法律で規制されてないと人権を無視して最大限の利益を目指すのが日本企業の日本人だからな、中には法を軽視してる輩もいるしね。」

「でも、我々はそういう企業の恩恵を受けている。」

「そこで自己嫌悪に陥るのよ、今の生活を失しないたくは無いもの。」

「普通に考えたら、今の世の中をバランスの取れた形には出来そうにない、和馬の発想による市民政党が信じられないくらい上手く行ったとしてもね、お金持ちは更に資産を増やそうとしているし、才能のない貧困層は、安心して子育てが出来ない、そんな話をすると愛華が落ち込みそうだけど。」

「それでも、恵まれた環境に有る人は社会問題と向き合うべきなのです。」


 清香の一言は、俺達四人の会にささやかながら意味を与えてくれたと思う。

 俺達には何の力も無い、だからと言って社会問題から目をそらしてはならないのだ。

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